| 悲しかった…これが現実…これが戦場… |
| 命のやりとり…これが……… |
| 自らの頬を幾重にも雫が伝うのがわかった。 |
| 「クロムハートォォォ!」 |
| 自分の竜に同乗する彼の人の悲痛な叫びが耳に痛い… |
| 泣いて良いのは私じゃない… |
| 今が暗くてよかった…きっとこの涙は彼の人には見えていないから… |
| 騎竜と死別するのはどれほどの苦痛を伴うのだろうか… |
| このわかばと死別するとしたら? |
| わかばと出会ってまだそれほどの月日は流れていない。 |
| けれど、こんなにも自分の生活に浸透しているわかばと別れるとしたら…? |
| まして彼の人とクロムハート殿はそれと比にならず… |
| 涙があふれる…声を出してはダメだ…気づかれてしまうから… |
| 『クレスタ…』 |
| 直接語りかけて来る声。 |
| 『わか…』 |
| 『私はここにいる。』 |
| 短いけれどしっかりとした言葉。 |
| 『涙が溢れるか?私はお前の側にいる…だから今はそれを受け止めよう。だから…』 |
| だから…思うままに泣ききったら…また笑顔を見せて…わかばはそう告げた。 |
| 小さな声で…同族のクロムハートの死を受けて…悲痛なほどの思いを込めて… |
| 『……うん……私のとりえは笑顔だものね。前向きだものね。』 |
| 流れる雫をそのままに顔に微笑を浮かべた。 |
| ああ…今触れ合っているこの人は… |
| 一体どんな顔をしているのだろう… |
| 側にいるけど…彼の人の心には我は今いないのかもしれない… |
| 一人悲しんでいるのかもしれない… |
| 私が…私が側にいます…ずっと側にいます… |
| 受け止めたいです…あなたの悲しみを…受け止めたいです… |
| 身の程知らずとわかっているけれど… |
| 側にいます…いさせてください…お願いだから… |
| 一人きりで泣いたりしないで… |