空から…    〜仲間の会話〜


いつか

空に
  
会いに行こう!!


『ピカーン!!と晴れた空は好きよ?
 な〜んにもない青い空!!透き通るみたいで素敵だもの。
 不純物のない純粋な美しさを醸し出していると思わない?
 あ,でも…雲が出てても好きかしら…
 ………何よ!良いでしょう?
 好きなものがたくさんある方が幸せなのよ!』


 きつい陽射しを遮る影を作りながら,ゆっくり,ゆっくりと歩を進める。
目的地があるわけではない。
歩く横をごく稀に車が通るそんな道をゆっくりゆっくりと歩く。

ずっと続く道は森の中に入りこみ,いつしか青い空へと溶け込んでいるようで…
このまま歩いて行くときっと空の彼方へ…空の行方を追って行けそうで…


『いつもと違う車両に乗ったらいつもと景色が違って見えた。
 “あんな所にあんな樹があったんだ…”
 小さな発見がとても嬉しくて…
 夢見がち?良いだろう?
 夢を見るくらいの心のゆとり…
 無いよりあった方が良いのだから。』


 たった独りしかいない公園は何かに忘れ去られた場所の様で少し悲しくなる。
どこまで続くのだろう?
この寂寥感は…………



「何を見ているの?」
何を見ているわけでもなくただそこにある景色をボーっと瞳に映していた少年に
淡く色づいた日傘を持った少女が声をかけた。
「う〜ん・別に」
そう言って少年が笑顔を見せたから…
少女は口元を少しだけほろこばせて彼の隣に座った。
「寂しいわね…どうせ見るならもっと綺麗な所を見れば良いのに、」
少年に当る事を気にする事もなく淡い色の日傘をクルクルまわす。
忘れられた寂しい空間に1輪の華が優しく咲いた気がした。
少年はバシバシと当る日傘に苦笑いを送る。
「何かが特別美しいと言うのはないのだろうね。
 ただそれらはあるがまま…自身のままあるんだろうね…」
『そう…君がそうであるように…』
どこか夢見るような瞳を見せる少年を怪訝そうに見詰める少女。
  「美しさを意識してないものに対して美を賛辞するなんて少し滑稽だよね。」
「………で………何が言いたいの?」
だんだんと不快感をあらわにしてきた少女は感情を押し殺して尋ねる。
「つまり…美しさなんて…人の価値観なんて…人それぞれに違うんだよ。
 美しい景色と言ってもその時の心情や一緒に見ている人によって違うものだ
 と思うんだ。」
「ふーん…それで?」
不快感をあらわしながらも律儀に少年の話しを聞く少女を微笑ましく思いながらも
話しを続ける。
「君が隣に座ってくれたからここの景色が変わったって事。
 やっぱり1人は寂しい…」
心のそこから嬉しそうな少年の笑顔に毒気を抜かれた少女はそっぽを向く。
「…ま,良い意味にとってあげるわ。けど本当に夢見がちって言うか…」
『寒いって言うか…』
最後の言葉はあえて呑み込む少女。
逡巡し鮮やかな笑みを添えながら呑み込んだ代わりの言葉を紡ぐ。
「大人になっても…まだそんなおめでたい事が言えるなら…よどみなく言えるなら…」
相変わらずにこにこと邪気のない笑みを向ける少年に少女はピッとつきつける。
「“夢見がち”って言った事謝ってあげるわ。」
「別に良いよ,“夢見がち”って悪い事じゃないだろ?」
平然と言ってのける少年に少女は呆れにもにた表情をして立ちあがる。
「あなたが良いなら別にいいけれど。」
日傘を抱え直しクルリと背を向ける。
「暑くなりそうね…」
「暑くなりそうだね…」

刻はなだらかに過ぎて行く。

                                   fin
                   2002/08/24   By:コロカ






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