野村謙二郎引退試合 

その日僕は仕事を切り上げ17時28分岡山発の新幹線に飛び乗った!  そして1時間後、僕は広島市民球場に向かう路面電車の中にいた。  そう!その日は広島カープの今シーズン最終戦。そして広島カープ一筋17年、カープのチームリーダー、野村謙二郎の引退試合だった。僕は先に場所を取っておいてくれていた仲間に連絡を取る。「大変なことになっている!」と仲間の声。市民球場に着くと目を疑った。平日にもかかわらず、いつもは閑散としている球場が赤一色に埋まっている。試合が始まっても人の波は途絶える事無く、ついにチケットは完売。29777人の野球ファンで埋まった。謙二郎が打席に立つ度、打球を裁く度、地鳴りのように沸き起こる歓声! 残念ながら試合には負けたけど、謙二郎の雄姿は最後まで僕らの目に焼き付いた。そして、試合後の引退セレモニー! 「子供たち!野球は楽しいぞ!」と名言を残した謙二郎。 選手一人一人が花束を渡し、最後に監督と抱き合った瞬間、29777人が涙した。カープファンの誇りであった謙二郎は最後まで僕らに夢と感動を与えてくれた。
 試合終了後、車で岡山まで送ってもらい、家に帰ったのは1時を回ってた。次の日の仕事はしんどかったけど、真っ赤に染まった市民球場を思い出すと、自然と笑みがこぼれた。

        本日の剛 2005年10月16日号より

野村謙二郎

大分・佐伯鶴城高から駒沢大を経て88年ドラフト1位で広島カープに入団。 2年目から高橋慶彦に代わるショートとしてレギュラーの地位を不動のものにする。
90年、91年と2年連続盗塁王。 91年はリーグ優勝し、若きチームリーダーとしてチームの顔となる。
94年に3度目の盗塁王。そしてこの年から設けられた最多安打のタイトルも獲得。
95年には打率.315(ベストテン3位)、32本塁打、30盗塁で日本プロ野球史上6人目の「3割・30本・30盗塁」を記録。パーフェクト・プレーヤーの称号を得る。
97年にFA権を取得した際、メジャーから誘われるも残留。メジャー移籍断念は周囲の反対もあったがチームへの愛情が深かったから。
しかし、度重なる足の故障で戦列を離れ、苦しいシーズンを何度も送る。
だが、強い精神力で何度も立ち直り、記憶も新しい2005年6月23日に2000本安打を達成! ファンに惜しまれながらこの年でユニフォームを脱ぐ。  
 盗塁王3回(90、91、94)、最多安打2回(94、95)。ベストナイン3度(91、95、96)、ゴールデングラブ1度(95)受賞。月間MVP2回(93年4月、95年5月)。オールスター出場8度(90、91、93〜98)。日本シリーズで91年に優秀選手賞受賞。1966年9月19日生まれ。右投げ左打ち。


カープファンで埋まった市民球場!

 長年広島カープを支えてきた野村謙二郎。 彼の引退試合が10月12日に行われました。 平日ということもあり、当初は行くのを諦めていましたが、どうしても最後の勇姿を見たいという思いから市民球場に駆けつけました! 
 仕事を早退して、新幹線に乗り、市民球場に到着したのは18時40分くらいでした。
 先に球場入りしていた仲間に連絡をし、内野自由席のチケットを受け取り、僕らが陣取る席に案内してもらいます。
 僕はそこで信じられない光景を目にします!。
 それは真っ赤に染まった市民球場!! 内外野とも赤一色に埋まっており、僕らの席も1塁側内野自由の後ろの方の席がやっと取れたという状況でした!。
   外野はカープファンで赤一色!


白熱の試合!
 試合は黒田とベイスターズ三浦の投手戦。 両投手とも立ち上がりはよくなかったですが、徐々に本来の投球を取り戻し、特に敵ながら三浦はすばらしいピッチングでした。
 野村謙二郎の打席ではみんなが7番と書いた赤いシートを掲げ、球場がノムケン一色になります。 謙二郎の打席、謙二郎が守備でボールを裁く時、地鳴りのような喚声が市民球場に響きました。 

 そして5回の表だったか裏だったか、再び信じられないことが起こります。 なんとチケットが売り切れてしまったのです。 公式発表は29777人!! 平日の消化試合。 すごすぎます!
  初めて2階席まで埋まった市民球場を見た!

 そして6回の裏、先頭バッターで登場の謙二郎の第3打席、快心の当たりはセンターのグラブをかすめるものの、それを超えて見事なツーベース!! もう球場内お祭り騒ぎ。 次のキムタクの送りバンドでは3塁に激走!(結果フィルダースチョイス) ノーアウト1,3塁の絶好のチャンスを作りました。 しかし・・・ここから点が取れないのが今季のカープを象徴してました。
  7回裏のジェット風船は圧巻!

 8回の表は何とセンターの守備に! ファンへの最後のあいさつでしょう。
 8回の裏の最終打席は初球を打ってショートゴロ。。。  しかし球場内拍手喝采。 僕もお疲れ様!っと精一杯手を叩きました。
 そして9回の表、ベイスターズの攻撃、2アウトランナー1塁2塁。 小池の打った打球はショートへ! この回から再びショートの守備に戻った謙二郎が最後裁き、またまた場内大歓声!  

 結局・・・試合は山本監督の集大成っぽく、采配ミスで負けてしまいましたが、球場内は一体となり大いに盛り上がりました。


野球は楽しいぞ!
 試合終了・・・そして野村謙二郎引退セレモニーです。。。
 「さあ、これより野村謙二郎選手の引退セレモニーです!」とのアナウンスの後、バックスクリーンに謙二郎の17年間の軌跡の映像が流れます!
 そしてピッチャーマウンドのトコに謙二郎が小走りに走っていき、マイクを持ちました。
 「えー、みなさん、今日はこんなにたくさん球場に足を運んでいただいてありがとうございます。
 こんなにたくさんお客さんが入ってくれると楽しくありませんか、みなさん!!。(大歓声)
選手も今日、目いっぱい燃えたと思います。本当に17年間、あっという間でした。本当に一生懸命カープでプレーすることができて、僕自身大変誇りに思います。今日でユニフォームを脱ぐことになりましたが、カープは新しい第一歩を今踏み出したような気がします。(拍手)
 今日集まっている子供たち!! (一呼吸置いて) 野球はいいもんだぞ! (二呼吸置いて) 野球は楽しいぞ!!!(大歓声)
 最後になりましたが、17年間お世話になりました広島東洋カープ球団、お世話になった監督・コーチ、そして選手のみなさん、そしてたくさんのファンのみなさん、ありがとうございました。ありがとうございました。ありがとうございました。ありがとうございました。」 ←バックネット、内野、外野と一礼。 (大歓声&大拍手)
 

29777人の涙!
 そして選手が一人一人花を持って謙二郎のトコに駆けつけます! 先頭に立ったのは駒沢大の後輩、新井! 来年は僕がチームリーダーという自覚か! まるで後は僕に任せてください!という決意の表れのような先頭の花束贈呈でした! 
 新井に続いて選手、コーチ一人一人が花を渡してそれが大きな花束になります! 前田、緒方、佐々岡・・・そして怪我で戦列を離れていた尾形や岡上の姿も。 倉の時は背中をポ〜ンって叩き、黒田は泣き、大竹の時は大竹の頭を撫でました。 まるでこれからのカープを背負ってくれ!という願いを込めたように。
 そして・・・最後は山本監督。 その時、球場の誰もが目頭を抑えたのです! それまで涙をこらえてた謙二郎の涙腺が一気に緩み、山本監督が謙二郎を抱きしめたのです!! その時間は30秒ぐらいだっでしょうか!? その時間に二人の感謝が込められていました。 山本監督就任1年目の時、ドラフトで謙二郎を引き、謙二郎が引退の時、自分も身を引く。 山本監督を慕った謙二郎と謙二郎の一ファンでもあった山本監督との抱擁に球場全体が泣きました! そして割れんばかりの拍手! 
     

 
背番号7の胴上げ!
 そして謙二郎は場内を1周してボールをスタンドにどんどん投げ入れました。 内野、外野の最前列のファンとタッチを交わしたり、花束を渡されたりして場内を一周。 そしてグラウンド正面に戻るとカープナインが待っていました。 皆が一斉に謙二郎のもとにかけより、一度、二度、三度、と胴上げ。 そのときは気付かなかったが、謙二郎の背番号である7回胴上げをしたのです。

         

 そしてホームグランドで謙二郎を囲み、カープナインが記念撮影。 謙二郎の肩に手をかけて笑顔の山本監督。 はしゃぐ前田! 皆が笑顔になって謙二郎を取り囲みます!
   
   

伏兵3選手も引退
 その後、澤崎、小林、松本泰。。。と今季限りで引退する選手も花束贈呈&胴上げ。 澤崎に花束を渡したのは黒田。 ’97年ドラフト1位(澤崎)と2位(黒田) その時新人王を採ったのは澤崎でした。 しかし、時は流れ、今は黒田がカープのエースに。。。 そして澤崎は引退。。。  僕も同い年なので感慨深いものがありました。 小林幹英、松本泰選手ともに本当にお疲れ様でした! 来期からはコーチということで若手の育成に頑張って欲しいです! 


今シーズン終了
 そしてこの日は今季最終戦ってことで選手の皆がグランドに出てボールをスタンドにほおりこみます! 僕らの席からは新井や横山が近くにきてくれました! 横山のはしゃぐ姿がとっても印象的でした! ただ・・・今シーズンで辞任する山本監督の挨拶はありませんでした。 これが辞任と勇退の違いなのでしょうか??


背番号7、野村謙二郎を忘れない!
 試合、セレモニーが終了し、市民球場を後にします。 帰りは岡山まで仲間の車で送ってもらえることになりました。 駐車場までの道のり、いつもはガラガラの地下街シャレオがカープのユニフォーム、メガホンを持った人であふれてます。 こんな光景、見たことない! 広島市街、駐車場はもちろん、驚くべきことは帰りの高速の小谷PAに寄った時でさえ、カープファンであふれていたのです!
  最後皆で記念撮影!

 情熱の赤・・・まさに野村謙二郎の為にあるような言葉でした。 17年間、本当にお疲れ様でした。 そして勇気と感動をありがとう!
 
 


 家に帰ったのは1時半。 次の日・・・3時間だけ寝ての仕事でしたが、市民球場を思い出すと頑張れました。
ありがとう、野村謙二郎! ありがとう、広島カープ! 広島カープはやっぱ最高の球団です!!

 ps 謙二郎の引退試合を見たい! と僕のわがままを聞いてくれ、快く行かせてくれた嫁さんに感謝をしています。。。