【初めての挑戦!】(前編) |
それは、とある日の午後の出来事。 特別いつもと変わらないこの日に、ちょっとした事件が起きようとは誰もが予想していませんでした。 「キッパが急病〜!?」 召喚士・ユウナ一行は、只今なんと、骨休み中。 ティーダが久々にブリッツの試合に出ることになっていたが、ビサイド・オーラカでKPを勤めるキッパが突然に体調を崩したと言うのだ。 「仕方がないわ。他の選手を雇いましょう。」 誰よりも冷静な判断を素早く下したのはルールー。 そして、その言葉を聞いてその場にいた誰もがまず最初にワッカに注目した。 しかし、ワッカは首を横に振って言う。 「いや、俺はこの前の試合にも出ちまったし…。引退した俺が連続で出るのはヤバイだろ?それに、俺はKPはあまり得意じゃないしな…。」 確かに、引退したワッカのけじめに傷をつけるわけはいかない。 「アニキも今は飛空挺のメンテしてるんだよね…。そうだ、あたしが出てみようかな!」 「リュックが…?」 ハッキリ言って、その場の誰もがこの言葉に対し、耳を疑った。 今までリュックは、ブリッツに関心を持っていたようには見えなかったからだ。 しかも、役割はKP。 どの役割についても重要度において変わりはないが、KPについてはゴール前だけをひたすら守る、代わりとなる者がいない存在なのだ。 よくボールを見て、ボールを正確にキャッチしなければならない。 確かに、リュックはよく機械いじり等をして手先は器用だし、目も効くかもしれない。 でも、それとは次元が違う。 「でも、リュックは泳ぎが上手だし、結構上手くいくかも…。」 ユウナが手を軽く顎に当てながらそう言った。 リュックは「やっぱり、そう思う〜!?」と、大喜びだ。 「一回、ブリッツってやってみたかったんだ!ね?良いでしょ?」 ティーダは不満があるようだが、他に今すぐ選手になってくれそうな相手に心当たりがない。 それに、何やらリュックが手に持って構えている手榴弾がティーダには恐ろしかった。 これは、脅しかもしれないし、リュックの本気なのかもしれない…。 どちらにしても、ティーダにはもう選択の余地はないようだ。 「う…。じゃ、じゃあ、時間まであとちょっとあるから簡単に練習するッスか?いくら泳ぎが得意でも、ブリッツはそれだけじゃあ上手く行かないッス。」 渋々答えたティーダに、リュックはもっちろん!と、早速ブリッツの練習をする準備を整え出した。 練習は、本当に基礎ということくらいしか出来なかった。 しかし、それでもほんの15分くらいの少ない時間として考えると、十分だった。 リュックが今までのティーダ達の試合をしっかり見てきたためにルールや簡単な動きが大体把握できていたことが幸いしたのだろう。 そして、試合は5分前。 選手側にはビサイド・オーラカのみんなにティーダとリュック。 応援席の最前列にはユウナ達が座って見守っている。 そして、入場の時間がやって来た。 確かに、最初はブリッツにそれ程興味があるわけではなかったんだよね。 でも、ティーダやワッカがやたら騒いでたり、アニキまで始めたとなっちゃ気になるもん…。 見てるだけじゃ、もう我慢できなかったんだ。今日は、頑張ろうっ! そんなリュックの想いの中、戦いは始まった。 相手は、強敵、ルカ・ゴワーズ。 もともとに力では5分5分。 今回はキッパがいないだけにビサイド・オーラカがやや不利だ。 勿論、リュックの実力次第ではあるのだが。 アナウンスもそんなことが流れている。 最初にボールが渡ったのは、ルカ・ゴワーズ。 ビサイド・オーラカは選手一同ゴールに行かせまいと立ちはだかるが、やはり中々上手くはいかない。 一気にルカ・ゴワーズのビクスンがリュックのいるゴール前までやって来た。 そして、不適な笑みをリュックに見せつけ、シュートの体勢に入る。 それと同時に、リュックも身構えた。 相手は、強い。 しっかりとボールを見つめる。 リュックの集中力は、最大までに高まっていた。 絶対に、負けない―。 絶対、入れさせないっ! 早いボールが水の流れを断ち切り、流れてきた。 |