本の紹介

1.魂の酒      農口尚彦著  ポプラ社   1,650円
2.ワインの愉しみ  塚本俊彦著  NTT出版  2,000円

 どういう加減か毎年年末になると読みたい本が出版されてきます。今年は標記の2冊がそうでした。

 これらの本に共通するのは、著者が実際にお酒を造るという点ですし、努力の結果その世界ではトップクラスの実力を身に付けられているという点です。農口さんは長年石川県の「菊姫」で杜氏を勤めパワ−漲るお酒を造られてこられ、定年で同じ石川県内に在る小さな鹿野酒造に移り、7人の蔵人と「常きげん」という酒造りに励まれています。小僧時代から酒造りをどのように学び工夫してきたが述べられており、酒造りを知るための最良の本といえます。山廃造りを得意とされていますので、山廃純米と山廃純米吟醸の2本を早速取り寄せて飲んでみたらさすがに力のある酒でした。

 そこに書かれていることを体験してみたいと思わせるだけの訴求力のある本はごく少ないとおもいますが、農口さんの本はそうした本の一つでした。

 こうしたほんの一つに岩波新書の「アメリカの心の歌」がありました。カントリ−系の歌うたいが中心ですが、音楽に関心のない方にも楽しめ、それぞれの歌うたいの人生の哀歓にも触れ、それでいてさわやかさを与えてくれる本です。

 塚本さんは山梨のルミエ−ルというワインを造られており、ワイン造りだけでなくワイン全般に関する著者独自の考えを披瀝されています。地べたを這いずり回って苦労した経験を通して述べられているので評論家や研究者やソムリエが書いたものと一味ちがった仕上がりとなっています。