労働時間は1日8時間、1週40時間と一口に言ってしまいますが、それはあくまでも普通労働者を対象とした場合の話です。私たちのライフステ−ジのなかでは、子育てをしたり、介護をしたりといろいろ仕事をする上での問題が発生することから、いろいろ救済する措置がとられています。ここの表題にあげた子役の労働時間については1日8時間、1週40時間が適用されず、労働基準法の第6章で年少者についての労働時間等が定められています。普段何気なくテレビや舞台で見ている子役もれっきとした労働者です。この労働時間の緩和がなされ、その審議会の様子がお役人の仕事の進め方の典型として非常に面白かったので紹介します。
今年の1月1日から演劇に出演する子役の労働時間が緩和され9時まで就労することが出来ることとなりました。こうした措置が取られるようになった背景には構造改革特区の規制緩和措置があります。労働基準法では、歌舞伎の子役は8時までしか出演できず幕切れやカ−テンコ−ルに出演できないことから、この規制緩和措置として(社)日本演劇興行協会が東京23区と、横浜、名古屋市、京都市、大阪市、福岡市そして札幌市に限って要望を出したことに基づき、厚生労働省がこれらの地域に限定するのではなく全国的に行おうとなったものです。対象となるのは演劇の子役が演劇に従事する場合に限られ、しかも当分の間の取扱とのことのようです。
審議会の議事録を抜粋してみます。
A委員「演劇と書いてありますが、例えばコ−ラス、あるいはオペラはどうなるのですか。」監督課長「今回は午後9時までとするのは演劇ですので、歌のみのものは駄目です。」B委員「これは舞台だけですか。舞台の演劇ということですか。」監督課長「これは演劇に限るということです。」C委員「要するに、これはナマの舞台だけですか。例えば、テレビで番組を収録するとか、何とかというようなことは入らないのですか。」監督課長「それは入りません。」・・・分科会長「法律では「映画の製作又は演劇の事業」となっておりますが、今回は演劇の事業に限っているということですか。」監督課長「はい。」分科会長「それは要望が、映画の製作についてはなかったということですか。」監督課長「はい。」
このやり取りの背景には、演劇の解釈の問題があります。テレビのドラマや歌番組やコンサ−トなどに小学生以下の児童が出ているように、基準法では演劇の事業は芸能活動と解釈されているため各委員もその当たりを心配し、最後にB委員が「混乱しないようにきちんと明示して提示されるようにお願いします。」と言わざるをえませんでした。提案のあったことしか検討しないのではなく、社会情勢をみて年少者の規定を全面的に見直すいい機会ではなかったかと思いますが、そうはならないところが面白いというか、演劇が何を意味するのか、各委員への回答も具体的性を欠き、モヤモヤが残るような回答に不思議さを感じます。
未成年者の就労が労働基準法ではどうなっているかを簡単に見ておきます。 |