マクロビオティック健康相談室食神

土用と脾

マクロビオティックを理解するうえで欠かせない陰陽五行説。むかしの人は暦や風習から陰陽五行の知識を得ましたが、旧暦とそれに付随する風習を失った現代日本人は陰陽五行を知らない人がほとんどだと思います。しかしながらこの古代の哲学というか思想を眺めていると、森羅万象をうまく表現しているように思えて興味がつきません。

おさらいをしますと、陰陽五行は「木」「火」「土」「金」「水」の五つです。よく五行のイメージ図に物質界の木・火・土・金・水がそのまま描かれることがあります。これはこれでわかりやすくてよいと思いますが、陰陽五行は元来はエネルギーの質を表します。「木」は上昇、「火」は爆発、「土」は下降、「金」は凝縮、「水」は浮遊です。

さて、今年2018年の干支は戊戌です。戊も戌の両方ともに「土」で、土が重なる年回りです。そこで今年の干支にちなみ、また陰陽五行をもっと理解するために、今回は五行の「土」に焦点を当ててみます。

中庸の性質

五行表を見ると、下降するエネルギーの質をもつ「土」は、中央に座し、色は黄色、季節は土用となっています。土用の季節とはいったいいつなのでしょうか? 土用は、春夏秋冬それぞれの季節のうちに1回訪れる期間で、立春、立夏、立秋、立冬前の18日間がその時期にあたります。今年2018年を例にとると、4月17日から5月4日までが春の土用、7月20日から8月6日までが夏の土用、10月20日から11月6日が秋の土用、翌2019年1月17から2月3日が冬の土用となります。よく知られている土用の丑の日は、夏の土用期間中の丑の日をこと。丑の五行も「土」なので、「土」が重なります。

このように春夏秋冬いずれの季節にも存在する土用は、暑さも寒さも包含する特徴のはっきりしない時季です。どっちつかずに見えるこの性質が、実は「土」の性格なのです。陰陽両極の中間にとどまり極端に偏らないのは、長所にもなります。これを中庸の徳といいます。中庸は、地に足がつき、現実的で協調的な穏かさを表します。

マクロビオティック食事法を、中庸の食事と呼ぶこともあります。その意味するところは、陰性・陽性どちらかに極端に偏った食べ物を除いて穀物と野菜を中心にした穏かな食事にすることです。肉と熱帯性食品が合体した現代食が極端から極端に走る刺激的なものであるのに対して、穀菜食であるマクロビオティック食は穏かでやさしい感じがするのは、皆さんよくご存知のとおりです。

脾と食養生

東洋医学の理論は、陰陽五行説に基づいています。五行それぞれに臓腑が当てられていて、「土」の臓腑は、脾臓(もしくは膵臓)と胃です。脾臓というと、解剖学的には腹腔上部にある長さ10センチ大の臓器で、古くなった赤血球を回収・解体するなどの働きをしています。リンパ球も作っていて、リンパ系の一部を担っています。そのわりには「成人後に摘出しても命に危険はない」などといわれて、西洋医学の説明をきくと脾臓はそれほど重要な臓器ではない印象をもちます。

一方東洋医学では、脾は心や腎と同等に、いえひょっとしたらそれ以上に重要視されているふしがあります。というのも、脾こそが、飲食物を消化しその栄養(栄気)を作るとされているからです。『養生訓』を著した貝原益軒は、「脾は滋養の源である」として、飲食法に重きをおいた養生法を説いたことで有名です。健康法の要は消化力にあり、消化力を司るのが「土」の臓器である脾であると考えられていたのです。

脾の働きは唇に表れます。脾に通じる気は口を通っており、味覚に影響します。また「甘は脾に入る」といい、甘味が脾を養うとされます。この場合、穀物や野菜などの自然の甘味がよいのであって、砂糖など不自然な甘味は逆に脾を傷つけます。

まさに甘味によって脾を傷つけられた病気が、糖尿病です。直接的には膵臓の病気ですが、広義には東洋医学でいうところの脾の働きが不調の病気といえるでしょう。マクロビオティック食事療法で、糖尿病を代表とする血糖の病気を治す方法は、基本は標準食ですが、「土」の穏やかな性質をもつきゃべつ、玉ねぎ、かぼちゃなどの甘味野菜が勧められます。特に「スウィートベジタブル・ドリンク」は、糖尿病と低血糖症によく処方される定番の薬用茶です。「梅しょう葛」も整腸作用があり、消化器系によい薬用茶です。

血糖値が安定しない人は、気分も変動しやすく不安感に襲わやすいでしょう。また消化器系がよくないと、考えすぎたり、重苦しく猜疑心の強い性格になるといわれています。一方消化器系が健やかな人は、穏かで思慮深く、落ち着いていて、人から信頼されます。体調が心の状態に影響を与えると考えるところが、東洋医学的です。その逆もまた然り。考えすぎは消化器系によくありません。

音による調整

音もまた五行と関連づけられていて、特定の音が臓器に対応しています。音とは周波数ですから、特定の周波数が臓器に反応するということです。脾臓によい音は「Heee」(ヒー)です。

臓器
肝臓 Ka(カー)
胆のう Da(ダー)
心臓 Shi(シー)
小腸 Toh(トー)
脾臓 Hee(ヒー)
Iii(イー)
Ha(ハー)
大腸 Ah(アー)
腎臓 Ji(ジー)
膀胱 Bo(ボー)

音による調整は次のようにします。ひとりでするときは、自分の掌を脾臓のあたり、左脇腹に置き、目を閉じて呼吸を整えてから、音を10回から15回唱えます。声の振動が体の内側に浸透するのをイメージするとよいと思います。おまじないのようなものですが、興味のある人は試してみてください。