糖と味覚

糖は、多糖と単糖を区別して考えることが大切です。なぜなら多糖と単糖では代謝過程において血糖値の動きやミネラルバランスのとり方に違いがあり、同列には論じられないからです。一般に、人が食べてよいのは多糖であり、単糖は避けるのが無難です。単糖類の代表が、砂糖です。砂糖の甘さに引きつけられた人類は、食生活の隅々まで砂糖を浸透させました。

砂糖は、口に入った瞬間に甘く感じます。それゆえ、甘味を欲する人はいきおい砂糖を食べることになります。甘さを味わうためには砂糖を食べなければいけないのか?砂糖をやめたら甘さをあきらめなければいけないのか?気になる人もいらっしゃるかと思います。そこで今回は、多糖と単糖を比べながら、糖と味覚について考えてみます。

甘味と砂糖摂取量

多糖と単糖の違いは、味覚上もはっきりしています。単糖は甘く、多糖は甘くありません。もちろん両者ともに糖ですから甘いことは甘いのです。しかし、口に入った瞬間に甘いと感じる、すなはち味覚が甘いと感知する甘さは、なんといっても単糖が勝ります。なかでも蔗糖は、そのほかの単糖類に比べてその甘さが際立っています。蔗糖はそのまま百パーセントで砂糖になります。

現代人は、お菓子好きの甘党の人にかぎらず甘党でなくとも砂糖を相当量摂取しています。日本人の一日の砂糖摂取量は50グラム、アメリカ人は100グラム摂取しています。砂糖摂取量に世界共通の許容値はありませんが、WHOが発表した砂糖摂取量の指針は、総カロリーの5パーセント未満です。これは成人で一日に約25グラムに相当しますから、現在の摂取量からすると大幅な削減をWHOは求めていることになります。もっと厳しい意見は、『砂糖常習癖を克服しよう』の著者、ナンシー・アプルトン栄養学博士です。博士の考えでは、人がいちどに耐えうる砂糖摂取量は10グラム未満、小さじ2杯ていどです。

さて、ここで質問です。砂糖摂取量が多いほど、人は甘味を感じるのでしょうか?つまり、摂取する砂糖の量が多ければ多いほど人が感知する甘味は増すのでしょうか?

砂糖が多ければその分甘く感じるはず…と、一見思います。でも、ちょっと待ってください。では、「甘さ控えめ」のお菓子が、人によってとても甘く感じられるのはなぜでしょうか?あるいは逆に、控えめすぎて甘く感じなかったりするのはなぜでしょうか?

それは、甘味の感じ方は個人の味覚によるからです。同じ量の砂糖を使っても、その甘味への感じ方は万人が同じではありません。つまり、人が感じる甘味は砂糖摂取量に比例しません。

砂糖は、甘味への味覚を鈍らせます。砂糖の甘味はとても強いので、その甘さに慣れると、砂糖よりも弱い甘味を感じられなくなります。たいていの自然の食べ物には、本来備わった自然の甘味があります。しかしその甘味は穏やかですから、砂糖の甘味に舌が慣らされると、自然の甘味を感知できなくなるのです。そもそも人が砂糖を使うのは甘味を味わいたいためだったのに、砂糖を使えば使うほど甘味への感度が鈍くなるという皮肉な結果が待っています。

引き算の味覚戦略

熟達した料理人が料理の極意を尋ねられ、「引き算の味つけ」などと答えることがあります。これは、味というものは調味料を足して整えるものではない、という意味のようです。マクロビオティック料理においても、甘味を引きだすために塩を加えます。砂糖を加えるのでは、もちろんありません。

より甘味を感じるためには、この引き算の方法が有効です。どうするかというと、砂糖を絶ちます。砂糖を捨て、砂糖の入った食べ物を買うのをやめます。これはしかし、口でいうほどたやすくありません。なぜなら売られているもののなかに、砂糖の入らない食品や料理はほとんど見当たらないからです。お菓子は当然のこと、漬物のような加工食品でさえも砂糖が使われています。したがって砂糖絶ちをしようと思えば、食材をそろえて一から料理をする手作りの食生活をしなくてはいけなくなります。

砂糖絶ちを始めて最初の頃は、甘味をまったく感じなくなって、料理がまずく感じられるかもしれません。そして次にやってくる関門は、クレービングです。クレービングとは、とにかく欲しくてたまらず貪り食いをすることです。多くの人が多かれ少なかれ経験するでしょう。それともうひとつの関門は、禁断症状です。禁断症状は砂糖依存の程度によって変わりますが、ひどい場合は吐き気や頭痛や振るえなどの症状をともなうこともあります。

クレービングと禁断症状を考えると、砂糖絶ちは「やめるんだ!」という強い決意をもって始められるべきです。もうひとつの大切なことは、一気に行うのではなく、段階的に砂糖の量を減らし、メープルシロップなどの代替甘味料を用いながら徐々に体を慣らしていく方策をとることです。

禁断症状を乗り越えたとき、体は砂糖がなくてもよい体質に生まれ変わります。するとどうでしょう?それまで甘く感じなかった料理が甘く感じられます。食べ物そのもの素材そのものに甘味があることが、はっきりと感じられてきます。ご飯は甘く、たいていの野菜や豆も甘い味がします。何の味つけもしないのに…。そう、砂糖によって麻痺していた味覚が戻ったことに気づくのです。

こうなればしめたもの。あとは全体的に調味料を少量ですませられます。もう甘味を感じるために砂糖を使う必要はありません。いえ、このようにいいましょう。食べ物の豊かな甘味を味わうためには砂糖を使ってはならない、と。

甘味と五行

最後に、甘味を陰陽五行から考えてみましょう。陰陽五行の配当表には、五味といって、酸味、苦味、甘味、辛味、しおから味がそれぞれ五行に分類されています。そのうち甘味は「土」に属しています。「土」は中央に位置し、色は黄色、胃・膵臓・脾臓を司り、思慮の感情に関係しています。

甘味が中央に位置しているのは、それがすべての味の基本と考えられているからでしょう。「甘は脾に入る」ともいい、甘味は脾臓ひいては消化器系を養います。しかしその甘味が砂糖などの極端な甘味の場合、逆に脾を損ない、糖尿病など代謝系の病気になりやすいでしょう。

消化器系を病むと、考えすぎて不安になりやすいといわれます。逆に考えすぎは、消化器系によくありません。砂糖の過食で血糖値が乱高下している人は、気分もまた盛り上がりと落ち込みを繰り返しているのではないでしょうか。考えすぎず不安にならず、いつも気分が安定しているのが、健やかな消化器系の証です。

2015年3月

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