花粉症ディスチャージ

「花粉、花粉」と世のなかが騒がしくなっています。それだけ花粉症に悩まされる人が多いのでしょう。花粉の飛散状況を予報する"天気"予報を見ながら、しかしこの予報が本当に役立つのだろうかと、ふと疑問に思いました。花粉が花粉症の原因であるなら、どんなに花粉が飛ぼうが花粉症にならない私のような人間は特異体質なのでしょうか?

花粉症にならない私も、かつては花粉症のような症状に悩まされていました。当時はまだ花粉症という"病名"はなく、「アレルギー性鼻炎」と診断されましたが。また当時はマクロビオティックなんてまったく知りませんでしたから、普通の一般の食事をしていました。その後は治ったような治らない曖昧な状態が続いていましたが、食事をマクロビオティック食に変えてからはすっかり治りました。

外の環境が変わったわけでもないのに治った花粉症。これは感染症においても同じことがいえます。空気中を漂うウィルスを同じように吸い込んでいるはずなのに、発症する人と発症しない人がいる、あるいは同一人物であっても発症するときと発症しないときがある…。この違いは、個人の免疫力の差にあると考えられます。

免疫力が強い人は、外界から入ってきたウイルスなどに侵されにくいのに対して、免疫力が弱い人はすぐに侵され発症します。免疫力の強さが健康の鍵のようです。では、その免疫力の差はどこから生じるのでしょうか?ストレス、生活習慣、心のもちよう…。どれも関係がありそうですが、やはり食事を抜きにしては考えられないでしょう。

食事を問題にしない医療はありえないと、ヒポクラテスは教えました。病気を治すには、どんな食べ物をどのように食べるかがとにもかくにも大切であるということを、西洋医学の父であるヒポクラテスはこう高らかに宣言しました。「食べ物を汝の薬とせよ、薬を汝の食べ物とせよ」と。今ではほとんど顧みられなくなったヒポクラテスの箴言を、やはりここで思いだしておきましょう。

マクロビオティック食事療法によって体質が改善されると、治癒力が発動してそれまで体内にあった余分なものが排出されることがあります。これをディスチャージと呼びます。好転反応と呼ぶこともあります。ディスチャージは、人体が食べ物から必要な養分を摂りだした後、その残りの利用されなかったものや燃えかすのような廃棄物を体外に排出することです。そうすることで、体がうまく機能するように調整しているのです。排出の方法はさまざまです。泌尿器系の排泄はもちろんのこと、発汗、発熱、吹き出物、湿疹もそう。咳、鼻水、痒み、といった花粉症の症状も、一種のディスチャージ現象であると考えられます。

ディスチャージ現象がいきなり表れると、たいてい人は動揺します。何か病気にとりつかれたのではと不安になり、その症状を押さえ込もうと躍起になります。しかしディスチャージ現象は、耐え難い苦痛であれば別ですが、そのままにしておいても自然治癒することが往々にしてあります。あるいは、その原因に心当たりがあればその摂取物を除去し、回復を待つのもよいでしょう。

ディスチャージの元は、摂取した食べ物だと考えられます。例えば、体内で粘液を作りやすいといわれるのが、小麦粉練り製品です。精白小麦粉で作られるパン、クッキー、クラッカー、その名も"糊”のペイストリーなどがそうです。精白米や精白砂糖も、すっきりと代謝しません。私自身の体感では、精白米は鼻水など水っぽいディスチャージの元になるようです。砂糖も同様です。砂糖で甘くされたお菓子などを食べると喉がとても渇きます。それで水分を多く摂ってしまいます。

日本人は精白した食べ物を常食していますから、ディスチャージをしなくてはならない体質になっているのではないでしょうか。花粉症とは、花粉という異物を媒介して体のなかの余分な水っぽい粘液のようなものがディスチャージされる現象、と考えられなくもありません。

玄米食が健康によいという認識が広まり、玄米を食べる人も増えてきました。なぜ玄米がよいかについては、色々な説明がなされます。ビタミン類やミネラル分に富んでいて栄養的に優れているとか、胚芽のない白米は発芽しないが発芽する玄米は生命力があるとか、「一物全体」といって食べ物をまるごと食べるのが伝統的な食事であるとか。もちろんそうですが、そのほかには、代謝過程で余分なものを生じさせない、すなはちディスチャージの元を作らせないということも玄米食の大きな利点だろうと思います。別の言い方をしますと、代謝過程で余分なものを生じさせる食べ物を避けるのが、マクロビオティック食事療法の戦略だともいえます。

とはいえ、個別に食べ物をいちいち気にし始めると全体が見えにくくなります。花粉に対してだけでなくあらゆる病原に対して免疫力を高めておくには、未精白の穀物を主食とし、新鮮な野菜や海草、豆などの植物性の食べ物を中心にした食事がよいという結論に、やはり最後は落ち着きます。

しかしなぜ花粉なのか、という疑問は残ります。花粉が飛散する春先は、陰陽五行説では東の方角、木気に当たり、五臓のなかでは肝の働きが亢進しやすい時期とされます。その分、肝臓の働きが不安定になりやすいということかもしれません。

花粉を大量に飛散させている杉の木は、戦後多く植樹されました。その杉の木が伐採されないまま山に居座り杉花粉を大量に発生させているというのですが、なんだか腑に落ちません。杉の木はむかしから山に生えていますが、花粉症はありませんでした。

今とむかしで劇的に変わったことといえば、杉の木よりも食事の方ではないでしょうか。ですから花粉症予防のために食事を変えるのは、決して的外れな策ではないでしょう。むしろ、それをせずに外界に犯人探しをすることの方が的外れだ、ということもあるのです。案外楽に花粉症、もとい花粉症ディスチャージが消えてなくなることは、あります。

2011年3月

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