不思議な『熱中症』

むかし炎天下の戸外にでようとすると、「日射病になるから外にでるときは帽子をかぶりなさい」と親に注意されたものでした。最近よく耳にする熱中症は、屋内にいてもなります。家のなかにいて熱中症?最初聞いたときは信じ難かったです。こちらの疑念をよそに、冷房をつけない部屋で就寝中に熱中症で死亡するニュースが後を絶ちません。熱中症とは、不思議な症状です。

熱中症は、「体が熱くなる」症状だといいます。なぜ、体が熱くなるのでしょうか? そもそも、人の体には暑さ寒さといった外気温の変化に適応する調節機能が備わっています。暑いときには皮膚の表面の毛穴がひらき、発汗することによって熱を体外に放出します。反対に寒いときには毛穴をきゅっと閉じて、体内の熱を逃がさないようにします。熱中症の人は、この調整機能がうまく作動しないのでしょうか?

自動制御の体温調節機能以外に、自らが意識的に行える気温への調節方法があります。それは、衣食住の生活方法を季節に合わせることです。夏には夏の服装をし、夏の食べ物を食べ、涼をとる夏仕様の住まい方をするのです。言葉にすれば簡単なのですが、意外とこのような“文化”を私たち現代人は忘れがちです。

食に関しては、季節のものを食べるのが自然な食べ方です。幸いに自然とはよくしたもので、その季節にできるものはその季節の気候に対応します。夏ですと、夏野菜は陰性なので体の熱をとってくれます。逆に冬ですと、根菜類は陽性ですから体を温めてくれます。そこで、夏は全体的に陰性の食事にすることで、暑さに対応できます。冬は全体的に陽性にすることで、寒さに対応できます。いずれの場合でも、極端に陰性もしくは極端に陽性の食べ物は避け、あくまでも中庸が基本です。

現代の一般的な食事には、こうした季節に応じた陰陽のバランスという考え方がありません。極端に陰性もしくは極端に陽性の食べ物を、季節も気候風土も無視して一年中食べています。これでは気候に適応できないばかりか、知らず知らずのうちに不健康になったとしても不思議ではありません。

季節を無視した食事の最たるものが、夏に肉を食べることです。人々はどういう勘違いからか、夏になるとバーベキューなどの肉料理をしたがります。夏バテしないように肉を食べて力をつける、というのですが、ちょっと待ってください。肉は夏の食べ物でしょうか?違います。冬の食べ物です。

そもそも肉は、牧畜によって得られる食べ物です。また動物性ですから陽性が強いです。牧畜というのは、寒冷な気候で野菜が乏しいとか、不毛の乾燥地で農業に向かないところで営まれます。そうした厳しい環境に対抗するために、体の内側から熱する肉を食べて活動的になるのは理にかなっています。

その肉を、高温多湿の日本の蒸し暑い夏に食べるとどうなるでしょうか?体が重くなり、内に熱がこもります。強烈に冷やさなければとてもやれません。そこで冷えたビール、砂糖入り清涼飲料水、甘いお菓子、果物といった極端に陰性のものがほしくなります。冷たい飲料をガブガブ飲みますと胃腸が冷やされ、その結果消化力が弱まります。消化力が弱まれば当然力がでませんから、力をつけようとしてまた肉を食べ、熱くなり、また冷やし・・・この悪循環が繰り返されます。こうして、夏バテになります。

熱中症に話を戻しますと、熱中症は体内に熱がこもって自ら下げられない状態ですから、体温調節機能が正常に働いていません。もしくは、その能力が追いつかぬほどに体を内側から熱してしまっていることが考えられます。熱中症になった人がどのような健康状態であったのか気になるところですが、同じ暑さのなかでも熱中症にならない人もいることを考えれば、原因は外的なものではなく内的な「何か」なのでしょう。その何かが食事であると疑ったならば、疑いすぎでしょうか?

ちまたでは、熱中症の予防に水分をとるようにしきりに促されます。自ら体温を下げられないとすれば、それもやむをえませんが、もしも熱中症の前段階に極度の夏バテ状態があるとするならば、夏バテ状態を回避するのが本当の意味で予防になるでしょう。それには、猛暑の最中にわざわざ直火焼きの肉や塩辛いチーズののったピザを食べ、暑いからと清涼飲料水をやたらくたらと飲むような暴飲暴食は慎まなければなりません。夏は、菜食に適した季節です。体内のミネラル分を奪われないように清涼飲料を控え、清涼飲料をやたら欲しなくてもすむように菜食を腹八分にすれば、暑さのなかでも元気でいられます。

2010年8月

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