おせちふたたび

無形文化遺産

2013年12月、関心を引くニュースが飛び込んできました。和食が、ユネスコの無形文化遺産に登録されたというのです。おりしも正月の準備にかかろうという時節、このニュースが和食見直しのきっかけになればと淡い期待を抱きます。

  1. 新鮮で多様な食材とその持ち味の尊重
  2. 栄養バランスに優れた健康的な食生活
  3. 自然の美しさや季節の移ろいを表現した盛りつけ
  4. 正月行事などの年中行事との密接な関わり

1は、食材そのものの味を生かした調理法ということ。2は、日本食への国際的な評価。3と4は、季節感を大切にし旬のものをいただく食習慣ということのようです。特に4は、もちつきを始めとする正月の風習を指していて、なかでも大きな位置を占めるのがおせち料理です。ユネスコが発表した文書から引用しましょう。

日本人は、新年の神々を迎えるため、餅つきをし、また縁起ものとしての象徴的な意味をもつ、新鮮な素材を使い、美しく盛りつけられた特別な料理を準備する。これらの料理は、特別な器に盛られ、家族やコミュニティが集まって食される。地域で採れる米、魚、野菜、山菜などといった自然の食材がよく用いられる社会的慣習である。

農林水産省プレスリリース平成25年12月5日

文面から全体として、日本の食文化の伝統が高く評価されたようです。この定義文にあげられた和食の特徴は、そのままマクロビオティック食に当てはまることに気がつかれたでしょうか。「地域で採れる米、魚、野菜、山菜などといった自然の食材がよく用いられる」とは、マクロビオティックの原則「身土不二」にほかなりません。家庭料理として受け継がれてきたことも、両者に共通しています。

2については、複雑な感慨を抱きます。和食が栄養バランスに優れた健康食であるというのは、いったいいつからそういうことになったのでしょうか?近代栄養学の考えでは、私たちが思い描く和食あるいはマクロビオティック食は栄養的にバランスがよくないと見なされます。その"反省"から第二次世界大戦後、日本人の食事を改善する栄養指導が国を挙げてなされたのでした。その指導の中身は、もっと良質の蛋白質を、もっと肉・乳製品を、そして米よりもパン食を、というものでした。その結果が、現在の日本人の米離れ、魚離れ、すなはち和食離れです。なのにユネスコは、その栄養的に劣っているはずの和食を「栄養バランスに優れた健康的な食事」といっています。

どちらのいうことが正しいかといえば、もちろんユネスコの方に軍配が上がります。少なくとも国際社会においては、日本食は「栄養バランスに優れた健康的な食事」と評価されています。世界の栄養学から遅れているのは、実は日本の栄養学の方なのです。日本の栄養学はいまだにひとむかしふたむかしも前の古臭い近代栄養学を信奉していて、それを正すということをしていません。

いまどきのおせちとマクロビオティックおせち

日本人はおせち料理の風習を捨て始めています。外食化と既製品化が進み、かつてはお正月にどの家庭でも作られていたおせち料理が作られなくなっています。その中身も大きく様変わりしました。肉や魚が多く使われ、和風のみならず洋風や中華風の献立までもが登場し、解読しなければ何の料理かわからないほど凝った豪華なメニューの数々。むかしながらのおせち料理とはほとんど別物のようです。和食の価値が国際的に評価されるのは喜ばしい反面、現実にはその食文化が日本の家庭から失われつつあるのは、なんとも皮肉です。

おせち料理元々おせち料理は、ユネスコの定義文からもわかるようにマクロビオティック食と相通じています。肉と乳製品をいっさい使わず、魚を一部使うほかは、動物性食品をほとんど使いません。大部分は、季節の野菜、海藻、豆などの植物性です。肉料理を飽食している現代人の目には、伝統的なおせち料理はとても地味に映ります。しかしマクロビオティック食を知っている人ならば、違和感はないでしょう。季節の野菜、海藻、豆などを使い、いかに工夫を凝らして“ごちそう”を作るかが、マクロビオティックおせちの醍醐味です。マクロビオティック料理と同じように楽しむことができます。

おせち料理の素晴らしさは、作る人も食べる人も皆が感謝のきもちでいただけることだと思います。重箱に詰められた一品一品を盛りつけるとき、自然と丁寧な箸使いになります。そしていただくときにもまた、自然と「いただきます」と手を合わせます。お料理を前に厳かな温かいきもちなる、これこそが日本の善き心ではないでしょうか。いまいちど、おせち料理に取り組む人が増えることを願っています。

2014年2月

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