甘酒と酒粕

字面が似ていて混同するのか、甘酒と酒粕、この両者について世のなかで誤解があるようです。その誤解を解いておこうと思います。

甘酒と酒粕は、製法のまったく違う別モノです。甘酒とは、炊いた米に米麹を混ぜて一定の温度下で発酵させたドロドロした液状の飲み物です。これに対し酒粕は、日本酒を作る工程でとれる副産物で、こちらは固形物です。なので、甘酒から酒粕を作ることはできませんし、その逆に酒粕から甘酒を作ることもできません。

商品を選ぶさいに注意しなくてはいけないのは、甘酒です。正規のといいますか、正しい作り方で作られた本物の甘酒がある一方で、非正規のといいますか、正しくない作り方で作られた偽物の甘酒も売られています。紛らわしいことに、どちらも商品名は「甘酒」なのです。

見分け方は、簡単です。原材料表示を見て、米と米麹のみであれば本物、米と米麹以外のもの、酒粕、砂糖などと書いてあれば偽物です。甘酒は米を発酵させたものですから、米のなかのデンプンが糖化して甘くなっています。元々甘いものなので、砂糖を加える必要はありません。もしも砂糖が添加されていれば、偽物です。

このように偽物の甘酒が世に出回っているのが元凶だと思いますが、酒粕を販売する酒造会社が自らのホームページなどに甘酒を作るレシピを掲載していることがあります。なんとこれが、酒粕から作る偽物“甘酒”なのです。これには頭を抱えてしまいます。蔵元といえば、杜氏を有する日本酒製造のプロなのですから、甘酒がどういうものか知らないはずがないと思うのです。いくら自社製品を売るためとはいえ、酒粕から甘酒を作れるなどと嘘をついてもらっては困ります。

甘酒は自家製できます。作り方は、まず炊いたご飯で粥を作ります。これに米麹を混ぜ入れて、50℃~60℃の一定温度で6~8時間保ちます。ご飯は、玄米、白米、うるち米、もち米、どんな米からでも作れます。もち米はうるち米より甘いので、もち米甘酒はより甘味が強くなります。玄米甘酒は、白米甘酒とはまた違ったコクのような深みがでます。難点は、糠部分がカスのように口にまとわりつくことでしょうか。

生姜甘酒といって、温めた甘酒に生姜の搾り汁を垂らした飲み物があります。これは甘酒の穏やかな甘味が切れのよい生姜の味に引き立てられて、寒い冬にホッと一服してリラックスするのによい飲み物です。夏であれば、冷やし甘酒にします。元々甘酒は、俳句の夏の季語であることからも分かるとおり、夏の飲み物です。実際江戸時代に、夏に甘酒で涼をとる風習があったようです。

酒粕ついては、甘酒のように明らかな偽物というようなものはありません。酒粕は日本酒の製造工程ででてくるもので、日本酒の仕込み時期に店頭に並びます。バラ粕、板粕、練り粕などの形態があります。このなかで練り粕は、前者二つをさらに練るなどしてできあがったものです。

酒粕の原材料表示を見ますと、たいてい「米、米麹、醸造アルコール」と書かれています。これはそのまま、その酒粕がとられた蔵元で作られる日本酒の原料ということになります。醸造アルコ-ルって何だろう?と気になりますね。

日本酒には、原材料の違いから、純米酒、本醸造酒、吟醸酒の区別があります。このなかで純米酒が、白米、米麹、水を原料とし、あとの二つは製造過程で醸造アルコールが加えられています。醸造アルコールを加えると香りがよくなるとか、腐敗防止になると製造元はいいます。それもそうかもしれませんが、増量できることが最大の利点なのではないかと思われます。添加される醸造アルコール分量は白米(重量)の10%以下と定められていて、これはできあがった酒のアルコール分4分の1に相当するということです。醸造アルコール無添加の酒粕がよいという方は、純米酒の酒粕を探しましょう。純米酒酒粕であれば、原材料表示には「米、米麹」とだけ書いてあるはずです。

甘酒と酒粕それぞれの陰陽はどうなっているのでしょうか?定説はありませんので、勝手に類推してみます。まず両方とも原材料は米ですので、全体的には中庸に位置します。次に、米麹によって発酵させられていますので、やや陰性になります。ただし、酒粕は絞り粕なので酒に比べればやや陽性でしょうか。酒は陰性です。甘酒も陰性と考えてよいでしょう。でも酒ほど陰性ではありません。穏やかな陰です。

2011年12月

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