辛卯の新年に

2011年2月3日は、旧暦の1月1日。あけましておめでとうございます。辛卯年の始まりです。辛卯の“辛”は金気、“卯”は木気。また今年は九星では七赤金星で、金気。金と木は相剋の関係ですから、厳しい緊張を感じさせます。

さて、昨年は酷暑、この冬は厳寒。気候は相変わらず、極端から極端へと走っています。冬から春をとばしてすぐ夏になり、秋もそこそこにまた冬がやってくる、雨はドシャ降りか、さもなくばカラカラ乾燥というように、極端に暑いか極端に寒い、極端な降雨か日照り、というようなことが多いです。まるで両極端を振り子が激しく揺り動いていて、中間にとどまっていられない感じがします。

両極端を行き来するのは気候だけではありません。現代の食事もまた、同様です。例えば、定番の朝食メニュー、チーズ(極陽性)を乗せたトーストにハムエッグ(どちらも極陽性)、トマト(極陰性)とレタスの生野菜、そしてコーヒー(極陰性)は、その典型といえます。

極端な気候と極端な食べ物。一見関係なさそうな両者は、しかしとても密接な関係があります。極端に暑い気候すなはち熱帯性気候の下では、陰性の強い食べ物が産出されます。極端に寒い気候すなはち寒帯性気候の下では肉や乳製品など極陽性の食べ物が生産されます。ですから、極端に陽性な食べ物と極端に陰性な食べ物が同時にある食事とは、つまるところ熱帯性気候と寒帯性気候が同時に存在する環境を人為的に作っていることにほかなりません。

極端から極端へ走る食事は、極端を行きつ戻りつする気候と同様に適応するのが難しくなります。食べ物の影響に対して体はバランスをとろうとしますが、いかんせん激しい振り子のごとき揺れにだんだん耐えられなくなります。そして疲弊します。中庸を欠いた性質は、気分の不安定さや体調不良となって表れやすくなります。どっしりとした安定感が持続しないので、すぐに外界の刺激を欲することにもなります。

むかしの人は、“身土不二”といいました。現代用語に直すと「地産地消」ということでしょうか。これは、人はその土地で産する食べ物を食するべきである、裏を返せば、遠く離れたところに産する食べ物を食べてはならないという意味です。したがって温帯で生活するかぎり、熱帯産のバナナ、コーヒー、砂糖、元来寒冷な北ヨーロッパの食べ物である乳製品を省き、その土地で生産される完全穀物、豆類、野菜、海藻類、温帯産果物・ナッツなどをもっぱら中心とした食事が、身土不二の環境に適した食事法です。そしてこうした食事が結局のところ健康を保証してくれます。

完全穀物、野菜、豆、海藻は総じて中庸の性質をもっており、極端な陽性もしくは極端な陰性の作用を及ぼしませんから、体にやさしく気分も安定します。また地元で生産されるものが多くなりますから、自ずと食料自給率を高めることに貢献します。フードマイレージも劇的に縮めるでしょう。フードマイレージとは、食料が生産地から消費地まで運ばれる輸送距離のこと。食べ物が遠距離輸送すればなるほど化石燃料を多く使います。反対に近距離の食べ物を選べば、省エネになります。

昨日はヨハネスブルグ、今日はアラスカ、明日はカルカッタ…。環境が極端に変わるのは面白いかもしれません。ジェットコースターに乗っているような刺激がたまらない、という人もいるでしょう。しかし、いつもこのような状態でいなくてはいけないとしたら?やがて体力を消耗して、疲労するでしょう。疲労が常態化し、不安定さにさいなまれ、そして病んでいくことでしょう。

膨大なエネルギーを浪費しながら極端から極端に走り続ける文明の渦中に、幸か不幸か私たちはいます。この渦から抜けだすには、意外なところに鍵があります。それは、食べ物です。ひとりひとりが身土不二の食事を実践し、中庸を保つのです。そして惑星全体がこの渦から脱したとき、人類は、健康と穏やかな気象を手に入れることができると、この年の初めに想像したとしても夢想のしすぎではないと思うのです。

2011年2月

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