乳製品ってどんなもの?スティーブ・ラストガーデン

原文:『What About Dairy?~A Look Behind the Milk Mustache~』 by Steve Lustgarden with Debra Fay Holton
出典:『Earth Save_1997年夏号パンフレット』

スーパーマーケットで買い物をしている客のショッピング・カートの中を覗いてみれば、コーンの缶詰、ライス・クリスピー、人参とセロファンの間に混じって、牛乳ジョッキ1杯分、ヨーグルト1箱、V字片チーズ一、二個を掘りだすのはとてもありそうなことである。そのカートが、北米に一億二千万人いるといわれるベジタリアンの買い物カゴであったとしても・・・。

この十数年間、きらびやかな産業界の販売活動と、学校での国の栄養“指導”のかいあって、乳製品は強い骨と歯を作る食品であると世界中で認知されている。さればこそ、北米人は次のような指摘が、たとえ医学界の権威によってなされたとしても耳を貸そうとしない。乳製品は、人の健康にとって必要なものではなく、地球上の大部分の人々はそれがなくともいたって健康でいられる、と。

たぶんあなたは、もっと受け入れ難く感じるだろうが、さらにいわせてもらえば、乳製品を除くか減らした食事が、最適な健康を作るのに重要であることを示す科学的な証拠が、次々と集積されているという事実がある。

「乳製品が必要ないって、どういう意味?」

乳業界は、華やかな宣伝広告に巨費を投じ、乳製品は体に良くてカッコイイだけでなく、健康にとって全く不可欠のものであると、私たちに信じ込ませようとしている。不可欠だって?

『牛乳は、人間にとって全く必要ではありません』と主張するのは、アメリカ栄養協会編『菜食者の食事に関する見解』の著者であり、栄養に関する著作を数冊上梓したスザンヌ・ハヴァラ博士である。『わが国で牛乳と乳製品を食べる習慣は、厳密にいえば全くの文化的な伝統なのです。牛乳を全く飲まない民族は世界中に五万といますが、彼らにとって不都合なことはまったくありません』

1996年に出版された『菜食の方法』の著者であるヴァージニア・メッシーナとマーク・メッシーナ博士も同様の見解を示している。『乳製品を食べない菜食は、西洋の基準からすると変わった食事のように見えるが、世界標準から見ればしごく当たり前の食事である。(中略)牛乳が食事に不可欠であるという考えは、明らかに間違っている』

カルシウム特ダネ

『でも、乳製品は有益なカルシウム源じゃないの?』との声が聞こえてきそうだ。

牛乳、チーズ、ヨーグルト、またそれらに類似した食物は、私たちの健康の柱ではないが、カルシウムは私たちの健康の柱である。カルシウムは血液中に少量含まれており、血液凝固、筋肉収縮、心拍調整、正常な神経機能に非常に重要な働きをしている。カルシウムの約99%(合計約84g)は骨と歯に蓄えられており、骨と歯の強さはカルシウムに支えられている。そしてカルシウムが必要になれば、骨から血液中に放出される。

しかし、ブロッコリーの中のカルシウムも、カッテージ・チーズの中のカルシウムも、カルシウムはカルシウムである。『最良のカルシウム源などありません』と、説明するのは、クレイトン医科大学・骨粗しょう調査センター教授、ロバート・ヘイニー博士である。『乳製品中のカルシウム含有量の数値からは、確かに乳製品は魅力的なカルシウム源のように見えます。しかし、乳製品中のカルシウムだけがカルシウムではないのです。植物性食品からカルシウムを適切に摂取できない理由は、どこにもありません』

事実、栄養人類学者らの見解では、我々の先祖である初期人類は、野生植物からカルシウムのほとんどを取っており、牛乳をジャンスカ飲んでいる現代人よりもカルシウムの摂取量が多かった。また、およそ一万年前までは、人類は牛乳を消化できなかった、と主張する人類学者もいる。

骨の健康とカルシウムはどういう関係があるのか?

乳製品はカルシウムに富んだ食品であり、折れない骨を請合うともっぱらの評判であるが、問題は、この評判を保証する医学文献が乏しいことである。非常に多いカルシウム摂取量、例えばRDAの成人一日当たり800mgという推奨値でさえも、骨の健康によいという科学的な根拠はないのである。

『世界で最も多くカルシウムを摂取している人々が、実際には最も脆い骨をもっていると知れば、きっと驚かれると思います』と、メッシーナ博士。『カルシウム剤を飲んでいれば骨は健康でいられるとの考えは、全く間違っています』

確かにそうなのだ。科学者の調査研究から、カルシウム摂取量が最も高い水準にある国々(スウェーデン、アメリカ合衆国、フィンランド、イギリス)では、骨盤骨折の割合が最も高く、カルシウム摂取量の水準がそれほど高くない国々(シンガポール、香港、南アフリカの黒人)では、骨折はとても少ないことが示されている。世界各国の骨折の比率を調査したJ・A・ケイニス研究員は両者の違いを、『カルシウム摂取量だけでは説明できませんが、おそらく(強い骨を作るような)運動に関係しているかもしれません』

骨折しにくくする方策として、高カルシウム食品を多量に摂取する以上のことが、明らかに求められている。カルシウムを摂ることは、とても大切である。とりわけ幼少期から成長期、成人するまでの間と、骨の成長が頂点に達して止まる三十歳から三十五歳の間はそうである。しかしそれ以上に、骨に蓄えられたカルシウムを維持することが不可欠なのではないだろうか?そうなのだ。数多くの研究結果が示しているのは、カルシウムのバランスを決めるさい、カルシウムの消失を防ぐことが摂取することよりも三倍から四倍重要である、ということである。そして、カルシウムを最も消失させるのは、高蛋白質の食事であることが判明した。

むだな流出

蛋白質、中でも動物性高蛋白質は、尿を酸性化する。この状態のとき、アルカリ性のミネラル分が骨から取りだされることによって、体は元の状態に戻る。その結果、体内のカルシウムが尿となって排泄される。この現象から特に懸念されるのは、典型的な北米人は、蛋白質の推奨値(RDAでは、成人女性一日50g、成人男性一日60g)の二倍の量を摂取していることである。蛋白質とカルシウムの関係を調査した十六の研究結果から、一日の蛋白質摂取量が75gを超えると、体内に蓄えられていたカルシウムが尿中に排出し消失してしまうことが分かった。蛋白質摂取量がこの水準であっても、閉経後の女性にありふれた骨の喪失を全て説明できるだろう、と科学者は推測している。

ハヴァラ博士をはじめ研究者の見解を総合すると、アメリカ人が蛋白質の摂取量を減らすだけでも、カルシウムの消費量を減らすことができる、との結論に至る。ヘイニー研究員は、食事をガラリ変えることに消極的なアメリカ人にとって、この見方は根拠はあるがまだ議論の余地も残しているという。『大方の人々にとって、カルシウム消費量の問題に手をつけるよりも、摂取するカルシウムを問題にした方が楽なのです。低脂肪乳か脱脂粉乳を毎日一、二皿余分に取ることでこの問題は解決します』

一方、三十年以上第一線の小児科医として著名なチャールズ・アトウッド博士は、異なった見方をしている。『高蛋白質食品である牛乳を飲むことは、カルシウム不足への解決方法というよりも、かえって問題を助長することになるように思われます』

高蛋白質の乳製品が、高蛋白質ゆえに含有量の多いカルシウム分を相殺してしまうのかどうかについて、科学者の見解が統一されるまでには、さらなる研究が必要である。それまでの間、食事に乳製品を含める選択をする人は、ハヴァラ博士が薦めるように、脂肪分を除いた乳製品だけを食べるようにし、かつそれらを一日一、二皿までに制限するとよいだろう。

カルシウムの必要量はどれくらい?

{事実}:合衆国のカルシウム推奨値は、アメリカの典型的な高蛋白質の食事を前提に、それを埋め合わせられる量よりも高く設定されている。

{事実}:カルシウム摂取量が、合衆国の推奨値である一日800mgよりも相当少なくて強い骨を保持している民族は、世界中にいる。WTOの推奨値は、一日400から500mgである。

{事実}:普通の食事をしている人と菜食をしている人を比べると、菜食者は一般人よりも骨密度が高く、骨粗しょう症が少ない。

{事実}:菜食の食事は一般に低蛋白質であり、カルシウムの吸収と維持がよりうまくいくので、必要とするカルシウム量が少ない。

食品 カルシウム含有量(mg)
強化豆乳(1カップ) 200~500
強化オレンジジュース(1カップ) 300
豆腐(113g) 120~392
コラードグリーン(調理済1カップ) 357
かぶ葉(調理済1カップ) 249
ケール(調理済1カップ) 179
胡麻(大さじ2杯) 176
ボクチョイ(調理済1カップ) 158
テンペ(1カップ) 154
タヒニ(大さじ1杯) 128
アーモンド(1/4カップ) 97
ブロッコリー(調理済1カップ) 94
牛乳(1カップ) 300

以上のような事実があるのにも関わらず、医学の権威筋はいまだに植物性を主体にした食事をしている人に、国の推奨値を守ることを勧めている。なぜなのか?医者先生方の中には、菜食者がカルシウムを少ししか必要としないという証拠はまだ確定的でないと主張したり、カルシウムはそれほど重要でないとの間違った観念を菜食者自身が抱きかねないことを懸念する人がいる。

国の推奨値は、カルシウム分に富んだ食品を毎日二皿以上食事に加えれば、ほとんどの場合達成できる。(さらに良い点は、これらの食品は、抗酸化物質、食物繊維、複合炭水化物、鉄分をはじめ乳製品にはない重要なミネラル分の優良な供給源である。)子ども、青少年、若年女性は、そのほかの年代に比べカルシウムを多く必要とするので、努めてカルシウムに富んだ食品を摂取するようにすべきである。もっと念入りにしたいなら、補助食品を取ってもよいかもしれない。

大豆、米、ナッツが原材料の非乳製品の”牛乳”栄養強化食品が一般に出回っているので、乳製品なしでカルシウムの必要量を簡単に満たそうと思えば、より便利でおいしいものが手に入るようになってきている。(強化食品かどうかは、表示をよく見られたし。)強化豆乳226gには、カルシウムが200から500mg含まれており、これはだいたい牛乳コップ一杯分ないしは強化オレンジジュース一杯分に含まれるカルシウム分に相当する。ほとんどの健康食料品を取り扱っている店や、たまに普通の店でも、米が原材料の牛乳、豆乳、果物ジュースが原材料のチーズやヨーグルト、氷菓デザートなどが売られている。これらの食品は、今まで慣れ親しんできた味とは少々異なるかもしれないが、心を開き好奇心を湧き立てれば、その独特のおいしさを感じることができるだろう。

骨以外の問題

私たちの関心は、乳製品が骨によいのか、はたまた有害なのかに集中しがちであるが、これ以外にも、乳製品が健康に及ぼすと思われる深刻な問題が存在する。

アレルギー

牛乳は、食物アレルギーの原因物質として最もありふれている。最新のある研究によれば、乳児のアレルギー発症件数を減らす一つの方法は、授乳中の母親が牛乳を飲むのを一切止めるか、厳しく制限することである。

小児貧血

牛乳の鉄分含有量は少ないので、子どもが牛乳に頼りすぎると小児貧血になることがある。また牛乳の多量摂取は、鉄分に富んだ食品を食事から締めだしてしまうかもしれない。牛乳蛋白質は、小児貧血の別の原因とも考えられる腸内出血を引き起こすこともある。

小児腹痛

牛乳過敏症は、乳幼児の消化器系疾病である腹痛の原因になることがある。小児腹痛は、本人が牛乳を飲まなくとも母親が飲む場合に発症することさえある。

汚染物質

牛乳は非常に多くの薬物に汚染されているので、薬局で処方箋をもらった人にだけ売った方がよいと、ワシントン・ポスト紙のコラムニスト、コールマン・マッカーシーは揶揄する。1992年の合衆国政府白書では、食品医薬局が検査したのは乳牛に使用が認められている83種類の薬のうち四品目についてであった。最も使用頻度が高かった三十五品目については、使用が認められていなかった。薬の残留物は、牛乳を飲んだ人にアレルギー反応を引き起こすことがある。また、がんの発症の危険性を高めることもある。

1993年、遺伝子組み換えウシ成長ホルモン(BGH)が、賛否両論の中、乳業会社によって広く導入された。遺伝子組み換えウシ成長ホルモンに反対する人たちは、ウシ成長ホルモンは、既に牛乳が生産過剰になっているこの時世に生産量をさらに促すものであり、牛乳中の抗体残留物質の増加など消費者にとって潜在的に深刻な危険をはらむものである、と考えている。

心臓病

乳製品は、食事における脂肪、飽和脂肪酸、コレステロールの比率を増大させる食品である。循環器系医師ディーン・オーニッシュ博士によれば、牛乳は牛肉に次いでアメリカ人の食事の中で最も飽和脂肪酸を多く含む食品である。考えてみたまえ。コップ二杯の牛乳の2パーセントが、スライスベーコン三枚分に含まれる飽和脂肪酸と同じ量なのである。

インスリン依存型糖尿病

最近の研究では、青少年期に牛乳を飲む習慣があると、Ⅰ型糖尿病の危険性が高くなることが示された。約百万人のアメリカ人が、この病気にかかっている。

牛乳不耐性症

多数の人々が、牛乳の中に含まれている糖分である乳糖を消化することができない。なぜなら、乳糖消化酵素ラクターゼをもっていないからである。また、牛乳蛋白質に敏感な人たちもいる。牛乳を飲んだ後に腹部の膨張、腹痛、けいれん、ガス、下痢などの腸の症状があるアメリカ人は、5千万人いると推定されている。

婦人科系疾病への懸念

これまでの研究から、乳製品の摂取量が世界的に高い水準にある国々では、骨粗しょう症と卵巣がんの発症率が高いのに対して、乳製品の摂取量が少ない国々ではこれらの病気が低い水準にあることが示されている。アメリカでは毎年、骨粗しょう症による死亡者数は2千万人、卵巣がんによる死亡者数は一万四千人に上る。産婦人科医クリスチャン・ノースラプ博士によれば、それ以外の乳製品の摂取との関連が疑われる病気は、乳房の良性腫瘍、慢性膣炎、にきび、月経痛、繊維腫、慢性腸疾患、子宮内膜症による痛みの増大などがある。

このような数々の発見により、乳製品の本当の費用と利益を見直す人々が急増している。著名な乳がん執刀医ロバート・クレージャン博士もその一人である。博士は最近、五百例以上の牛乳に関する医学文献を再検証し、以下の結論に達した。『牛乳が優れた食品であり、副作用がないと主張している研究者は一人もいなかった』

今後さらに、乳製品が完全食品であるという人々の信仰にも似た概念をくつがえす科学的事実が発見されるにつれ、乳製品をめぐる議論が白熱することを期待しよう。乳製品はいまだに人に必要な食品であると一般に認められているが、人々が乳製品についてもっと知れば知るほど、体によいと確信をもって食べることが、より困難になるだろう。

カルシウムを摂取せよとの勧告は、あたかも私たちのカルシウム摂取量が少ないことが問題であるかのような印象を与える。高蛋白質の食事が問題なのではなくて・・・。 「Simple, lowfat and vegetarian」著者スザンヌ・ハヴァラ

アメリカ人の食事の中で、牛肉に次いで最も飽和脂肪酸の含有量が多い食品は、牛乳である。飽和脂肪酸は、小児の動脈血管の詰まりからはじまって最後には、数多くの人たちを心臓発作による死に至らしむ。この事実が一般に知られるようになるにつれ、国民一人当たりの牛乳摂取量が激減している。 国立心臓救命協会会長 フォル・ソコロフ

乳製品を食べるのを止めたら月経痛がきれいさっぱり治った女性たちをそれこそ数え切れないほど見てきた。子宮繊維腫が縮小した例もある。乳房の痛みが完全に消失した例も、見てきた。・・・(中略)・・・牛乳は、自然な完全食品ではない。それはむしろ、乳業評議会による販売促進のための洗脳にすぎない。 「Women's bodies, women's wisdom」著者クリスチャン・ノースラプ

乳製品が健康に及ぼす被害は、たいていの人がそれを“健康食品”と思い込んでいることによって、何倍にも拡大している。彼らは乳製品を、“体によく”、骨の成長に必要な食品であると信じて食べている。そして、それなのにどうして彼ら自身や子どもたちが肥満で不健康なのか、首をかしげている。 ジョン・マクドゥガル医学博士

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