合衆国の医科学団体の推奨する食事指針

出典:『Cancer Prevention Diet,AppendixⅠ』by michio Kushi with Alex Jack

公衆衛生局長官報告書『健康な人々』

1979年の合衆国公衆衛生局長官の報告書「健康な人々」では、退行性疾病は食事によって予防することも治すことも可能であることが示され、完全穀物、野菜、生鮮果物の摂取をかなりの量増やし、肉、卵、乳製品、砂糖、そのほかの精製食品の摂取量を減らすよう勧告された。ボストンでマクロビオティック食をしている人々の医学研究については、次のように記された。『脂肪の少ない食事を普段からしているアメリカ人(マクロビオティック食などの菜食者やセブンスデイ・アドベンティスト派の人たち)は、そのほかのアメリカ人に比べて心臓病が少ない。コレステロールの少ない食事は、特定の動脈血管のアテローム層を薄くするのかもしれない』

一人当たりの標準的な栄養所要量を決めることは、各人の体質や必要度が異なるため難しいとしながらも、以下の指針を守れば全体としてアメリカ人はもっと健康になるだろうとしている。

公衆衛生局長官はさらに、現代の精製食品に対して警鐘を鳴らしている。『アメリカ人の食物が変わり、新鮮な農産物ではなく精製食品が食事中半分以上を占めるまでになった。・・・・従って、栄養的な観点から精製食品の質にもっと注意を払う必要がある』

「Healthy People:The Surgeon General's Report on Health Promotion and Disease Prevention」(Washington, DC:U.S.Government Printing Office,1979)

国立科学アカデミー報告書『食事と栄養とがん』

1982年、国立科学アカデミーは472頁の報告書「食事と栄養とがん」を発表し、その中で飽和脂肪酸、動物性蛋白質、砂糖、化学物質を多量に含んだ現代の食事は、乳がん、大腸がん、前立腺がん、子宮がん、胃がん、肺がん、食道がんなど大部分のがんと関係があると指摘した。委員会は、長年の食習慣ががんと関わる割合は、男性では30から40パーセント、女性では60パーセントであることを示す医学研究を再検証した。『かつて、栄養不足がある症候群の原因になり得ることを研究者が認めることが難しかったのと同様に、特定の病気が、豊かな普通の食事が原因でなり得ることを科学者が認めることも、ついこの間まで難しかった。』報告書は当面の間守るべき食事指針を発表し、肉、家禽、卵、乳製品、精製炭水化物の摂取量をかなり減らし、完全穀物、野菜、果物の摂取量を増やすように呼びかけている。

  1. 高脂肪食が、特定の種類のがん(乳がんと大腸がんが特に知られている)と関係があり、低脂肪食は逆にこれらのがんの危険性を少なくすることを示す証拠は豊富にある。委員会が推奨しているのは、飽和・不飽和脂肪酸の摂取量を合衆国の平均値まで減らすことである。適切かつ実際的な目標は、脂肪摂取量の総カロリーに占める割合を現在の40パーセントから30パーセントまで下げることである。しかしこの30パーセントという値は、科学的な根拠に基づいているわけではない。ただ今よりも脂肪摂取量を少なくするために、採用されているだけのことである。しかし委員会の判断では、この提案(つまり脂肪の摂取量を4分の1に減らすこと)は実際的な目標であり、実効性もある。
  2. 委員会は、果物、野菜、完全穀物を毎日の食事に取り入れることの重要性を強調している。疫学調査の結果から、これらの食物を頻繁に食べることがさまざまなタイプのがんにかかりにくくする。動物実験でも、果物(とりわけ柑橘類)と野菜の栄養素ならびに非栄養素分に関する研究結果が、これを支持している。 この提案は栄養源としての食品にのみ適用されていて、個別の栄養素に関してではない。この報告書の中で検討された広範な文献は、世界各地の民族の食事とがん罹患率との関係に焦点を当てている。しかし、個別の栄養素がそれぞれどのような形でがんの危険性を増すかについては、ほとんど触れられていない。それゆえ委員会は、サプリメントとして摂取される個別の栄養素の潜在的な毒性がどれくらいの量で人の健康に影響を及ぼすかを、予想することができない。
  3. 塩漬加工(漬物も含む)や燻製加工された食物をよく食べる国、特に中国、日本、アイスランドでは、特定の場所にがんができる率、特に食道がんと胃がんの率がより高い。食物以外に、燻製と漬物を作るさいの特定の製法が、高レベルの多環芳香族炭化水素とNニトロソ成分を発生させているようだ。これらの成分は、動物実験で微生物を突然変異させ、がんを発生させることが分かっている。従ってこれらは、人に対する発がん性の疑いがある。よって委員会は、塩漬加工(漬物も含む)もしくは燻製食品を控えるよう注意を促している。
  4. ある特定の非栄養的成分は、それが生産、加工、保存の過程で自然発生したものか意図せずにもたらされたか(汚染物質として)に関係なく、人に発がんの危険性を潜在的にもたらす。委員会は、いかなる汚染源からでも食品が発がん物質に汚染されることがないよう、引き続き努力すべきであるとしている。もしもそのような汚染が避けられない場合には、許容基準値を設け、食品が基準値以下であることを確認できるようにすべきである。さらに、食品添加物(直接的・間接的)を食品製造で使用する以前に、発がん性の可能性を評価する努力を引き続きすべきである。
  5. 委員会ではさらに、食品中の突然変異源を特定し、その発がん性の解明に今後も取り組むべきであると勧告した。なるべくなら突然変異源は慎重に排除するか濃縮を最低レベルに抑えるべきであり、そのさいには食物の栄養的価値を損なわないようにし、食事の中に有害な物質が混入しないようにしなければならない。
  6. アルコール飲料の飲み過ぎは、特に喫煙といっしょの場合上部消化器がんと呼吸器官がんの危険性を促す。それ以外にも、アルコール飲料の摂取は健康に有害である。ゆえに委員会では、アルコール類を飲むならば適量に抑えることを勧めている。
  7. 報告書では次のように総括している。『現在進行中の食生活の変化は、国民の動物性食品への依存を減らしているようだ。この調子でいけば動物性脂肪の摂取量が減り続け、野菜などからの植物性蛋白質の摂取量は増え続けていくだろう。つまり、食事中に含まれる植物性食品の割合が増えるので、がんの予防にいくらか貢献するかもしれない』

「Diet, Nutrition and Cancer National Academy of Science(Washington, DC:National Academy Press,1982)

アメリカがん協会指針

1984年、アメリカがん協会は食事とがんについての手引きを初めて作成した。その中で、完全穀物、生鮮野菜、果物など食物繊維を多く含む食物を増やすよう呼びかけた。

1991年の改訂版では、次のように記されている。『ここ数年の間に実施された多数の実験や疫学調査の結果、がんの原因の大部分は、食物、飲み物、そして生活習慣にあることが明らかになってきた。肺がん、大腸がん、前立腺がんを筆頭に、アメリカ人のがんによる死亡原因のうち3分の1が、不適切な食習慣が原因である可能性がある』

【推奨】

  1. 適切な体重を保つ。
  2. 食事に変化を持たせる。
  3. 毎日、野菜と果物両方を食べる。
  4. 完全穀物、豆、野菜などの食物繊維を多く含む食物をもっと食べる。
  5. 脂肪の総摂取量を減らす。
  6. アルコール飲料を飲む人は、量を減らす。
  7. 塩漬加工、燻製、亜硝酸塩保存加工された食品の摂取を控える。

【追記】

「Nutrition and Cancer:Cause and Prevention」(New York, American Cancer Society,1984),「American Cancer Society on Diet, Nutrition and Cancer」(1991)

アメリカ医学協会食事指針

直接がん患者を対象にしたものではないが、アメリカ医学協会は、退行性疾病を全体として減らす目的で食事指針を設けた。それによれば

  1. 肉を食べるのは一日に一回以内にし、肉の代わりに魚か家禽にする。
  2. 調理は油で揚げたり炒めたりするよりも、素焼きやオーブンで焼く方法にし、バター、ラード、マーガリンよりも多価不飽和脂肪酸の油にする。
  3. 塩、MSGなど塩化ナトリウムの含有が多い調味料を減らす。
  4. 食物繊維が多く含まれている完全穀物、緑の葉野菜、果物をもっと食べる。
  5. 卵を、一週間に四個以上食べない。
  6. デザートやおやつには、焼き菓子ではなく果物を選ぶ。

全国的に有力な医学団体であるアメリカ医学協会は、複数の特別な食事法を検討し以下のように述べている。

『マクロビオティック食事法では、食物はそれが育つ場所、食物の質感、色、構成物から、陰性と陽性(対立を表す東洋の概念に基づいている)の二つのグループに分類される。この食事法の概念として、進化の上で私たち人類からいって最も遠くにある食物が、食べるのに最適であるということだ。従って、穀物が食事の基本であり、肉よりも魚の方がよいことになる。無添加の新鮮な食物を食べるに越したことはないが、どんな食物でも実際に食べてはいけないものは存在しない。というのも、何か特定の食物を渇望するのは、体の純粋な欲求のためと考えられているからである。概して、マクロビオティック食は健康的な食事法である』

「The American Medical Association Family Medical Guide」(New York:Random House,1987)

合衆国政府食事指針

1990年、米国農務省と健康社会福祉省は「アメリカ国民の食事指針」を改訂し、国民に向け一日に六から十一品目の未精製の全粒パン、未精製シリアル、全粒パスタ、玄米を取るように呼びかけた(これらは、一日の食事量の40パーセントに相当する)。その次に多く取るべき食物は野菜料理で、一日に三から五品目にする。例えば濃い緑葉野菜と緑黄色野菜、乾燥豆と野菜豆、じゃがいもやコーンなどのデンプン質の野菜などが含まれる。

指針はまた、脂肪、飽和脂肪、コレルテロールをかなりの量減らすことを勧めている。動物性食品の摂取を減らすように(一日に二ないし三品目)求めたほか、『肉を食べる代わりに時々乾燥豆と野菜豆を食べる』ことも勧めている。乳製品は少量(一日に二ないし三品目)なら許されるとし、そのさいは特に低脂肪ヨーグルトか脱脂粉乳がよいとしている。それから、砂糖は控えめに使うように注意を促している。

「Diet and Health:Implications for Reducing Chronic Disease Risk」(Washington, DC:National Academy Press,1989)

国立調査評議会報告書「食事と健康」

1989年、国立調査評議会は749頁の報告書「食事と健康:慢性疾病の削減に関連して」を発表し、この中で国に対して、動物性食品の摂取量をかなりの量減らし、完全穀物、生鮮野菜、果物の摂取量を増やすよう要請した。

十九人の専門家から成る委員団は、疫学調査、臨床報告、実験結果などを広範に検討した結果、現代の食事は動脈硬化循環器系疾病、高血圧、胃がん、大腸がん、乳がん、肺がん、前立腺がん、虫歯、慢性肝臓病、肥満、非インスリン依存型糖尿病の危険性を高める作用を及ぼしていると結論した。これとは逆に植物性が主な食事は、冠状動脈心臓病、肺がん、大腸がん、食道がん、胃がん、糖尿病、憩室症、高血圧、胆石の危険性を低くすることが分かった。委員会は、炭水化物の摂取量を総摂取カロリーの55パーセント以上になるようにし、完全穀物、豆、パン、野菜、ある種の果物に含まれる複合炭水化物の摂取を特に勧めている。また、緑黄色野菜を頻繁に食べることも勧めている。『委員会が報告書の中で推奨している食事と同様の食事を習慣にしているいくつかの国々では、食事関連のがんの率が合衆国の約半分であることに言及した。すなはち、この提案は我が国のがんの危険性を相当減らすことに決定的に寄与できることを示している』

報告書では、代替的な食事について検証した。それによれば 『アメリカ国民は肉と砂糖を大量に摂取し、完全穀物よりも精製食品を多く食べ、生鮮食品よりも化学処理された加工食品を大量に食べている。我々とは対照的に世界の大分部の人々は、菜食かほぼ菜食に近い食事で生きている。それは、経済的、哲学的、宗教的、文化的な理由からであったり、環境に負担をかけないことが理由であったりする。事実、これまで人類はその歴史を通じてほとんど菜食に近い食事で生きてきたようである』

委員団が菜食者に関する調査報告を検証した結果、以下のことがらが明らかになった。 菜食者は『非菜食者に比べて蛋白質、合成される元のナイアシン、ビタミンB12の摂取量が少ないのにもかかわらず、この三つの成分の摂取量は平均でRDAの平均値よりも高かった。それ以外の栄養素の摂取量は、非菜食者の平均値と同じかそれより高かった。』それらは、カルシウム、ビタミンA,ビタミンC、マグネシウムなどである。また、生殖年齢(十九歳から三十五歳まで)にある菜食女性の鉄分摂取量は、非菜食女性のそれと同じで、カルシウム、マグネシウム、燐、ビタミンA、リボフラビン、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンB6、チアミンの摂取量は菜食者の方が多いことも判明した。

【推奨】

「Dietary Duidelines for Americans」by U.S.Department of Agriculture and U.S.Department of Health and Human Services(Washington, DC:U.S.Government Printing Office,1990)

国立がんセンターの中国研究

「壮大な疫学調査実験」と銘打たれた鳴り物入りの国際的な調査企画が、1990年代初頭に現代の食事の常識に挑んだ。国立がん研究所と中国栄養・食物研究所の合同調査は、中国各地の65の農村部で調査した結果、病気による死亡率を人々の食物と栄養素の平均摂取量に結びつけた。中国人の典型的な食事は、穀物と野菜の割合が多く、肉、家禽、卵、牛乳の割合が少ない。彼らの冠状動脈心臓病の死亡率は1パーセント以下で、西洋諸国ではありふれた乳がん、大腸がん、肺がん、そのほかのがんはまれである。調査団の主な発見は以下のとおりである。

コーネル大学の生化学者で調査団のアメリカ側の責任者であるT・コリン・キャンベル博士は、次のように述べている。『たいてい、経済発展をしつつある国が最初にすることは、大量の家畜を飼うことである。しかし我々のデータが示すところでは、これはあまり賢明な方策ではない。中国人もそれに気付き始めており、畜産を農業の根幹にすえることは自分たちの進むべき道でないことを理解しつつあるようだ』

「Diet, Lifestyle and Mortality in China」by Chen Junshi, T.Colin Campbell, Li Junyao, and Richard Peto(Ithaca, NY:Cornell University Press, 1990),「Huge Study of Diet Indicts Fat and Meat」 by Jane Brody(New York Times, May 8,1990)

世界保健機構指針

1991年、健康と保健を目的に設立した国連の機関、世界保健機構が任命した世界的な栄養学専門家から成る委員会が、報告書「食事と栄養と慢性疾病の予防」を発表した。この報告書の中で委員会は、発展途上国に対して、がん、心臓病、そのほかの退行性疾病を予防するのに最適な食事として現代的な食事を採り入れることを避けるように勧告した。実行委員会の総括より主な部分を、以下抜粋する。

「Diet, Nutrition and the Prevention of Chronic Diseases,a Report of the WHO Study group on Diet, Nutrition and Prevention of Noncommunicable Diseases」(Nutrition Reviews 49,1991:291-301)

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