牛乳便り~私の患者への伝言~ロバート・M・クレイジャン医学博士

原文:『The Milk Letter : A Message to my Patients』by Robert.M.Kradjian,MD
出典:『NOT MILK』

「牛乳」たったこの一言が、なんと心地よく響くことだろう。「温めた牛乳を一杯いかが?」いつだったかそんな誘いを最後にもらったとき、あなたはその人の心使いに心温まって感謝した。

食べ物全般についていえることだが、なかでも牛乳には、感情的かつ文化的な重要性がまとわりついている。乳は、私たちのまさに生まれて最初の食べ物であった。もしも幸運ならば、私たちは母乳を飲むことができた。母乳は、与え授けられる愛情のきずな、乳児が生き延びるための唯一の小道である。もしも母乳がなければ、牛乳か豆乳の人工乳が与えられた。あるいは、まれに山羊やラクダ、水牛の乳が与えられることもあった。

今や、私たちは乳飲国民である。ほとんど全員がそうである。幼児、子ども、未成年、成人そして高齢者までもが年間12ガロン、いや数百ガロンもの牛乳を飲む。のみならず、チーズ、バター、ヨーグルトといった大量の「乳製品」を摂取している。

それが何か問題なのですか? 繰り返しテレビ画面に現れる健康的で美しい人々の映像は、私たちに"牛乳は体によい"ことを確約し、安心させる。栄養士はこのように指導する。『牛乳を飲むように。そうしなかったら、どこからカルシウムを摂取するのですか?』学校給食には例外なく牛乳が含まれているし、ほとんどすべての病院の食事には牛乳が加えられる。それでもまだ十分でないとばかりに栄養士は、乳製品が“基礎的食品群”であることをずっといい続けてきた。業界の広報担当者は、牛乳やそのほかの基礎的な栄養素の必要性を表した色とりどりの図表を確実に学校でタダで利用できるようにした。そして牛乳は、"普通"になった。

あなたはこれを聞けば驚くかもしれないが、今日地球上に生きる人々の大半は牛乳を飲まない、あるいは利用しない。さらにいえば、彼らは牛乳を飲むことができない。なぜなら、彼らは牛乳を飲むと病気になるからである。

大人が乳を利用することに懐疑的な立場を採る人類栄養学者の卵たちがいる。以下は、「Utne Reade」1991年3・4月号からの引用である。

もしもあなたが本当に安全策を採りたいのならば、近年急増している食事から乳製品を一切除去することを実践しているアメリカ人の仲間入りをするとよいだろう。牛乳と五大栄養要群が頭にこびりついている人たちには過激に聞こえるけれども、これはきわめて実行可能な策である。そうなのだ。すべての哺乳類のなかで人だけが、といっても少数派であり、なかんずく主にコーカサス人が、乳児期をすぎても乳を飲み続ける。

だれが正しいのか? どうしてこのように混乱するか? 私たちは乳業界の広報担当者のいうことを信じてよいのか? あなたはそのほかの業界であれば、その広報担当者のいうことを信じられるのか? 以前の栄養士も現在の栄養士も、ただ単に何年も前に教わったことを繰り返しているのか? では、用心を喚起する新しい意見については?

私が思うに、信頼できる情報源は三つある。一つ目は、これが最も信頼できると思うが、自然界についての研究である。二つ目は、自らの種族の歴史を調べてみることである。そして最後は、乳に関してこれまでの科学研究の文献をくまなくあたってみることである。

まず、科学文献を見てみよう。1988年から1993年までに「医学」アーカイブズのなかに記録された乳に関する文献は、二千七百件以上ある。このなかで、主に乳に焦点を当てたものが千五百件ある。ただしこのなかには、科学的情報をまったく欠いたものもある。そこでもういちど見直して、そのうちの五百件については、動物に極端に偏っている、非科学的な調査である、結論が導ききれていないとして除外した。

私がどのように文献をまとめたのか? それらの文献群は、ほとんど背筋が凍るようなものだった。第一に、だれ一人として私たちが乳業界に信じ込まされているような認識、すなはち牛乳は優良食品で、副作用もなく、完全食品であると主張する研究者はいなかった。発表された文献が主に焦点を当てているのは、仙痛、腸の炎症、腸からの出血、貧血、乳幼児のアレルギー反応、それからサルモネラといった感染症であるようだった。もっと不吉なのは、牛白血病ウイルス感染症もしくはエイズウイルスに似た細菌性感染症、それから小児糖尿病への懸念である。血液や白血球(膿)による乳の汚染、のみならずさまざまな化学物質や殺虫剤の混入についても論じられていた。子どもに見られる症状は、中耳炎、扁桃腺炎、寝汗、喘息、腸からの出血、腹痛、小児糖尿病である。大人に見られる症状は、心臓病、関節炎、アレルギー、鼻炎により集中しているようであり、もっと深刻な例では白血病、リンパ腫、がんへの疑いもあった。

答えを見つけるには、自然界において何が起きているのか、野生の哺乳動物に何が起きているのか、"狩猟採集人"のように自然に近い状態で暮らしている人に何が起きているのかを考察すべきであろう。

旧石器時代の私たちの祖先は、このテーマとは別の重要かつ興味深い研究対象である。彼らについては間接的な物証ゆえに考察が限定されるが、研究に利用できる骨の遺物は驚くべきものだ。疑いようもなくそれら骨の遺物が明らかにしているのは、強靭さ、筋力(筋肉の差込の大きさが表す)、骨粗しょう症の完璧なる欠如である。もしもこうした旧石器人類の研究をあまり重要でないと思われるなら、考えてほしい。今日の私たちの遺伝子は、五万年前から十万年前の祖先とほぼそっくりそのままに人体の仕様を決定していることを。

乳とは何か?

乳は、母親が授乳するさいの分泌物であり、新生児のための短期間の栄養分である。それ以上でもなく、それ以下でもない。普遍的にいかなる哺乳動物の母親も、出産直後から短期間授乳を始める。そして"離乳する"時期が来ると、赤ちゃんはその動物に適した食べ物を食べるように導かれる。よく見られる例は、子犬の母親である。母犬はたった数週間子犬に乳を与え、それから子犬を拒絶して硬い食べ物を食べるように教える。授乳という行為は、哺乳動物の赤ちゃんにのみ自然が与えるものである。もちろん、自然の状態で生きている動物が離乳後に乳を飲み続けることはできない。

すべての乳は安全なのか?

では私たちはどこから乳を得るのか、という問題がある。私たちが牛乳に落ち着いたのは、牛の従順な性質、その大きさ、そして豊富な供給量ゆえである。ともかくもその選択は"普通"であって、自然なもので、私たちの文化風習に調和しているように見える。しかし本当にそれは自然なのだろうか? ほかの哺乳動物の乳を飲むことは賢明な選択だろうか?

ちょっと立ち止まって考えてみよう。かりに牛以外の哺乳動物の乳を飲むことができるとして、ではネズミの乳はどうだろう? まあ、たぶん犬の乳の方がましだろう。馬の乳や猫の乳もある。あなたはこうした考えを受け入れることができるだろうか? このことについてこれ以上掘り下げないが、これだけは指摘しておきたい。すなはち、母乳は乳児のためのものであり、母犬の乳は子犬のためのものであり、母牛の乳は子牛のためのものであり、母猫の乳は子猫のためのものである云々・・・ということである。明らかに、これが自然が意図していることである。あなた自身の頭で判断されるとよかろう。

乳は単に乳にあらず。あらゆる哺乳動物の乳は唯一無比で、特別にその種に適している。例えば牛乳は、母乳に比べて蛋白質がずっと豊富で二倍から三倍多い。ミネラル成分は、五倍から七倍多い。しかしながら牛乳は、母乳に比べて必須脂肪酸が著しく欠けている。母乳には必須脂肪酸、とりわけリノール脂肪酸が六倍から十倍多く含まれている。偶然にもスキムミルクにはリノール脂肪酸がまったく含まれていない。ということで、牛乳は人が飲むために作られていないのである。

食べ物は単に食べ物にあらず。乳は単に乳にあらず。乳は単に適切な量の食べ物ではなく、健康と成長のためにまさに最善の成分を厳格に含んだ適切な質的構成分なのである。生化学者と生理学者、またまれに医者も、食べ物に含まれる成分は、特定の動物をその種属固有の存在に発達させるために厳格に規定されたものであることを徐々に学びつつある。

私たちが自らの種族の特徴を備えた存在に発達するには、神経を高度に発達させ神経筋肉を繊細に制御させなくてはならないことは明らかにである。私たちは、牛のようにがっしりと発達した骨格や巨大な筋肉群を必要としない。人間の手に求められるものと、牛の蹄に求められるものとの違いを考えてみるとよい。新生児が特に要求するのは、脳と脊髄・脊椎神経を発達させるための正しい栄養分である。

母乳に知能を増進する作用があるのだろうか? 実際、そのように見える。1992年「ランセット」に驚くべき研究が発表された。英国の研究者らは幼児を二つのグル-プに分けた。一つ目のグループには適切な人工乳が与えられ、もう一つのグループには母乳が与えられた。人工乳、母乳どちらとも胃管を通じて与えられた。幼児はその後十年以上にわたって追跡調査された。知能テストを行うと、母乳で育てられた子どものIQが平均で10点高かったのである。 どうしてなのか? どうして、急成長と脳の発達のために正しく作られた構成物が効果的な作用をもたらさなかったのか?

1982年発刊の「全米臨床栄養ジャーナル」のなかで、ラルフ・ホールマンは乳児が静脈点滴だけで養われている最中に重い神経系疾患にかかった例を紹介した。与えられた点滴液は、必須脂肪酸の一つリノール脂肪酸だけが含まれていた。別のアルファリノール脂肪酸を点滴に加えたところ、神経系の病状は消え去った。

その五年後、ノルウェイで働いていたジャブ・モスタドとトレセンによって、長期間胃管を通じて栄養摂取している成人にまったく同じ病気が見られることが同誌上に発表された。1930年ミネソタ州のG・O・バール博士が、ラットの実験によってリノール脂肪酸欠乏が欠乏症状群を発症させることを突きとめた。なぜ、そういえるのか? 1960年代初頭、小児科医らは同じくリノール脂肪酸が欠けた人工乳を与えられた乳児が皮膚裂傷を発症するのを発見した。人工乳に脂肪酸を加えたら病気が治ったという調査報告があったが、必須脂肪酸がそれであり、牛乳は母乳に比べてこれが著しく欠けている。

しかし、少なくとも牛乳は純粋だ

うーん、そうかって? 五十年前、牛乳の生産量は年間平均一頭当たり二千ポンドであった。今日、生産量の優れた牛はなんと五万ポンド生産する。いったいどうやってこんなことが達成できたのか? 薬物、抗生物質、ホルモン、促成飼育、特殊化された繁殖。だからである。

哀れな牛への最新の猛攻撃は、牛成長ホルモンBGHである。この遺伝子組み換え薬物は、授乳生産を刺激する作用があるとされる。しかし、このホルモンの開発者であるモンサントによれば、ホルモンは乳や肉に影響しないという。生産者はそのほかにアップジョン社、エリ・リリィ社、アメリカン・サイアナミド社の三社である。明らかなことは、このホルモンの牛乳を摂取する人への影響に関して長期間にわたる調査研究がないことである。海外諸国では、安全性に疑念があるとしてBGHを禁止している。乳牛の体内に分子が入ることの問題点の一つは、分子が普通は乳のなかに放出されることである。あなたがどう感じるかは分からない。しかし、私は成長ホルモン摂取の人体実験をされたくはない。これに関連して、ホルモン投与によって乳房炎が50パーセントから70パーセントという高率で劇的に増えることも問題である。この病気のために、抗生物質投与が余儀なくされる。そしてその残留物質が乳のなかにでてくるのだ。大衆はこの生産物に安心できないと感じるのではないか。ある調査によれば43パーセントの人が、乳生産に使われる成長ホルモンが健康への脅威であると感じている。このような調査結果もあって、モンサントの消費者対策担当副部長は成分表示に反対している。また、成分を表示することにが"人為的な差別"につながるとしている。わが国は、乳の洪水の波にアップアップしている。私たちは、自ら消費する以上に乳を生産しているのだ。保管にかかる費用を削減して、納税者の負担を減らそうではないか。法律により農務省は、バター、チーズ、非脂肪乾燥乳の余剰分を国会が決めた支援価格で買い取らなければならない。1991年会計年度において、農務省は余剰分バターを757ドルで買い取った。1980年代、価格援助のために同省が支払った金額は年間平均十億ドルであった(「消費者レポート」1992年3月号)。

どんな哺乳動物の乳のなかにも、毒素が放出される。それは、抗生物質、殺虫剤、化学物質、ホルモンなどである。また、すべての牛乳に血が混入している。検査官はただ単に規定値を下回っているかどうかを見るにすぎない。農務省の規制では、1ミリリッター当たり百万から百五十万個の白血球(これはたった30分の1オンスではあるが)が乳に混入していていてもかまわない。こう聞けば、恐ろしくなるだろう。初耳だという人には申しわけないが、白血球を膿細胞と呼ぶこともある。要するに、乳は純粋なものなのか、それとも化学物質と細菌と微生物のカクテル飲料なのか、ということだ。結局のところ食品医薬品局は、私たちを守ってくれるのだろうか? 合衆国一般会計局によれば、農務省と国は消費者を乳のなかの残留薬物から守ることに失敗している。当局の検査は、乳牛に含まれる八十二種類の薬物のうちたった四種類しか対象としていない。

お察しのとおり、乳業団体の広報担当者は牛乳が完璧に安全であると主張する。ジェローム・コザック氏曰く、『牛乳は、我々の製品のなかで最も安全なものだとやはり思いますよ』

観察者がもっと偏見を少なくしていれば、十都市で採取された牛乳の検体からサルファ剤そのほかの抗生物質による汚染が見つかったという「大衆の関心における科学センター」と「ウォール・ストリート・ジャーナル」(1989年12月29日号)に掲載された報告を見つけただろう。ワシントンDCでの同様の調査では、20パーセントの汚染率であった(「栄養行動健康便り」1990年4月号)。

何が起きているのだろうか? FDAの調査では問題はなかった。実は、FDAは緩い基準を採用しているのだ。同じ基準で調べたら、FDAの同じデータから牛乳検体の51パーセントに薬物の痕跡が見つかった。

こうした明らかな矛盾に対して私たちの理解は十分でないので、この点に焦って考えてみよう。FDAが採用した検査方法は円盤分析法というもので、これは牛乳のなかにある三十かそこらの薬物のうちたった二個しか特定できない。なので、この検査方法では比較的高水準の値しか検出できないのだ。「チャームⅡテスト」という強力な検査方法を用いると、十億個につき薬物五断片が検出できる。

ここで汚い話題に触れなければならない。乳牛は、軟骨剤や抗生物質の投与を必要とする乳房付近の炎症を常に起こしているようである。フランスでは、乳牛にペニシリンを投与するとそのペニシリンが四から七搾乳器ごとに乳のなかにでるという報告がある。ネバタ大学のレノ氏は、乳房炎に感染した乳牛の乳"乳房炎乳"から検出された細胞について研究した。これは、細胞の断片を詳細に分析し、細胞培養液を使い、血球計算による解析を行い、多くの高度な技術を駆使して得られたものである。結論をお教えしよう。乳牛が乳房炎にかかっていれば、その乳のなかには膿がある。残念ながらそのような研究結果なのだ。がこうしたことも、「マクロファージが多くの球胞と貪食粒子を含んでいて」などという言い回しによって、すべて覆い隠されている。

もっとわるい

でも、少なくとも母乳は純粋なんじゃない? 残念だが、大量の研究結果が明らかにしているのは、一万四千人以上の女性の乳から農薬が検出されたということである。さらに、この農薬の汚染源は肉と、そう、お察しのとおり乳製品であるらしい。どうしてそうなのか? 農薬は脂肪に凝縮される。そしてそれがこれらの食べ物のなかに入るのである。興味深いのは、菜食の女性の乳は農薬汚染濃度が半分であった。

最近の報告では、乳がんの女性の乳房組織に農薬が濃縮していることが、線維のう胞性疾患の女性を調査したさいに発見された。標準的な文献のなかにも疾患の報告がある。以下、題名だけを挙げておく。

  1. 「母乳生育乳児における仙痛の原因としての牛乳」(ランセット2号、1978年)
  2. 「母乳生育乳児における食事中の蛋白質が誘因する仙痛」(小児科学ジャーナル101号、1982年)
  3. 「母乳から外来蛋白質を除去する問題」(免疫学ジャーナル、1930年)

そのほかにも数多くの文献がある。もっぱら母乳だけで育てられた乳児が、牛乳を飲むやいなやアレルギー反応を起こした症例は数多い。牛乳アレルギーの原因物質は母乳のなかに現れ、乳児の体内に移行する。

全米小児科アカデミーの栄養委員会が、乳児に全牛乳を摂取させることについて言及している(「小児科学」1983年)。彼らは、なぜ牛乳が1歳未満児に与えられるべきかについて納得のいく説明ができなかった。にもかかわらず、まだそれを推奨し続けている。小児科学僻地医療センター部所属のフランク・オスキー博士は推奨について触れながら、乳児の急性胃腸出血症、鉄欠乏症、断続的な腹痛、牛乳由来の感染症、汚染物質を取り上げて、次のように述べた。

なぜ推奨をやめないのか?今後はやめるのか? 全牛乳の潜在的な危険性については数多くの疑いがあり確定されていないなかでは、答えが明らかになるまで全牛乳を推奨しないのが慎重な態度であると思われる。人の栄養についてこのような不統一な実験は、もうやめるべきではないだろうか?

「小児科学ジャーナル」の同じ記事のなかで彼はさらに述べた。

全乳を1歳未満の乳児に飲ませるべきではないというのが私の主張である。なぜなら全乳は、鉄欠乏性貧血(牛乳には鉄分がとても少ないので、RDAの推奨値15ミリグラムを満たすには一日に31クォートという無体な量を飲まねばならない)、急性胃腸出血、さまざまな症状を伴う食べ物アレルギーと関連があるからである。

乳児期以降においても、幼児に無調整全牛乳を飲ませないことを私は勧める。なぜなら、全乳は乳糖不耐性症、動脈硬化症の始まり、そのほかの病気との関連が疑われるからである。

1992年の終わりに、歴史上最も著名な小児科医と目されるベンジャミン・スポック博士は、同様の考えを表明して国民に衝撃を与えた。博士は、生後2歳までは子どもに牛乳を与えるべきでないと主張した。以下、彼の言葉を引用する。

私から親御さんにお伝えしたいことは、赤ちゃんによっては牛乳を摂取することが確実に誤りであることです。赤ちゃんにとって最善のものは、母乳です。赤ちゃんのアレルギーと仙痛の発症を、普通の食事をしている女性の母乳と完全菜食の女性の母乳とでそれぞれ比較した研究は重要であるでしょう。しかしそのような研究をまだ見たことがありません。重要で、安上がりにできるのですがね。今後おそらく研究されることはないでしょう。学術的にも経済的にも、利益はありませんから。

そのほかの問題

細菌汚染の問題について述べよう。サルモネラ菌、大腸菌、ブドウ球菌による感染症は、乳が感染源である疑いがある。かつては結核が、人の主な病気であった。"自然"だからという理由で、生乳を飲んでいたその時代に戻りたいと主張する人もいる。だが、その考えは正気でない。UCLAでの研究では、1980年から83年までカリフォルニ州で発生したすべてのサルモネラ菌感染症うち三分の一は、感染源が生乳であることが突きとめられた。これはかつてのブルセラ症の復活につながりかねないし、白血病も懸念される(これについては後述する)。いまだに生乳が飲まれているイングランドとウェールズでは、牛乳が感染源の病気が流行したことがある。「アメリカ医学ジャーナル」(1984年)は、アメリカの複数州にまたがって発生した、低温殺菌牛乳のエンテロコリチカ菌が引き起こした感染症について報告した。この感染症は、安全警戒にもかかわらず発生したものである。

すべての親は、子どもが糖尿病になることを恐れる。「アメリカ臨床栄養ジャーナル」(1990年3月号)にカナダ人の研究が発表された。報告では、『・・・世界各国の研究データから、インスリン依存型糖尿病は未発酵の牛乳摂取ときわめて強力な相関関係がある。これとは逆に、生後3ヶ月まで母乳で育てられた乳児と糖尿病の相関関係はきわめて弱い』という。

フィンランドの別の研究では、糖尿病の子どもは牛乳に対して高い血清抗体値を示すことが発見された(「糖尿病リサーチ」1988年3月号)。以下、報告から引用する。

我々の推論は、まずインスリン依存型糖尿病の子どもにおいて牛乳摂取の型が変わったか、あるいは牛乳蛋白質に対する彼らの免疫反応が高まったか、あるいは牛乳蛋白質に対する彼らの腸壁浸透性が異常に高くなったか、いずれかである。

「英国医学ジャーナル」(1992年4月号)に、英国に移住したパキスタン人の子どもたちの間にインスリン依存型糖尿病の発症が際立っていることを示す興味をそそられる研究が掲載された。英国に住むパキスタン系の子どもは、本国に残った子どもよりもざっと十倍ほど発症率が高い。このように激しく増加した原因は何だろうか? 研究者によれば、『彼らの食事は英国に来ても変わっていない』。これが信じられるだろうか? パキスタンで使われている砂糖、牛乳、脂肪は、英国と同じものだと思うだろうか? 英国の食料品店は、パキスタンで売られている同じ商品を扱うと思うだろうか? 私は一瞬信じられなかった。だが、思いだしてほしい。ここで話題にしているのは成人の糖尿病ではない。Ⅱ型糖尿病は、研究者なら皆知っていることだが、遺伝的素因もさることながら食事との関連が非常に強い。この研究は、『すべての原因は遺伝子に』連中への手痛い一撃である。Ⅰ型糖尿病は常に遺伝子に起因すると考えられてきた。あるいはウイルスの可能性も疑われる。ではいったい、これはどうしたことか? 食事を病気の原因と考えることに相当抵抗があるのか、記事の著者は、英国の冷涼な気候がウイルスを変え、糖尿病を増加させる原因となったと結論づけた。別の二人の著者は、不承不承明白な事実を認めた。牛乳が、病気に関係したかもしれない。

文献群からの最新の報告、「ニューイングランド医学ジャーナル」(1990年7月30日号)に掲載された記事は、「ロサンジェルス・タイムズ」も取り上げた。これは、トロント市の小児病院からの報告とフィンランドの研究者からの報告である。フィンランドは、『世界で最も乳製品の消費量が多く、また世界で最も』インスリン依存型糖尿病が多い。この病気は、フィンランドでは人口千人当たり四十人の子どもがかかるのに対して、合衆国では人口千人当たり六人から八人がかかる。・・・研究者の推測では、生後1歳までに牛乳蛋白質に対して作られた抗体は、いわゆる自動免疫反応によって膵臓を攻撃し破壊する。そして遺伝子的に脆弱な人に糖尿病を発症させる。』『・・・新たに糖尿病と診断された百四十二人のフィンランド人の子どもは、健康な子どもたちと比べて牛乳蛋白質への抗体が最低でも八倍多かった。子どもたちは程度の範囲はさまざまだが自己免疫疾患であるという明確な証拠も得られた。』研究班は、今では対象を四百人の子どもに広げており、さらに三千人の子どもを対象に彼らが生後九ヶ月すぎるまで一切の乳製品を与えない実験を開始した。『研究には十年くらいかかります。しかし、なんとか明確な答えを得ることができるでしょう』と研究班の一人は答えた。授乳する母親らの食事に牛乳が使われないように、研究班に注意を喚起しておきたい。そうしないと、母乳のなかに放出された牛乳蛋白質によって実験結果が混乱するだろう。ところで、糖尿病協会の反応はどうだったか? それが、とても面白い。協会会長、F・ザビアー・パイサンヤー博士は、『この報告は、子どもたちが牛乳を飲むのをやめるべきだとか、糖尿病の親らが乳製品を控えるべきだということを示しているわけではない。これらの食品は、良質の蛋白質が豊富なのだから』とおっしゃる。やれやれ、病気の原因がその"良質の蛋白質"だというのに。乳業界が、過去に全米糖尿病協会を助けたなんて考えられるだろうか?

白血病?リンパ腫?これって、最もわるいものだ。気を確かに!

こんな話はしたくはないが、ウシ白血病ウイルスは合衆国の乳牛の五頭に三頭に存在する。これは、乳牛の約八割に相当する。不運にも牛乳が溜め置かれるとき、全生産量のうち非常に大きな割合が汚染される(90~95パーセント)。もちろん菌は、低温殺菌が正しく行われたならば死滅する。生乳ならばどうか? 生乳の検体を無作為に抽出した実験では、ウシ白血病ウイルスは滅菌乳の三分の二から復活した。生乳用の乳牛群については、通常の牛群よりも注意深く監視することを強く望む(「科学」1981年)。

これは世界的な問題だ。ドイツでこの問題について長々とした研究が行われ、感染牛の乳のなかに存在するウイルスを残りの牛乳から排除することは不可能であることが確認された。ドイツとスイスを含むいくつかのヨーロッパ諸国では、感染乳牛を群れから"淘汰する"ことが試みられた。間違いなくわが合衆国は、白血病乳牛撲滅を先導しているにちがいない。正しいか? いや間違いである。牛乳専門家で、乳業に関する理学士であり公衆衛生学修士でもあるバージル・ハルス医学博士によると、私たちは最悪のベネズエラを除いて、世界で最も遅れた国である。

前述したように、白血病ウイルスは低温殺菌によって不活発になる。しかしながら、チェルノブイリのような事故も起こりうる。1985年4月、シカゴ地区でそのような事故が起きた。それは、近代的な大規模牛乳加工工場において生乳と低温殺菌乳が"接触連結"するというものだった。獰猛なサルモネラ菌が爆発的に増殖し、一人が死亡、十五万人に被害が及んだと推定される。そこで私は、ぜひ乳業界の人たちにこう問うてみたい。『あなたがたはどうやって、この牛乳を飲んだ人々に生の未殺菌の猛々しく活性化したウシ白血病ウイルスを摂取する危険はないと保証できるのか』。さらに、白血病感染者"群"がこの地域で今後十年から三十年間に発症するかどうかもぜひ教えてほしい。"白血病感染者群"は、ほかの場所で色々と報告されている。そのうちの一つが、北部カリフォルニア州で発行されている「サンフランシスコ・クロニカル」(1990年6月号)で取り上げられた。

別の哺乳動物が、ウシ白血病ウイルスにさらされたらどうなるのか? これは公平な質問だ。そして、答えは安心できるものではない。実質的に、このウイルスにさらされた動物はすべて白血病を発症する。羊、山羊、ベンガル猿やチンパンジーといった霊長類もそうである。感染経路は(静脈・筋肉双方を含む)点滴からと、牛乳に混入した細胞の摂取による。人を攻撃しようと移動した形跡は、明らかにない。しかし、試験管内での実験ではウイルスは人の細胞に作用しうる。またウシ白血病に対して、人の体内で抗体が産生された証拠は存在する。と聞けば、私たちは不安になる。いったいどのようにしてウシ白血病ウイルスは、人へつながる経路を獲得し抗原となったのか? それは、小さな変性粒子なのか?

もしもウシ白血病ウイルスが人の白血病を引き起こすとしたら、ウシ白血病に感染した乳牛が存在する乳業の盛んな州では、人の白血病発症率が高いと考えられる。そうだろうか? 残念なことに、どうやらそうなのだ。アイオワ、ネブラスカ、サウスダコタ、ミネソタ、ウィスコンシンの各州は統計上、全国の平均値よりも白血病の率が高い。ロシアとスウェーデンでは、ウシ白血病ウイルスが制御されていない地域と人の白血病の増加は関連があるとされる。また、獣医は一般の人たちと比べて白血病にかかる率が高いといわれる。酪農家の間では、白血病が著しく増えている。最近の研究では、哺乳動物の新生仔が飲む乳に混入したリンパ細胞は、腸壁を通過して直に人の組織へと通じる経路を獲得する。

楽観的な記述はイリノイ大学からの報告だ。動物科学科のウバナ氏は、ある見解の重要性を示した。研究者らの関心は牛乳の経済学にあり、健康上の視点があまりないので、ウシ白血病ウイルスをもった乳牛の方が牛乳の生産量が大きいと述べた。しかし、白血病が長期間患う重篤なリンパ球増加症(白血球数値が増加する病気)を引き起こした場合、生産量は低下する。彼らは、『ウシ白血病ウイルス感染症の乳業界への経済的な影響を再評価する必要』があることを示唆した。これは、白血病は管理しさえすれば利益を得るのに好都合だとでもいいたいのだろうか?こうした商売事業への関心事の詳細は、「全米アカデミー科学」1989年2月号に掲載されている。私が強調したいこと、そして侮辱されたと感じるのは、大学の学科がこれを経済の問題としてとらえ、人の健康問題ととらえていないことである。だから決して農務省や大学が、私たちを助けてくれるなどと期待してはいけない。金が動き、政治的な圧力は大きすぎる。頼れるのは、自分自身である。

これは、いったいぜんたいどういうことなのか? ウイルスがほかの動物においても白血病を発症させる力をもっていることは知られている。ウイルスが人の白血病やリンパ腫、またそれと関連したがんを促進しうることが証明されているのだろうか? いくつかの記事がこの問題に取り組んでいる。

  1. 「アイオワ州におけるウシの頭数と人の白血病との疫学的関連について」(疫学ジャーナル112号、1980年)
  2. 「牛乳はしばし白血病誘発性ウイルスをもっている」(科学213号、1981年)
  3. 「ウシに気をつけろ」(ランセット2号、1974年)
  4. 「牛乳は健康を害する?」(小児科学、1985年)

ノルウェイで1422人が十一年と六ヶ月間追跡調査された。一日にコップ二杯以上の牛乳を飲む人は、リンパ組織に発症するがんが3.5倍多かった(「英国医学ジャーナル」1990年3月号)。

この問題に関してもっと深く掘り下げた記事は、ニューヨーク州クーパースタウンのアラン・S・カニングハムのものだ。「ランセット」(1976年11月27日号)に掲載された記事の題は、『リンパ腫と動物蛋白質の摂取』である。多くの人は、牛乳を液体の肉と考えている。カニングハム博士もこの考えに賛成である。博士は、十五カ国の牛肉と乳製品の一日当たりのグラム摂取量を1955年から56年の一年間追跡調査した。その結果、ニュージーランドと合衆国とカナダが最も摂取量が多かった。最も少なかったのは日本で、ユーゴスラビアとフランスがその後に続いた。最多と最少の違いは、とても明快だった。ニュージーランドの一日43.8グラムに対して、日本の一日1.5グラム。ほとんど三十倍の差があった。ついでながら、日本はこの三十六年間に牛肉と乳製品の摂取量が著しく伸び、国民の病気の型がそれを如実に示している。移民の調査に見られるような"遺伝的な防御"が働かないことは確かである。以前は、日本人のリンパ腫の伸びは合衆国に移住した日本人の間でしか見られなかった。

ここでちょっと面白い小話を。日本の下田にある玉泉寺には、ある記念館が建っている。この建物は、日本で初めて牛が食用に屠殺された場所を記している。記念館の周囲に巡らされた鎖は、合衆国海軍から贈られた物である。日本人がいったいどこから牛肉を食べることを思いついたとあなたは思うだろうか? いつかって? 1930年のことである。

カニングハムは、分析した十五カ国においてリンパ腫による死亡と牛肉ならびに乳製品摂取との間に強い因果関係があることを突きとめた。彼の記事から以下短く引用する。

多くの国で蛋白質摂取の平均値は、推奨値をはるかに超えていた。動物性蛋白質の過剰な摂取は、おそらくリンパ腫の因果関係を作る一つの共通素因であろう。その作用の仕方は、ある特定の蛋白質の摂取によって抗原断片が胃腸管粘膜を通じて吸収されるのである。

その結果、これらの断片が通過できるリンパ組織が慢性的に刺激される。『慢性的な免疫刺激作用は動物実験においてリンパ腫を引き起こし、人のリンパがんの原因になると考えられる。』胃腸管粘膜は、食べ物の抗原吸収を阻止する部分的な壁にすぎない。そして抗原が食べ物の蛋白質に阻まれてぐるぐる循環することはよくあることだ。これは特にリンパ刺激物になる。牛乳の摂取は、一般的なリンパ節腫大、肝脾腫、明白なアデノイド肥大の原因にもなりうる。控えめに見積もって百以上の異なった抗原が、すべての抗原の種類を作るように促す牛乳を普通に摂取することによって放たれる。このことは、なぜ低温殺菌され滅菌された菌がその後も抗原的な作用をも保ち病気を引き起こすのかを、説明することができるだろう。

まだある。ノルウェイでの大規模で有望な研究が、「英国がんジャーナル」(1990年3月号)に掲載された。(約一万六千人が十一年六ヶ月にわたって追跡調査された。)大部分のがんにおいては、腫瘍と牛乳の関連は認められない。しかしリンパ腫においては、両者の間に強力な関連が認められる。一日にコップ二杯以上牛乳を飲む人は、コップ一杯以下の人よりもリンパ腫になる可能性が3.4倍高かった。

私たちが覚えておかなければならない牛乳関連の病気が、あと二つある。それらの病気は牛乳の摂取によって広がるものでもなければ、人に感染するものでもない。まず一つ目は、ウシ海面性脳症・BSEで、もう一つはウシ免疫不全ウイルス・BIVである。最初の病気は、そう願いたいが英国に限定されている。これは、動物の脳に空洞ができる病気である。羊が長い間スクレイピーと呼ばれる病気に苦しめられてきたことは知られている。この病気は、羊の汚染部位とりわけ脳が英国の牛に与えられるようになってから始まったように見える。さあ、感覚を働かせてみよう。牛は肉食動物に見えるだろうか? 牛は肉を食べるべきか? この利益追求に駆られた行為は、裏目にでた。そしてウシ海面性脳症、別名狂牛病は、英国を一掃した。この病気にかかった哀れな動物は、文字通り痴呆になり百パーセント治らない。現在まで十万頭以上のイングランドの乳牛が、国内法にのっとって焼却処分された。毎月、四百から五百頭の乳牛に感染が確認されている。英国国民は不安を覚え、牛肉の消費量を25パーセント減らした。また約二千校の学校では、児童に牛肉をだすことをやめた。何人かの農民は、BSEとCJD(クロイツフェルトヤコブ病)の両方に似た致死の症候群を発症した。しかし英国の獣医協会によれば、BSEの人への感染は"遠く離れている"。

米国農務省は、英国での伝染病の原因は、レンダリング工場でスクレイピー感染羊の死体から取りだされた肉骨粉や動物蛋白質を牛に与えたことにあると認めている。農務省は、英国から生きた牛と動物園の反芻動物を輸入することを禁止し、国内にBSEは存在しないと主張している。しかしながら、問題はありそうだ。"へたれ牛"である。へたれ牛は、競売場や屠殺場に瀕死の状態で到着し、踏みつけられ傷つけられ、あるいはウイルス性・細菌性感染症がひどくて歩くことができない。だから、"へたれ"なのだ。彼らが自ら歩いて電気ショックにかかることができないときは、鎖で輸送箱まで引きずられ、レンダリング工場に輸送される。そこでもまだ死んでいなければ、殺される。彼らには"慈悲深い"死さえも、通常は許されない。そして最後は、動物用蛋白質そのほかの食品と化す。この蛋白質を食べたミンクは、BSE様の致命的な脳症になった。ミンクの集団栄巣はこうしてことごとく、とりわけウイスコンシン州で失われてしまった。伝染媒介物は、プリオンもしくは感染「へたれ牛」から伝染したであろう不活発なウイルスではないかと恐れられている。

「英国医学ジャーナル」は、奇妙な題の論説『どういうわけで今狂牛病?』(1992年4月11日号)のなかで、これまで感染が知られていなかった動物、例えば猫のBSEについて報告した。記事は、1986年から89年にかけてイングランドで、ウシ海面性脳症に汚染された農産物が人の食物連鎖のなかに入り込んだことを認めた。『この実験の結果はまだ分からない』潜伏期が三十年間にもなるので、私たちは待つしかないのだ。

免疫不全ウイルスは合衆国の牛にも見られる。そしてもっと懸念が大きい。ウイルスの構造は、人のAIDSウイルスの構造と非常に近い。この時点では、生のBIV蛋白質が人の血清に作用してHIV陽性反応を作るかどうかは明らかではない。ウイルスは、アメリカの牛群の間で「拡散している」といわれている。(農務省は、食肉と牛乳にこのレトロウイルスへの抗体が存在するかどうかを検査することを拒んでいる。)また、感染した動物を隔離する計画もまったくない。AIDSに感染した人と同様に、BIVに感染した牛は治らない。毎日私たちはウイルスに感染した牛の肉や乳製品を食べていているが、食品が安全であるという科学的な保証はまったくない。生牛肉を食べるのは、私にはとても危険に思える。特に1993年にシアトルで起きた大腸菌による死亡事故の後においては、なおさらである。「カナダ獣医研究ジャーナル」(1992年10月号)とロシアの文献に、恐ろしい症例が載った。それらは、牛免疫不全ウイルス蛋白質に対する抗体が、初めて人の血清から検出されたと報告した。この不吉な報告に加えて別のロシアの報告では、乳房の病気をもつ女性八十九人のうち五人にウシ白血病ウイルスに関連したウイルス蛋白質が存在する(「アクタ・ウイルス学」1990年2月号)。今のところ発症の因果関係は明らかではないが、確実にいえることは、こうした動物のウイルスは動物界のなかだけに"留まら"ないということである。

そのほかのがん-もっとわるくなる?

残念だが、その通りである。卵巣がん、なかんずく重い腫瘍は牛乳の摂取と関わりがあることが、ニューヨーク州バッファローのロズウェル公園記念館インスティテュートの研究員によって突きとめられた。一日にコップ一杯以上の全牛乳かそれ相当の乳製品を摂取する女性は、全牛乳を全く飲まない女性に比べて3.1倍その危険が高くなる。研究員らは、低脂肪牛乳製品は危険を減少させると感じている。この両者の関連は、数多くの研究によって繰り返し指摘されている。

またハーバード医学校による別の重要な研究では、主に1970年代から世界二十七ヶ国のデータを分析した。そしてまたもや、卵巣がんと一日当たりの牛乳摂取量との著しく強い関連性が明らかになった。研究者らは、牛乳に含まれる乳糖の成分が原因の一部分であり、この成分の消化は乳糖の消化力が持続することによって促進されるとの感触をもっている。強調されるところは少し違うが、結論は同じである。この研究は、「アメリカ疫学ジャーナル」(1989年11月号)に報告された。これらの研究は国内有数の機関が報告したもので、ロデール新聞とかプリベンション誌が報じたものではない。

肺がんでさえも、牛乳の摂取と関係があるのだろうか?これもまたロズウェル公園記念館インスティテュートが、「がん国際ジャーナル」(1989年4月15日号)のなかで五百六十九人の肺がん患者と同数の対照群の飲料習慣に関する調査を報告した。一日に三回以上牛乳を飲む人は、まったく飲まない人に比べて肺がんの危険が二倍高かった。

長い年月にわたって、私たちはアメリカ人やヨーロッパ人よりもずっと喫煙量が多い日本人男性の肺がん率を注視してきたが、彼らの肺がん率は低い。この地域で調査にあたった研究員によると、違いは総脂肪摂取量である。

牛乳と前立腺がんとの関連を調べた研究はそう多くないが、非常に興味深い研究がある。「がん」64号(1989年)に発表されたロズウェル公園記念館インスティテュートによるこの研究では、三百七十一人の前立腺がん患者の食事と比較できる対照の項目が調査された。

一日にコップ三杯以上の全牛乳を飲む男性は、まったく飲まない男性に比べて2.49倍危険が高い。動物性脂肪は前立腺がんの危険を高めるという仮説は、証拠の重要性によって支持されるように見える。前立腺がんは、今や合衆国の男性に最もありふれた病気であり、死因としては二番目に多い。

では、利点は何?

成人が牛乳を飲むことに、何か健康上の理由はあるだろうか?

ただ好きだからという理由以外に、何か一つでも理由を見つけることさえ困難である。しかしむりやり探せば、私見では以下の二つが最ももっともらしい理由であるだろう。一つは、牛乳はカルシウム源であるということ、そしてアミノ酸(蛋白質)の供給源であるということである。

まず初めに、カルシウムについて見てみよう。なぜ私たちは、これほどカルシウムについて心配するのか? いうまでもなく、それはカルシウムが強い骨を作り、私たちを骨粗しょう症から守ってくれることを期待するからである。それについては疑いない。牛乳にはカルシウムいっぱい詰め込まれている。しかし、それは人にとってよいカルシウム源なのだろうか?私はそうは思わない。それにはいくつか理由がある。過剰な量の乳製品は、実際カルシウムの吸収を妨げる。次に、牛乳に含まれる過剰な蛋白質が、骨粗しょう症の主な原因である。イングランドのH・ヘグステッド博士は、長年にわたって骨粗しょう症の地図上の分布を記録している。それによると、乳製品の摂取が最も多い国は常に骨粗しょう症が最も多い。博士は、牛乳が骨粗しょう症の原因であると感じている。その理由は、以下のとおりである。

数多くの研究が示しているのは、カルシウムの摂取量と特にカルシウム栄養剤の補給が骨粗しょう症の改善には何ら役立たないことである。そのような最も重要な記事は、乳業界の息がかからない「英国医学ジャーナル」に最近掲載された。合衆国の別の報告では、一日に8オンス換算でコップ三杯の牛乳を飲む閉経後の女性のカルシウム量が、実際に悪化した(「臨床栄養ジャーナル」1985年)。ホルモンの作用、性別、軸骨が耐えうる体重、そして特に蛋白質の摂取が、きわめて重要である。私たちの分析に役立つと思われる別の観察は、牛乳を飲まない食事をしている人たちの間に、食事によってカルシウムが欠乏したという記録が見当たらないことである。

骨粗しょう症の謎を解く鍵は、カルシウムにとらわれないことである。蛋白質を見なくてはいけない。対照的な二つの民族がいる。エスキモーは、ほかに例がないほど極めて多量の蛋白質を摂取して、総摂取カロリーの約25パーセントを占める。彼らはまたカルシウム摂取量も多く、一日に2500ミリグラム取っている。エスキモーの骨粗しょう症率は世界で最も高い部類に入る。それと対照的なのが、南アフリカのバンタス族である。彼らの蛋白質摂取量は、食事のなかで12パーセントを占め、その大部分が植物性蛋白質である。カルシウム摂取量は一日にたった200から350ミリグラムで、これは私たちの女性が摂取する量の約半分である。バンタス族の女性に実際骨粗しょう症はなく、子どもを六人以上生み授乳期間を延長して母乳で育てている。合衆国に移民したアフリカ人女性は、骨粗しょう症になるだろうか? そのとおり。ただし、コーカサス人やアジア人女性ほど多くはない。つまり、食事の影響を差し引いても遺伝的な違いがあるということだ。

「ではいったい私たちはどこからカルシウムを摂ればよいのか?」この明白な疑問への答えはこうだ。「乳牛がカルシウムを得ているのと同じところ、地面に生える緑草から」すなはち、主に緑の野菜からである。結局、象もサイも、離乳後は緑の植物を食べることによって巨大な骨格を発達させている。馬だってそうである。肉食動物は、緑の植物がなくても快調である。地球上のすべての哺乳動物は、遺伝子の仕様と調和した生き方をしていれば快調であるように見える。ただ人類だけが、豊かな生活をしながら骨粗しょう症を蔓延させている。

動物の生態が参考にならないというなら、この地球上には牛乳をまったく見たこともない何百億のもの人々がいる事実を考えてみよう。この人たちに骨粗しょう症が蔓延しないかって? 乳業界の人たちはそのようにほのめかすかもしれないが、事実はまったく正反対である。彼らの骨粗しょう症率は、乳製品がありふれた国々に見られるよりはるかに少ない。別の機会に論じたいことではあるが、骨粗しょう症を決定づける真に重要な要因は、過剰な蛋白質の総摂取量と長い骨を支える体重の欠如である。両者は、数十年かかって進行する。ホルモンの作用は二次的である。とはいえ、女性においてはその作用は小さくない。ともかく、牛乳は骨の健康を阻害するものである。

蛋白質信仰

子どもの頃、大人たちに「良質の蛋白質をしっかり摂りなさい」とわれたことを思いだそう。私が若い時分、蛋白質は"良質の"栄養素だった。そして、牛乳がそれにぴったりと当てはまっていた。

蛋白質に関していえば、牛乳は実に豊富な蛋白源である。"液体の肉"といわれていた。覚えているだろうか?しかしながら、牛乳は必ずしも私たちが必要とするものではない。困難さの元凶であるというのが、事実である。ほとんどすべてのアメリカ人は、蛋白質を摂りすぎている。

これを書くに当たっては、私が知りうるかぎり最も権威ある情報を参照している。それは、国立調査インスティテュート作成の「推奨される食事許容量」1992年1月発行第4版(初版は1989年)である。興味深いことに、この貴重な書籍の現編集長は、サンフランシスコにあるカリフォルニア大学のリチャード・ハーベル博士である。

最初に指摘したいことは、蛋白質の推奨値が版を重ねるにごとに大胆に下方修正されていることだ。現在の推奨値は、年齢19歳から51歳までの成人は一日当たり体重1kgにつき0.75gである。これは、体重60kgの成人では一日にたったの45gに相当する。WHOの推奨値では、成人に必要な蛋白質は一日当たり体重1kgにつき6gとされていた。(RDAの推奨値はすべて、"もっと安心したい"人を考慮してずっと控えめに計算している。)もしも必要なら、一日に28gから30g"超過"することができる。

さて一日に45gの蛋白質とは、少量である。これは1オンス半の量に相当する。それに、蛋白質は必ずしも動物性でなくてはならない、ということはない。植物性蛋白質はあらゆる実際的な目的にかなっている。コレステロールはまったくなく、全般に飽和脂肪酸も少ない。(植物性蛋白質は栄養失調を避けるために注意深く取られるべきである、という古風な説に惑わされないように。これは非現実的な考えである。)それゆえに、すべてのアメリカ人、カナダ人、英国人そしてヨーロッパ人は、蛋白質がいっぱい詰め込まれた国に住んでいることになる。これが数十年以上続けば、深刻な結果が待っている。それは、前述した骨粗しょう症、アテローム性動脈硬化症、腎臓障害などの病気である。ある特定の腫瘍、主に大腸と直腸にできる腫瘍は、過剰な肉の摂取に関係しているという明白な証拠もある。高名な腎臓生理学者のバリー・ブレナーは、過剰な蛋白質が腎臓病の危険を高めることを最初に指摘していた。脂肪とコレステロールの危険は、すべての人が知っている。最後に、母乳に含まれる蛋白質量が哺乳動物のなかで最も少ない(0.9パーセント)ことを知っておこう。

それですべて?

残念ながら、まだある。乳糖を覚えているだろうか?これは、乳に含まれる主たる炭水化物である。自然は、新生児に乳糖を代謝するための酵素を備えさせる。しかし、この能力はしばし四、五歳になるまでに失われる。

乳糖に関わる問題は何だろうか? 二糖が問題であるようだ。二糖は大きすぎるので、単糖すなはちガラクトースとグルコースに分解されることなしには血液中に吸収されない。そこで、酵素が必要になる。乳糖やそのほかの酵素の働きによって、ガラクトースはグルコースに分解される。

このことをもう少し考えてみよう。自然は私たちに数年間乳糖を代謝する能力を与え、それからその働きを閉じてしまう。母なる自然から、私たちは何を学ぶことができるだろうか?明らかに、すべての乳児は乳を飲まなければならない。必要のなくなった働きを自然に失ってしまえば、その傾向が数多くの成人に実質的に引き継がれるとは考えにくい。少なくとも、地球上の成人の半数は乳糖不耐性症である。比較的新しい時代に乳牛を駆り集めて人以外の哺乳動物から乳を「借りる」ようになってから、ラクターゼ(乳糖を分解する酵素)を保持することが生存に有利であることが証明された。しかし、なぜ牛乳を飲めることが有利だったのだろうか?いずれにせよ、世界の歴史上大部分の人はそうしてきた。さらに、肌の色が濃い民族がこの能力を失う一方で、肌の色の薄い民族がこの能力を保ったのはなぜなのか?

進化について学ぶ学生のなかには、白い肌はかなり新しい時代の変革、おそらく今から二万年前から三万年前のことであるという意見がある。これは明らかに、毛皮や衣服が利用できるようになった初期の人類が、比較的寒冷な日照の少ない北方に移動したことと関係がある。色の薄い肌は、色の濃い肌の人よりも容易に日光からビタミンDを作ることができる。しかしながら顔だけが日光にさらされるようになると、その地域の日照だけではビタミンDを作るのに不十分となった。もしもビタミンDの元となる食事や日光が不足するとしたら、牛乳のなかに含まれる豊富なカルシウムを利用できる能力は、牛乳を消化しようとする人間が生き延びるために有利な条件となる。これが、肌の色が薄い人たちが肌の色が黒い人たちに比べてはるかに乳糖に耐えられる性質をもっていることの論理的な説明であるように思う。

これをどのように理解すればよいだろうか?特定の人種、つまり黒人の成人の九割が乳糖不耐性症である。コーカサス人の乳糖不耐性症は、二割から四割である。東洋人の乳糖不耐性症は、両者の中間にある。下痢、ガス、仙痛は、そのような人たちが牛乳を飲んだときに表れる顕著な症状である。大部分のアメリカ先住民も、乳糖不耐性症である。乳業界は、乳糖不耐性症が五千万人ものアメリカ人の腸内で大暴れしていることを認めた。乳糖不耐性症業界が沸騰し、1992年には売り上げ高が一億千七百万ドルに上った(「タイム」1993年5月17日号)。

もしもあなたが乳糖不耐性症で、乳製品が欲しくてならないとしたらどうだろう?すべてをあきらめなくてはいけないのか? いや、そんなことはまったくない。乳糖は細菌によって消化されるようだから、乳糖不耐性症であってもチーズを楽しむことができる。ヨーグルトもこの点で同様である。最後に、こんなことは想像だにしなかったが、遺伝子学者が牛乳の構成を変えようと遺伝子組み換えをもくろんでいる。

牛乳への非難の一つに、食物繊維がまったくなく、牛乳を飲む習慣が便秘や便通の不調を作るというものがある。

貧血と乳児の不可解な腸出血の関連は、小児科医にはよく知られている。これは鉄欠乏と腸内粘膜に刺激的な牛乳の性質による。小児科学会の文献には、刺激された腸裏層、出血、浸透性の増加をはじめ、仙痛、下痢、牛乳に過敏な乳児の嘔吐などの報告が多数ある。貧血は、血液と鉄分の喪失と、元々牛乳に含まれる鉄分が少ないことが重なっている。牛乳はまた子どものアレルギーの主な原因である。

低脂肪

追加の話題、"低脂肪"乳について。よく聞かれる真剣な質問は、「では、低脂肪乳は大丈夫ですか?だめですか?」

この質問への答えは、低脂肪乳は低脂肪ではないということである。"低脂肪"という言葉は、大衆を欺くための業界用語である。低脂肪乳にはカロリー換算で24~33パーセントの脂肪が含まれる。2パーセントという数字は誤解を招きやすい。2パーセントは重量比である。彼らは、牛乳は重量比で87パーセントが水分であるということを知らせない。

「それじゃあ、あなたは非脂肪牛乳に賛成するんですね?」と、よくいわれる(「シリアルに何をかけるのですか?」という声もしょっちゅう聞く)。確かに、脂肪はほとんどもしくはまったく、ない。が、蛋白質と乳糖が比較的過剰になる。これ以上いらないものは、単糖すなはちガラクトースとグルコースから成る乳糖である。そのうえ何百万人ものアメリカ人は、乳糖不耐性症である。蛋白質に関していえば、前述したように私たちは自らが必要とする量よりはるかに多い蛋白質を日常的に摂取している社会に生きている。これが体、とりわけ腎臓に負担となる。また、骨粗しょう症の顕著な原因にもなる。乾燥シリアルに話を戻すと、健康的な代替品としては豆乳、米乳、アーモンド乳がよいだろう。もしもまだカルシウム量が心配ならば、牛乳と同量のカルシウムを含有する「ウエストソイ」という人工調整乳がある。

まとめ

思うに、牛乳を飲むあるいは利用するただ一つの妥当な理由は、ただそれが欲しいから、好きだから、文化の一部だから、その味と舌触りに慣れているから、飲んだときの喉越し感が好きだから、両親が私たちにとって最善と思い、初期の子育てのなかでしつけてくれたまさにそのことだから、といったことである。両親は私たちに、牛乳を好きになるように教えた。でも、たぶん最も納得いく理由は、アイスクリームだ。アイスクリームのためなら"死ねる"という人もいる。

まさにそのために死んだ患者を知っている。彼には悪癖はなかった。喫煙も飲酒もしなかったし、肉も食べなかった。彼の食生活と生活習慣は、ほとんど完璧なまでに健康的なものだった。だが一つ、彼には情熱があった。お分かりか? 彼は豪華なアイスクリームが大好物だった。一パイントのこってりした豪華なアイスクリームは、多忙な一日の疲れを癒す配給品であっただろう。多くの場合、彼はたっぷり一クォート分食べた。そう、クッキーとかそのほかの焼き菓子といっしょに。なんだかんだいって、おいしいアイスクリームはそれらによく合った。彼が破滅的な心臓発作にみまわれて麻痺が残りみじめで無力な状態になったときにも、いくつかの"中年の症状"はあるかもしれないが、健康的に見えた。それから彼はまた発作を起こし、数年後に、一度も退院することなくリハビリをすることもなく亡くなった。何歳だったかって? そうは思えないが、五十歳代だったそうだ。

だから、健康のためには牛乳を飲んではいけない。科学的な裏づけの重要性から、牛乳は体によくないことを私は確信している。食事に牛乳を含めれば、食事の栄養的な価値と安全性を低下させるだけである。

地球上の大部分の人々は、牛乳がなくてもきわめて健康的に生きている。あなたも、それができる。

変えることは難しいかもしれない。私たちは子どもの時分から牛乳は"自然が生産する最も完全なる食品"であると教え込まれてきた。だが、その信条を変えても安全であるし、健康を改善し、なおかつ費用がかからないことを私が請合おう。それで、何か失うものがあるかな?

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