ニューヨーク市の学校給食から牛乳が消えるデヴィッド・M・ハーゼンホーン

原文:『In New York Schools, Whole Milk is Cast from the Menu』 by David M.Herszenhorn
出典:『ニューヨーク・タイムズ』2006年2月2日号

長年、赤と白の箱に入った牛乳は、黄色い第2鉛筆と同じく学校を意味してきた。1946年ヘンリー・S・トルーマン大統領が学校給食法に署名して以来、半パイント分の牛乳は、法律で義務づけられた主要食品五つのうちの一つであった。

しかし、今日児童は太っており、肥満にならないようにしなければならず、少なくとも数多くの児童が糖尿病やそのほかの病気を抱えている。全米で最も学区が大きいニューヨーク市は、牛乳(全乳)を学校給食から外すことを決めた。

一日に半パイント分の牛乳を五十万本供給する現行体制下では決して小さいとはいえないこの変更は、既にブロンクス地区とマンハッタンにおいて実施され、学校給食から牛乳を外す政策は進行中である。この動きに対して強く反対活動を行ってきた乳業界は、激しい憤りを隠さない。ニューヨーク市のそのほかの自治区もブロンクスやマンハッタンに追随する予定である。市の発表では、今月の終わりには牛乳(全乳)は永久に学校給食から消えてなくなる。

1%乳と脱脂乳は、これまであまり人気がなかったものだが、残されることになった。それからチョコレート脱脂乳も、多くの若者の嗜好にとっては朗報だが、選択品目として大部分の学校で残されることになった。もっとも、一部の医師と栄養士はこの品目に対して懸念を表明している。地元の活動家らが学校給食から牛乳を排除するよう求める活動を先導してきたブロンクス地区では、いくつかの学校がチョコレート乳を週に一回だけだすように求めている。

学校給食の料理長を含む市の教育担当者が語ったところによれば、牛乳を廃止する決定は、市立小学校に通う百十万人近い学童の栄養状態を改善するために払われてきた努力の一部であるという。

『我々は白パンを排除しました。我々の学校ではもはや白パンを見ることはありません。全て、全粒粉のパン、全粒粉のソーセージパン、全粒粉のハンバーガーです』、そう語るのは、マーチン・オストライヒャー氏。彼は、学校支援サービスの政務官で、学校給食の監督責任者でもある。『我々は数多くの献立品目を再編成しました。それらは全て、児童の肥満指数を削減することを考慮しています』

ニューヨーク市は、牛乳を廃止し別の品目に変更した最初の地区ではない。全国で二番目に大きな学区を持つロサンジェルス市は、2000年に同様の変更を行った。それからイリノイ州、ニュージャージ州、コネチカット州などを含むいくつかの州でも、牛乳を禁止もしくは制限する規則が採用もしくは検討中である。

しかし、牛乳とともに香味低脂肪乳も禁止し、代替品としてチョコレート脱脂乳だけを残したニューヨーク市の決定は、全国的に最も厳しい政策の一つである。

学校給食は、国内のそのほかのどの給食サービスよりも多く牛乳を購買し、昨年は3億4千万ドルもの国庫還付金を受け取っているが、その学校給食の献立で牛乳の品目が変更されることは、乳業界と同様学区にとっても大きな危険をはらんでいる。

変更を実施に移す前に、市の教育担当者らは、国の学校給食制度の下で還付金が交付されなくならないことを確かめるために、関連法律を何度も調べたという。(大豆に変えていたら、還付金は交付されなかっただろう)。

牛乳消費量に少なからぬ関心を持つアメリカ乳業協会は、加糖低脂肪乳の供給を増やすように市に働きかけた。加糖低脂肪乳は、チョコレートのほかにバニラとストロベリーがある。学校は、結果的には彼らの要請を退けたが、チョコレート脱脂乳だけは残すことにした。

乳業界は、児童が脱脂乳と1%乳をおいしくないと嫌って飲まないために牛乳消費量が減ることを警告している。また、牛乳が段階的に廃止されるニューヨーク市内の学校における牛乳消費量の調査に着手したが、市当局によって学校に近づく道が断たれ調査は中止に追い込まれたと主張している。

『業界は明らかに心配しています』と語るのは、乳業経営会社の学校給食販売促進部・副所長、リック・ネイチ氏である。この会社は、酪農家を代表するアメリカ乳業協会の親会社である。ネイチ氏は、『これがどこぞの小さな地区だったら、これほど注目されないでしょう』と述べた。

地区の健康担当者は、脂肪とカロリー摂取量を減らす目的で牛乳を排除することによって、児童が牛乳を全く飲まなくなり、かえってカルシウム摂取量を減らすことになりはしないかという点について議論した。国は最近、食事目標の牛乳摂取量を一日三杯へ引き上げた。

しかしながら、非常に多くの子どもたちが太っていて、健康上の危機に直面しているので、多くの医療専門家や栄養学者、学校保健師らは、小さな一歩一歩の積み重ねによって努力が実るのだと説明している。脱脂乳の一容器あたりの脂肪含有量は、牛乳よりも8グラム少なく、54カロリー少ない。チョコレート脱脂乳の脂肪含有量も牛乳より8グラム少なく、20カロリー少ないだけである。1%乳の脂肪含有量は、5.5グラム少なく、28カロリー少ない。

『学校は肥満児童であふれています』と語るのは、ジャクリーン・ケルダーハウス。彼女は、ブロンクス地区の市立第28小学校内にある診療所に看護士として勤務している。この診療所は、モンテフィオレ医療センターの学校保健事業により運営されている。『我々は、インスリン値を測っています。コレステロール値の高い児童の名簿も作成しています。その子の外見だけで、肥満かどうかはいえないのです』と語る。

市にとってもう一つの問題は、国庫還付金である。学校関係者らが心配しているのは、給食の献立の中で唯一の飲み物である牛乳を児童があまり飲まなくなり、給食を食べない児童もでてきたら、還付金が受けられないのではないか、ということである。還付金は、児童が承認された品目から少なくとも三つ取ることを前提としている。牛乳は、承認された品目の一つなのだ。

市は、既に牛乳供給を停止した学校を監視し、牛乳消費量が約5%減ったと発表した。チョコレート乳の供給が止まった学校では15%。しかし献立品目数自体は減っていないという。

栄養状態を改善する昨年の取り組みの中で、学校側はチョコレート、バニラ、ストロベリー三種の脱脂乳を求めたが、市側はチョコレート脱脂乳だけを残すことに決めたのだ。ジョーズ・ビーズ君・十歳は、市立第28小学校に通う四年生。この学校は、毎週金曜日にだけチョコレート乳をだしている。『僕は新しい低脂肪乳が好きだけど、同級生の中には嫌いな子もいる』と話すビーズ君。『皆いうよ。ああ、なんてこった!チョコレ-ト乳とストロベリー乳がなくなっちゃった、って。不満がで始めているよ』

市の教育担当者は、市として牛乳廃止の計画はかねてより立てていたと述べているが、このたびの決定は、ブロンクス地区においてモンテフィオレ診療所と地元の二つの市民団体、ブロンクス・ヘルス・リサーチとブロンクス・ヘルシー・ハーツが始めた草の根の活動の直後になされたものである。

ブロンクス地区の学校と協働している市民団体は、児童に、より健康的な牛乳について教える教育用具一式を開発してきた。モンテフィオレ診療所の学校健康プログラムを運営している内科医師、デヴィッド・アペル氏は、『問題は、我々が一生涯持続する健康的な習慣を獲得できるかどうか、ということなのです』と話す。

一方、乳業界は抵抗した。ネイチ氏によれば、業界関係者と栄養専門家らは市の担当者と会い、“考え直す”よう陳情した。業界は、市があまりにも急いで実施したことを懸念しているという。何故なら、牛乳の市場は、とりわけニューヨーク市においては37%と、全国の30%に比べて大きいからなのである。

『我が国の牛乳消費量は、この二十年間減少しています。清涼飲料との競争のためです。一方、肥満は増え続けています。牛乳の下降曲線からどうして肥満がこの製品のせいだと言えるのですか?』とネイチ氏は主張する。

オハイオ州コロンバスにある小児病院の小児科教授で、学校保健に関する小児科評議会のアメリカ学術会議の委員でもあるボブ・ムレイ氏は、香味低脂肪乳は牛乳を全く飲まないよりもまだましだ、と話す。

市立第28小学校では昨日、児童が新しい牛乳の品目にすこぶる満足していることが分かった。中でも、チョコレート乳に人気が集中しているのは明らかだ。この火曜日の学校カフェテリア食堂の記録を拾ってみると、全部で942箱の牛乳製品が消費され、そのうち684箱が低脂肪乳、268箱が脱脂乳であった。しかし、同時に数十箱が残された。これをチョコレ-ト乳が配られた先週の金曜日と比較すると、全部で1006箱が消費され、チョコレ-ト乳は420箱全部が消費された。

学校給食管理者クリスキャロル・タッカー氏は、『子どもたちは全部取ってしまいました。彼らはチョコレートが大好きですから』と語った。

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