じゃあ、どうすればいい?

原書:フランク・オスキー著『Don't Drink Your Milk』第11章『What to Do Instead?』

中身の詰まった一組の乳房は、乳児を養う液体成分を作り上げるその業ゆえに、最高に博識な学者の二つの脳半球にも勝る。オリバー・ウェンストン・ホームズ

最高裁判所判事ホームズ氏のこの発言は、今世紀の節目にさいにて厳粛な響きがある。しかし、母乳がでない母親、あるいは母乳育児をしたくない女性はどうすばよいのだろうか?また、年長の子どもや大人たちは?彼らが牛乳を飲まないとすれば、何を飲めばよいのか?この章では、だれもが簡単に利用できる牛乳の代用品についてお話ししよう。

乳児については全く問題ない。市販の粉ミルクが、満1歳までの乳児にとって適切な栄養分を与えてくれる。ただ既に述べたように、粉ミルクは母乳のように感染症を予防する力はない。

現在国内で販売されている乳児用人工乳の製品は、シラミック、エンファミル、SMAの3商品が主流である。いずれも牛乳を原料にして注意深く調整されている。それぞれの製造元は、製品の含有成分である脂肪、蛋白質、炭水化物、ミネラル分の構成がなるべく母乳と同じになるように努めている。これらの3商品は、乳児に適切な栄養が含まれていることが保証されている。

またこれらの3商品には、ビタミンと鉄が添加されていて、満1歳までの乳児に必要な栄養素を満たすように作られている。母乳をもらえない乳児には、この中のどれかを与えるとよいだろう。もう一度いおう。乳児に牛乳を与えてはいけない。乳児期のいついかなる時でも。

乳児用人工乳に含まれる蛋白質は加工過程で変性するが、牛乳の蛋白質であることに変わりはない。牛乳に元々含まれている蛋白質が、アレルギーや大腸の症状などを引き起こす点で有害であるのに比べて、人工乳の蛋白質の方がはるかに安全なようである。とはいえ、子どもの中には市販の人工乳で蛋白質アレルギー反応がでる子もいる。そのような場合、大豆が原料の人工乳に変えるとよいだろう。大豆原料の人工乳は一般に市販されており、それを飲ませれば問題なく赤ん坊を育てることができる。しかし極端にアレルギー体質の赤ん坊は、大豆乳にも反応することがあるので、そのさいは蛋白質分解物質であるアミノ酸だけから作られた人工乳を与えるとよいだろう。この種の組成分だけから成る人工乳も、それ以外の人工乳を受け付けない乳児に適切な栄養分を与えてくれる。

1歳未満の乳児に脱脂粉乳を与えるのは適切でないと、大部分の小児科医は考えている。脱脂粉乳とは、牛乳から脂肪分を取り去ったものである。通常、乳児は摂取する総カロリーのうち35から55パーセントを脂肪分から得ている。ということは、脂肪分のない脱脂粉乳からカロリーを得ようとすれば、大部分を蛋白質と炭水化物に頼らねばならない。そんな早い時期に脂肪を除去してしまったら後々ずっとその影響に苦しむことになりはしないかと、栄養学者らは懸念している。

さらに、脱脂粉乳を主な栄養源にしている乳児は大量のミネラル分を摂取していることも、懸念される点である。この栄養素のバランスの悪さもまた、体に有害なのではあるいまいか。乳児の栄養の専門家として世界的に著名なサミュエル・フォモン博士は、次のように勧めている。『乳児の体重をあまり増やしたくない場合、摂取カロリーを大幅に減らさず、ほどほどにした方がよいでしょう。カロリー源の割合は、蛋白質からが7から16パーセント、脂肪分からが35から55パーセントになるようにします。カロリーを主に母乳もしくは牛乳(あるいは人工乳)から得ていれば、楽にこの条件を満たします。しかし、脱脂粉乳からではこの条件は満たせません』

乳児に固形食を与えるのは、だいたい生後5ヶ月から6ヶ月から徐々に始めてよい。通常、穀物と果物がいちばん最初の食べ物である。6ヶ月から9ヶ月の間に野菜と肉を与え始めることもできる。卵は最後まで取っておき、9ヶ月から1歳になるまでは食事に加えなくともよい。そして満1歳になるまでには、必要な栄養素の大部分を固形物からにしてよい。その時期には乳はもう必要ない。ジュースは、炭水化物として水分とカロリーの補給源になるものだから、それよりも早い時期から始められる。

満1歳をすぎたら、人工乳の量を減らしてゆき、生後18ヶ月になるまでは、いかなる種類の乳からも完全に離乳しなければならない。

では、もっと年齢の大きな子どもや大人はどうすればよいのだろう?彼らは今何を飲んでいるのだろうか?1975年の平均的アメリカ人の飲料の摂取量は、このようになっていた。

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[アメリカ人の年間平均飲料摂取量]

ざっとこの数字を見たところでは、平均的アメリカ人は水を週にたった3.8リットルしか飲んでいない。水をもっと努めて飲むようにすべきではないだろうか。果物ジュースもおいしいし体にもよいのだから、もっと取ってよいだろう。

もしあなたが、まだ牛乳やその類似製品をやめられないなら、何を飲めばよいのだろうか?

これぞ諸悪の根源の標準牛乳製品は、A級低温殺菌乳と表示されている。合衆国政府が定めたA級低温殺菌乳と牛乳製品の規格では、A級低温殺菌乳は乳脂肪分3.25パーセント以下、非脂肪固形成分8.25パーセント以下でなければならない。非脂肪固形成分とは、蛋白質と炭水化物のことである。A級の表示がある製品を他州で販売するさいには、この規格に従わなければならない。同じ州内で製造・販売される牛乳製品については、その州が独自に定めた規格がある。

A級牛乳には、大人にとって好ましくない問題の脂肪分が含まれている。またA級牛乳には、世界中の大部分の人々に不愉快な症状を引き起こす原因物質である乳糖が含まれている。さらにA級牛乳には、多くの乳児にアレルギー反応を引き起こす無調整の蛋白質も含まれている。

もしもあなたが成人で、乳糖に耐えられる人ならば、牛乳蛋白質によってアレルギー症状がでる心配はない。ただ、脂肪分の摂取量を控えたいので、もし飲むのなら脱脂粉乳が適しているだろう。脱脂乳もしくは無脂肪乳に含まれる脂肪分は、0.5パーセント以下である。この種の牛乳は、脂肪とともにビタミンAも取り除かれている。それゆえ、ビタミンAを強化した製品もいくつかあるので、表示で確かめるようにしよう。

粉末乳は、全粉末乳あるいは脱脂粉乳として売られている。どちらも水分がほとんど取り除かれている。脱脂粉乳の方は、製造過程で、脂肪分がほとんど取り除かれた後乾燥される。粉末乳はいずれにせよ、原料の牛乳に比べれば値段はずっと安い。牛乳の3分の1くらいの値段だろうか。栄養的には、粉末乳は液体の牛乳と同じ利点があるが、それゆえそれがもしも病気の原因になった時は、症状も同じである。

粉末乳を水で戻した時の味は、あまり芳しくない。この問題は、粉末乳を水で溶いた後に冷蔵庫で24時間寝かせることで解決する。味のことは少々我慢しても、粉末乳の値段の安さが魅力の人もいるだろう。

濃縮牛乳とは、生乳から水分を60パーセント取り除いたものである。原料は、牛乳が脱脂乳かのどちらかである。濃縮牛乳に水を加えれば、牛乳に戻すことができる。濃縮牛乳は生の液体牛乳に比べて値段が安い。濃縮過程では、アレルギーの子どもが蛋白質になるべく反応しないように、蛋白質が改良されていることがよくある。しかし、色々な体調不良の原因になる脂肪分と糖分はまだ含まれている。

甘味練乳というのは、甘味料が添加された濃縮牛乳のことである。甘味練乳には甘味が過剰につけられているので、日常飲むものではなく一般にケーキやお菓子作りに用いられる。

充填乳というものもある。これは、牛乳もしくはクリームにバター以外の油脂分が添加されたものである。典型的な充填乳は、脱脂乳か乾燥無脂肪乳に、より安全性が高い植物油が添加されている。人工着色料と香料が添加されることもある。充填乳は、濃縮牛乳に見た目、香り、味が似ている。牛乳と比べると値段が安く、コレステロールの含有量が少ない。

充填乳には面白い歴史がある。それは、連邦政府と癒着したこの国の牛乳業界がいかに力をもっていたかを物語っている。今から50年前、充填乳の各州間取引を禁ずる法案が、米国議会で可決された。後に充填乳法として知られるこの法律に反対し、一人気焔を吐いた酪農家がいた。イリノイ州リッチフィールドのチャールズ・ハウザーである。充填乳製造業者であったハウザーは、法廷闘争に自分の財産を惜しみなく注ぎ込んだ。彼は、フランクリン・ルーズベルトの恩赦が下るまでの一週間、刑務所にさえ入ったのである。ハウザーは、充填乳は安全な完全食品であると確信していた。

この“非摘出”の牛乳製品は、乳製品業界にとって脅威だった。なぜなら、もしも搾っただけの完全な牛乳を勝手にいじって中身を変えてよいということになったら、人々は牛乳が『完全で自然であること』とはどういうことか、疑問をもち始めるにちがいなかったからである。ゆえに、議会がやろうとしたのは、充填乳を州外で販売することを禁止する法律を作って、ハウザーのような酪農家や彼の会社ミルノット社を経済的に不利な立場に追いやることだった。

1973年、連邦裁判所は、充填乳法は憲法違反だとする判決を下した。そして食品医薬局は、充填乳は安全で完全であり、適切な食べ物であると宣言した。それまでに、脂肪分を除いた乳製品が体によいことが科学者によって主張されていたからである。そうしてチャールズ・ハウザーは名誉を回復したが、既に50年もの歳月が経過していた。現在では、牛乳を調整することは、法的にも科学的にも正当なものと認められている。

最近国内で支持を集めている別の調整型乳製品に、ヨーグルトがある。ヨーグルトは、中東では伝統的に食べられてきた。原料は脱脂乳もしくは全乳であるが、脱脂乳から作られるものの方がよいと思う。作り方は、脱脂乳に培養菌を混ぜ、発酵するのを待つのである。この発酵の過程で、乳成分である乳糖は単糖類のブドウ糖とガラクトースに分解される。ヨーグルト菌は、人の消化管で酵素がすることをやってくれるのである。そうしてできたヨーグルトとバターミルクの中には乳糖はもうあまり存在しないので、『乳糖不耐性症』の人が食べても後に不愉快な症状で悩まされることがない。

牛乳から脂肪分除くことは、牛乳のもう一つの欠点をなくしてくれる。ヨーグルトはアレルギー症状の原因になりにくいが、これは菌が発酵し熟成する過程で蛋白質が変わるためではないか、と考えられている。従って、ヨーグルトは“完全食品”に近いのかもしれない、牛乳とは違って。これ、おばあさんがいっていたことと同じではないだろうか。

乳ではない乳に似せた疑似製品も売られている。それらは乳製品に似ているが、乳に含まれる成分を全く含んでいない。典型的な模擬乳の原料は、カゼイン・ナトリウム(蛋白質の原料)、植物油、コーンシロップもしくはデキストロース、人工着色料と香料、そして乳化剤である。コーヒーに浮かせて味を軽くしたり色を白くするコーヒー用クリームは、模擬乳の一種である。カゼイン・ナトリウムは、法律的に非乳成分に分類されている。そのわけは、カゼイン・ナトリウムが蛋白質として変性する過程で、その原料である牛乳に含まれるカゼイン・カルシウムの擬態をしなくなるからである。

ニューヨーク州バッファローに本拠を置くリッチ商会の創始者、ロバート・E・リッチ卿は、模擬クリーム製造の草分けである。彼の願いは、『いつの日か動物園に乳牛を見に行くこと』である。リッチは、いわゆる模倣品は模倣品どころか実は本物以上の優れものである、と確信している。模倣クリームは、大豆などの豆、油、それからさまざまな化学物質の添加物を原料に作られる。製品は冷凍状態で販売され、凝固も分離もせず、解凍後数週間たっても腐らない。第一安いし、品質低下防止策や冷蔵のため余分なお金を使わなくて済む。

リッチは1945年に自社製品を開発した。それ以前に既に乳業で商売をしていたが、もはや乳業で生計を立てることに魅力を感じなくなっていた。彼はフォーブス誌のインタビューに答え、次のように語っている。『乳牛はとても哀れな動物です。人間の経済活動に使われるだけのね。乳製品は口にするのに値しない代物だし、品質も不安定だ。そのうえ牛乳っていうのは細菌に冒されやすく、中身の80パーセントは水分なんです。とても効率が悪い商売ですよ、乳業っていうのは』

乳製品業界も、遅ればせながら乳製品が不完全であることを認めつつある。アメリカ人の食事に脂肪が多すぎると口うるさく指摘する栄養学者を黙らせようと、業界は脱脂乳を市場に送り込んだ。現在開発中の商品は、大多数の人にとって消化不良が起きないように乳糖を改良した牛乳製品である。

さらに、マサチューセッツ州工科大学では、乳糖不耐性症の問題を解決するためにネズミを使った動物実験が積み重ねられている。研究者の採用した方法は、牛乳に酵素ラクラーゼを加えるというものである。その酵素は、人の消化管には存在しないラクターゼの代わりとして合成されたイースト菌を元に作られている。この試作品は、動物実験の段階ではうまくいくが、これを執筆中の現時点で人に試されたことはない。アレルギーの脅威を減らすために蛋白質自体を変えようという方法も、検討されている。それほど遠くない将来、牛乳はもうそれとは分からないくらい違うものになっているかもしれない。

実際、そのような未来も近づきつつあるようだ。牛乳のよい点は残し欠点をなくした新しい乳製品が、開発されている。そうした製品の一つ、乳漿優良牛乳を世に送りだすことに大きく貢献した人物が、ワイオミング・チーズの二代目社長、ロイ・ブロッグである。ブロッグは20年以上にわたり、乳漿を原料に、風味が軽く、乳脂肪を全く含まず、乳糖の含有量が牛乳より40パーセント少なく、なおかつアレルギーを起こさせる可能性の低い飲料製品の開発に心血を注いできた。そうして完成した商品は、この10年間一般に市販されている。しかし、なぜ乳漿なのか?

哺乳類の乳はどれも皆例外なく、乳漿と凝乳の二種類の蛋白質に分けられる。庭の片隅で『乳漿と凝乳』をほおばるマフェおねえさんを憶えているかな?凝乳は、カゼインと呼ばれる牛乳中の蛋白質の色々な種類から成り立っている。一方、乳漿に含まれる蛋白質の種類は、ラクトフェリン、アルファ・ラクトグロブリン、リゾザイム、免疫グロブリンなどである。凝乳成分は、酸素処理か酸化処理によって牛乳から分離することができる。一方、脱脂乳からカゼインが取り除かれた後に残った成分が、乳漿もしくは清乳と呼ばれるものである。乳漿を充填乳に分類している州もあるが、これは正しくない。充填乳とは、牛乳の中に含まれる動物性脂肪を植物性脂肪に置き換えたもの、と定義されている。

人の乳に含まれている蛋白質は、乳漿成分がおよそ80パーセント、凝乳もしくはカゼイン成分が20パーセントの比率である。牛乳の場合、この比率が人とは全く逆の、乳漿20パーセント対凝乳80パーセントであるが、凝乳の方が少し多い。しかし、乳漿と凝乳に含まれる化学成分は、人乳と牛乳とでは異なっている。蛋白質として栄養的に勝っているのは乳漿の方だと考えられているので、乳児用人工乳の製造会社は、乳漿優良牛乳を製造している。この商品は人乳を模倣する試みとして、それに一歩近づいたといえる。大人向けの乳漿優良牛乳も、理論上製造は可能である。

乳漿優良牛乳に含まれる成分の比率は一定しないが、一般的にいって乳漿優良牛乳は通常の牛乳よりも、脂肪分と乳糖の含有量が少ない。乳漿優良牛乳は低脂肪であるだけでなく、いわゆる2パーセント低脂肪乳とも違って、体に良くない飽和脂肪酸の含有量もコップ1杯につき低く抑えられている。

乳漿優良牛乳は工場で生産される商品なので、製造工程で牛乳に不足しているミネラル分とビタミン類が添加されることもある。牛乳は、脂肪分過多、乳糖不耐性症、カゼイン不耐性症といった栄養上の大きな欠陥をかかえているが、これらの問題に乳漿優良牛乳は対処しているので、乳業界のお偉方にとては脅威なのである。もしも牛乳が“完全食品”であるというのなら、どうやってその“完全食品”を改良することなどできるだろう。牛乳からそれよりも優良な牛乳製品を作るということ自体、牛乳が不完全であるといっているようなものである。

牛乳の未来やいかに?占い師のご宣託はさておき、私自身の考えを述べよう。傾向ははっきりしている。現在のところわが国の乳児は、母乳かさもなくば母乳に近い人工乳で養育されている。1971年には、生後5ヶ月から6ヶ月の乳児の約68パーセントが、牛乳か濃縮牛乳を飲まされていた。10年後の1981年、同年齢の乳児のうち牛乳を飲んでいる割合は、17パーセントに減少した。それから10年後には、おそらく牛乳の害に苦しむ乳児はいなくなっているのではないだろうか。

もっと年齢の大きい子どもや大人については、未来像は不確実だ。今乳製品業界は、脱脂乳、低脂肪乳、低乳糖乳を必死に売り込んでいる。それまでは牛乳の“完全食品”神話が頼みの綱だったが、次から次へと明らかにされる科学的事実によって牛乳の安全性に赤信号が点されるにつれ、そのような主張も過去のものとなった。

将来的には、母乳の代用品としての乳児用人工乳は、乳漿優良牛乳一つに絞られるであろう。そのさいは乳漿優良牛乳自体も、乳児に必要な栄養素を完備した強化栄養食品になっているかもしれない。同様に大人向けには、低脂肪で低乳糖の乳漿優良牛乳がもっと普及しているのではないだろうか。これらの充填乳は、学童や大人に必要な栄養分を満たした成分調整乳になっていることだろう。

牛乳には、完全食品であるといえる根拠がない。栄養的にいえば、牛乳は乳児のアレルギーを引き起こし、大人と子どもに下痢と腹痛をもたらし、そして心臓病と卒中に関与している。

おそらく、一般の人々が、牛乳を飲むことは有害であると理解した時に初めて、乳牛はようやく、彼らに与えられた本来のものを飲むことができるだろう。牛だけに、彼らに与えられた本来のものを飲ませてやることができるだろう。

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