牛のお昼ご飯食べたいですか?

原書:フランク・オスキー著『Don't Drink Your Milk』第7章『Do You Really Want a Resume of the Cow's Lunch?』

『こちらで調査した乳製品のうち相当数のものが、質的に全く問題にならないほどひどかった。』とは、消費者連合が1月に発表した調査報告である。その記事、なかなか気がきいている。題して『牛乳、何でそんなに質が悪いの?』

牛乳を“完全食品”だと思っているアメリカ人にとって、牛乳が、その正体がバレたあかつきには買う気も起きないほどの過失と危険が中身いっぱいに詰まった営利的食品だ、とは想像しくい。消費者連合の検査官は、市販されている牛乳の味、細菌汚染の有無、好ましくない添加物について検査し、採点した。その結果は、牛乳愛飲家でさえ街の牛乳屋台から逃げしそうな、アッと驚くものだった。

消費者連合は、アイオワ、イリノイ、カンサス、アーカンソー、ミズーリ各州の牛乳加工工場から製品の見本を取り寄せた。これら5州で、国全体の消費量の約11パーセントを生産している。商品は全部で25銘柄で、それらは検査官によって1銘柄につき最低でも3つ以上の商品見本を取って調べられた。まず最初に味の検査では、製品の味を損なう欠陥が何一つなかったものは、全体の12パーセントしかなかった。それから複数の同一商品見本を比較したところ、味が互いにあまりにも違っていたので、牛乳の品質を保証しているはずの銘柄への信頼が裏切られていた。(もしもコカコーラが1瓶ごとに味が違っていたら、あなたは納得するだろうか?)

全商品見本の3分の1以上に、牛が最後に食べた餌の風味が混入していた。そもそも、乳牛が野生のニンニクや玉ねぎを食べると、それから数時間もたたないうちにその風味が乳の中にでてくる。だけでなく、もっとマズイことに、単に牛がニンイクの匂いをかいだだけで、いずれは乳がニンニク臭くなるのである。コーン、オーツ、ライ麦、りんごの果肉、かぶ、苦草などの匂いも、牛がそれらを食べれば乳の中にでてくる。コーン、オーツ、ライ麦は、ほとんどの乳牛の標準的な飼料である。こうした風味の混入を防ぐために、搾乳の数時間前には餌を与えてはいけないことになっている。もしも搾乳直前まで乳牛が餌を食べていたとしたら、あなたが飲んでいるその牛乳は、もしかして『牛の食べたお昼ごはん』かも・・・。

また多くの牛乳が、煮沸された味がした。これは、加工処理がいい加減な証拠である。おそらく、高温で長時間処理されたにちがいない。牛乳の加熱処理は殺菌のために必要であるが、もしも温度が高すぎた(あるいは時間を長く保ちすぎた)場合、簡単に味で判別できる。煮えた牛乳の味をご想像あれ。

牛の食べた餌の味、煮沸された牛乳の味、それに加えて多くの牛乳が気の抜けた味、つまり酸化していた。酸化の原因として考えられるのは、冷蔵が不十分であること、あるいは容器の中の化学物質が牛乳に溶けだしたのかもしれない。もっと恐ろしかったのは、ある製品は、なんと石鹸の味がした。

複雑怪奇な味の数々。殺菌処理は一体どうなっているのだ?というわけで、多くの牛乳製品は味の検査に不合格だった。

健康な牛から搾られる乳には、いくらか菌が存在するのが常である。菌は通常、乳牛の乳房や乳首に付着している排泄物から発生する。このことを酪農家はよく知っているので、危険を避けるために搾乳の前後、乳牛の乳房を洗浄するのが一般的である。加えて、搾乳機も絶えず洗浄されなければならないし、実際そうされている。乳は、いったん搾られたら、空気中の微生物によってさらに汚染される可能性がある。生温かい牛乳は、こうして発生した細菌群を培養するのに好都合の環境である。そこで、牛乳を急速冷蔵することによって、潜在的に危険な微生物の繁殖を遅らせている。

牛乳をあらゆる菌汚染から防ぐことは事実上不可能なので、加工場では加熱(低温殺菌)処理の殺菌方法がほどこされている。この方法は、大腸菌や結核菌などの病原菌を殺すことを目的としている。牛乳の中の微生物の数を減らす低温殺菌方法は、牛乳の保存期間を延長する。そして、本来牛乳の中にいる酵素の活性を弱めるので、そのことで多少味が変化するかもしれない。

低温殺菌されない牛乳がしばし感染症を引き起こす原因になるので、そういうことのないように合衆国公衆衛生局は国の基準を定めた。その基準では、低温殺菌された牛乳の中に含まれる細菌の数は、1ミリリットルにつき2万個以下、大腸菌群は10万個以下でなくてはならない(ミリリットルになじみのない人は、5ミリリットルが小さじ1、30ミリリットルが1オンスと覚えよう)。

ここで注意をしていただきたいのは、政府は、低温殺菌牛乳を殺菌処理済みとは見なしていないことである。ただ単に、細菌の数を適当に最小限度にしなさいといっているだけである。牛乳の中に存在する細菌は、冷蔵が不十分な時急激に増殖する。かりに牛乳を、華氏40度(摂氏4.4度)のよく冷えた冷蔵庫の中に入れたとしよう。すると、通常35時間から40時間ごとに微生物の数が倍増する。そこで、もしも最初から微生物が相当数いた場合には、普通の保存状態で数日たったところで、その数は膨大なものとなる。消費者連合の検査では、細菌数が牛乳1ミリリットルにつき13万個以上であった銘柄は7つ、300万個近くいたのが1つ、多すぎて数えられなかったのが、数銘柄あった。

検出された微生物は多分無害だと思うが、案外分からない。いずれにせよ、ここでいいたいのは、膨大な数の微生物を含んだ牛乳が何銘柄も売られている、ということである。消費者であるあなたはご存知あるまい、微生物を何個お買い上げかを。

マズい味、細菌汚染、そんな実態もどこ吹く風、牛乳愛飲家の旺盛な飲みっぷりは変わりあるまいと決めつけるのはまだ早いというものだ。消費者連合の検査結果は、これだけでは終わらない。残留農薬の検査の結果、農薬が検出されなかったのは調査した25銘柄のうち、たった4銘柄しかなかった。そのほかの21銘柄からは、人体に有害であるといわれる塩素系炭化水素が検出された。塩素系炭化水素は体内に蓄積すると突然変異し、出産異常を引き起こす恐れがある。また塩素系炭化水素は、発ガン性物質でもある。

消費者レポートでも触れられているように、牛乳から検出された農薬汚染のレベルは、食品医薬局が定めた許容限度量の範囲内であった。食品医薬局は、少量の発ガン性物質が人体を傷つけることはない、との見方を示している。しかし、多くの科学者の考えでは、安全な量など、ない。消費者連合の検査官は、『我々が調査した範囲に限っていえば、中西部5州で生産されている牛乳は、潜在的に伝染病の病原となる可能性が否定できません』と述べた。

この調査では、抗生物質やアフラトキシンに汚染されていない牛乳がなかったことも判明した。(アフラトキシンは、カビのきた家畜の餌に含まれる毒性物質で、哺乳動物のガンを引き起こすといわれている。乳牛がカビの生えた餌を食べると、牛乳の中にアフラトキシンが発生する。しかしこの汚染はまれである。牛乳を飲む人、ご安心あれ。)乳牛には、乳腺炎を抑制するため、薬としてたいてい抗生物質のペニシリンが投与されている。従ってペニシリンが投与されてから24時間以内は、搾乳してはいけないことになっている。しかしこの予防措置はしばし無視されていると見え、牛乳の中に少量のペニシリンがでている。

国内のペニシリン・アレルギーの人は、人口の1パーセントといわれているが、彼らにとってこの抗生物質が混入した牛乳は、アレルギー反応を引き起こしかねないものである。ペニシリン・アレルギーの症状は、じんましん、くしゃみ、ぜん息、皮膚湿疹などである。

ホルモン物資プロゲステロンは、牛乳の中に自然に含まれており、妊娠中の乳牛の乳の中にでてくる。ジュローム・フィッシャー博士がいうように、『搾乳可能な乳牛のおよそ8割は妊娠中でありまして、それらの乳牛は絶えず種々のホルモンを乳の中に放出しております』

プロゲステロンが分解されると、アンドロゲンになる。このアンドロゲンが、にきびの発生に関係しているという説が登場した。30歳をすぎた人ならだれでも、にきびが思春期の悩みの種であることを知っているだろう。この時期はまた、牛乳をとてつもなく大量に飲む時期でもある。例えば1日に牛乳を3、4リットルも飲んだなどと、自慢気に話す十代の若者もいる。フィッシャー博士は、にきび患者を観察していてあることに気がついた。それは、彼らがそのほかの一般人に比べて牛乳をかなり多く飲む、ということである。そしてもっと重要な発見は、にきび患者が牛乳を飲むのをやめるやいなや、にきびが治った、ということだった。牛乳の中のホルモンが若者のにきびの原因であるとするフィッシャー博士の説を、全ての皮膚学者が支持しているわけではないが、にきびという、この美容を著しく損ねずにはおかない未解明の病気に関して、少なくとも一つ原因候補に名前があがったことは、多くの人にとって朗報にちがいない。

消費者連合は、牛乳に再度名誉挽回の機会を与えた。そして、1982年6月号の消費者レポートにその結果報告が掲載された。題して『牛乳、味はよくなった?価格は下がった?』簡単にこの質問に答えると、どちらも『はい』である。

この二度目の検査では、大腸菌型細菌が検出されたのは全銘柄のうち半数以下だった。検査官は、『全ての銘柄から検出された細菌数は、公衆衛生上危害を与える恐れのない範囲内だったといえます。無害な細菌数が天文学的数値だったものでも、安全圏内といえましょう。ただ、細菌の数が非常に少なくても、それが病原性であれば被害をもたらすことがあります。基本的には、細菌数は牛乳の衛生状態をざっと推し量る目安です。もしも細菌数が多ければ、一般的にはそれは品質が短期間で低下したことを意味しています。』と評した。

また今回の調査では、塩素系炭化水素もしくは抗生物質の“意味ある”残留物は検出されなかった。しかし、その“意味ある”とは何を指しているのか、記事の執筆者は説明していない。

それから、牛乳の40の銘柄のうち28パーセントのものが、それが売られていた州の脂肪分含有率の基準値を満たしていないことも分析の結果判明した。また30パーセントのものに、総固形成分と非脂肪固形成分のいずれかもしくは両方が不足していた。検査官曰く、『かなり多くの製品見本が、味と栄養の両面において消費者をだましている可能性があります』

色々な種類の牛乳製品に含まれるナトリウム含有量の検査では、農務省が定めた値よりも25から40ミリグラム多いという結果がでた。低ナトリウム食を実行している人には、気になるニュースである。

牛乳製品には賞味期限が設けられているにもかかわらず、品質が一定しないことも判明した。いくつかの州、とりわけ中西部の州では、賞味期限内の牛乳の中で味が優秀もしくは秀と評価されたものは、いずれも3つの同一商品見本中2つにとどまった。これらの州で賞味期限後5日たった時点で味の高得点を得た製品見本は、たった18パーセントしかなかった。

ここで話しは振りだしに戻った。牛乳は人にとって栄養的に有益であるという証拠がほとんど存在しないばかりか、いつも味がよいというわけでもなく、細菌に汚染されているかもしれず、また実際人体に有害な物質が含まれていないという保証はない。

あなたが最近飲んだ牛乳、味が変じゃなかった? 

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