番外編@「実は最初は後輩がいる予定だったのよ写真部」 |
阿佐巳(あさみ)悠平君は唯一の1年部員。(画像は日記より) 出身は関西圏ですが、父親が大学のOBなので、この春から立華大学付属高校に通うことになりました。 西門から歩いて30秒のアパートに一人暮らしです。 当然・・・本人の意思を無視して、写真部の溜まり場になっております。 (関西弁大嘘です) ちなみに「relationship」本編では出てきません (おいおい・・) 都合により削ったキャラなのです(爆) 削ったキャラが主役の話書くな!って感じですね(汗) |
間もなく梅雨が明けることを予感させる、蒸し暑い6月下旬、金曜日の夕方。 立華大学付属高校西門を右に曲がり、30Mほど歩いた所にある、真新しい2階建てのコーポ。 東側に取り付けられた階段を元気よく一気に、小柄な少年は駆け上がる。 阿佐巳 悠平(あさみ ゆうへい)。 綾香が所属する写真部、唯一の1年生だ。 階段側から3番目にある自分の部屋に辿り着くと、 くっきりとした二重の眼を細めて、夕陽に反射して眩しく光るドアノブに手を掛ける。 「あれ・・・何で開いているんや・・・?まさか・・・先輩達っ!」 よく喋る事が容易に予想される大きな口で呟きながら、勢いよくドアを開く。 嫌な予感は的中していた。 玄関に呆然と突っ立っている悠平の目に入ったもの。 8畳のフローリングルーム中央でソファのクッションを床に投げだし、くつろぐ綾香と堀田の姿。 「おかえり〜。阿佐巳君。冷蔵庫のピックルもらったからね。ありがとう」 「お邪魔してますよ。結構、漫画持っていますね」 綾香と堀田はめいめいに横たわり、だらけモードで悠平に声をかける。 「先輩達!勝手に上がりこむのはやめてくださいよ!」 靴を慌てて脱ぐなり、叫ぶ悠平を 「近いんだからいいじゃん。一人で使うのは勿体無いよ。有効利用。有効利用」 日頃、稔之とこういう類のやりとりは慣れているのであろう、綾香が軽くいなす。 すかさず、綾香の隣で堀田が頷く。 ・・・・・関谷さんが水瀬先輩を最終的に甘やかすから、つけあがってこっちまで迷惑かかるっちゅうねん! 内心舌打ちする悠平。 だが一見強面、校内でも恐れている者が多い、稔之に対して抗議する勇気は湧いてこない。 ・・・そうや!西谷さんに二人を説得してもらおう! 悠平が顔を輝かせた瞬間、部屋の奥から熱い茶をすする音が聞こえた。 たちまち絶望に頬を引きつらせて、ゆっくりと振り返る悠平は、部屋の奥のテーブルで行儀よく茶を口にする西谷を見た。 テーブルの上にはご丁寧に玉露の文字の入った缶と急須が置いてある。 西谷は口からゆっくりと湯のみを下ろしながら 「今のご時世、鍵を郵便ポストに入れておくのは無用心だよ?」 穏やかな口調で悠平の不用心を咎める。 西谷の両親は共働き。そして年の離れた弟妹が一人ずついる。 戸締りと火の元には、必要以上に気を配る性質であった。 「はい・・・」 すべて諦めたかのようにがっくりと肩を落として悠平はうなだれる。 さらに西谷は話を続けた。 「まだ一人暮らしも慣れていないようだし、心配だからこれからも時々、僕達3人で様子を見に来るよ。いいね?」 表情こそ柔和だが、有無を言わせない西谷の気配に逆らう事ができず、悠平は承諾するしかなかった。 「わ〜い。決定!これからもちょくちょく来るね」 「たまにはお土産持ってきますよ」 追い討ちをかけるように、悠平の背に綾香と堀田がからかい半分の声をかける。 悠平は頭を下に向けたまま、西谷の笑みをたたえた童顔を盗み見る。 ・・・・案外、この人が一番鬼かもしれない 恐らく、鍵を発見したのも西谷であろう。 悠平は西谷達が卒業するまでの2年間の学生生活を想像すると目の前が暗くなるのであった・・・・。 番外編@ 終わり。 |