BUCK-TICKとワタシ7

北風 と 太陽


1996年です。
SIX/NINEで重く深い世界に潜ってたBUCK-TICKが、少し明るい世界に浮上してきたような、そんな1996年。

S/Nツアーが終わってからのBUCK-TICKは、特に大きな動きはありませんでした。
1995年末にシングルベスト「CATALOGUE」がリリースされましたけど、特にそれに伴うLIVEはなかったし。
ファンは何も予定のない時期が半年以上続きました。
次作へ向けて、制作期間突入です。…と、いうのは表向きで、この時期、BUCK-TICKの環境が色々と大きく変化してた時期だったようです。

そして1996年の春頃、BUCK-TICK CLUBから大事なお知らせが届く。当時の会報を引っ張り出してきたので、ご参考までに。
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長年お世話になった事務所「シェイクハンド」を離れ、自分達の事務所「BANKER」を設立。
ファンクラブ「BUCK-TICK CLUB」も終了し、新しく「FISH TANK」として生まれ変わる事。
それに伴い、会員番号も一新。
ファンクラブが新しくなるにあたって、特に会員は特別な手続きはありませんでした。
そのままBUCK-TICK CLUBの会員番号が繰り上がる形だったので。

突然のお知らせだったので、少々びっくりしたけど、ここで「ああ、これからもBUCK-TICKは続くんだな」と嬉しくも思ったり。
新しい環境、しかも社長の名前はアニイだし(笑)大丈夫かな?とも多少は心配したけど、このへんはファンには見えない部分なのでね。

それから少しして「FISH TANK 0号」と題された、冊子ではなく大きな折り畳みの会報と新しい会員証が届きました。
しかしね、当時2万番台だった自分の会員番号がFISH TANKになった途端、一気に一桁減ったのはびびった。
そんなにファンやめた人がいたの…??とね。
ま、実際には本当に離れた人もいれば、単に更新手続きをし忘れただけの人もいるんだろうけどね。(これ、結構多いよね)
私はその後も毎年継続してるので、今も番号は変わってません。今、また番号を整理したら何番になるのか、考えたらちょっと怖い(笑)。

色んな事が新しくなり(まだレコード会社はビクターだったけど)いよいよリリースやツアーも決定。
まだインターネットがなかったこの時代。
田舎在住の私の情報源は音楽雑誌とFC会報、そしてFCが定期的に更新してた「DRAG NET」というテレフォンサービスがありました。
一ヶ月に2〜3回の割合でチェックしてたのかな。
会報等に載らない緊急のお知らせ、新曲の試聴、メンバーからのメッセージなどが聴けるサービスです。
私が初めて「キャンディ」を聴いたのは、このDRAG NETでした。
所詮、電話だから決して音も良くないし、電話代も高いから新曲試聴はそんなに聴かないほうだったんですが、
この時期はかなり「待ってました!」って感じだったので聴いてしまった。
なんせ前作「SIX NINE」があんな感じですから。それで次のシングルのタイトルが「キャンディ」でしょ。なんだこのギャップは(笑)?
そりゃあ気になるよね。

初めて「キャンディ」を聴いた時の事は、かなり印象深かったからよーーーく覚えてる。

泣きました。

いわゆる笑い泣きってやつです。
マジでマジで(笑)。
いきなり飛び込んできたのが
「チャラララララ〜♪」のあの能天気でPOPなギターソロですから。
ええええええええええええ。
SIX/NINEの次がこれ!?
見えないものを見ようとして全て誤解だった次がこれ(笑)!?!?!?!?
あまりにもギャップを感じる音の変化に、それはそれはビックリしたもんです。(そういえば音楽雑誌とか見る前に聴いたんだよな)
なんかもう、それがおかしくておかしくて。でも、何故だかちょっと安心したような嬉しさもあって。
で、結構大好きだったのね。そんな「キャンディ」が。なのでついつい、発売までに何度も電話してしまった記憶があります。
しかも普段DRAG NETなんて全く聴かないま〜るさん達にも「絶対聴いて!早く聴いて!凄いから!!」って半ば無理矢理聴かせた記憶も…(笑)

「SIX NINE」の時は、とにかく今井さんの曲作りが遅く(笑)レコーディング時間が切羽詰っててかなりピリピリしてたようですが、そんな反省点から「COSMOS」は良くも悪くもサラッと作っちゃった印象があります。
すんなりうまくいったレコーディングの良い例?
今井さんも「もうあんな思いはしたくない」って言ってたし、よっぽどキツかったんでしょうね(笑)。
深い闇に潜った世界から、少し明るい世界へ浮上したような。
それでもノイズや闇の世界は健在で、まだまだ重い世界を捨てきれてない、そんなちょっと気持ち悪さの残る、私は結構好きなアルバムです。
「キャンディ」なんて、音はあんな感じだけど、歌詞はある意味SIX/NINEよりもヤバイ匂いもありますよね(笑)?
私はそういった表現が好きだったりもするので。ポップな毒といいますか。
他にも「SANE」「tight rope」「idol」「Ash-ra」「COSMOS」等々、名曲が多いんだよね。
当時の今井さんのインタビューには「自分の曲に向かう姿勢がシンプルだった」と言ってます。
「天使のリボルバー」を既に聴いてる2009年の視点から見ると、このアルバム、全っ然シンプルじゃないんですが(笑)。
それだけ前作が濃かったって事ですかね。

もともと今井さんは、dtdの次にこんな感じのアルバムを作ることは想定してたんですよね。
でも、それではあまりにもお約束(?)すぎるので、S/Nであの世界観を更につきつめた上で、COSMOSにたどり着いたと。
デビュー当時のようなポップさもあるから<原点回帰>という言葉を使うライターさんもいましたが、今井さんはそれを大変嫌がりました。
あくまでも<SIX/NINEの次の作品>。常に懐古することなく、自分は新しいものを作り続けてるという思いがあるからでしょうね。
そのポリシーは今も変わってない気がします。

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ちなみにこれが当時の音楽と人表紙号。「B-Tの新作を「笑える」奴は、正しい!」
「キャンディ」で笑い泣きした私は、ある意味正しかったんでしょうか(笑)。
このアルバムレコーディング中に「北風と太陽」の童話を思い出した今井さん。
S/Nが「北風」ならこのアルバムは「太陽」だったのかもね。


そして「COSMOS」をひっさげ全国ツアー「TOUR 1996 CHAOS」が始まります。私は静岡、大阪、名古屋、岡山の4本行きました。
「SIX/NINE」から「COSMOS」で音的な変化がありましたが、それはステージでもかなり変化が見えたのでした。
まず、セットリストは「COSMOS」の曲を中心に過去の様々な楽曲を含めた、ちょっとファンサービス的な部分を感じるような。
「LOVE ME」「MY FUNNY VALENTINE」「MAD」等のちょっと懐かしい選曲が入ったり。
え。別に珍しい選曲じゃない? いやいや、これは「SIX/NINE」のツアーとはガラリと違う選曲なんですよ。まだデイインなんてなかった時代だし、久々に聴ける曲が多くて嬉しかったもんです。
更に変化があったのはMC。前回、「ありがとう」の一言くらいしかなかったMCが、今回はちょっとだけあっちゃんがしゃべってくれたんです。
特に印象的だったのが静岡でのLIVEのMC。
「いつもメンバーは恥ずかしがって言わないけど、本当は感謝してるんだよ」みたいな…もう既にうろ覚えだけど、そんな事を言ってたのよ。ファンに向けて。
S/NでMC一切なしで、ピリピリしたLIVEを見てただけに、この言葉は嬉しかったですね。
や、言われなくてもきっとそうなんだろうとは思ってましたけど(笑)、でもLIVEでこうやって言ってもらえるなんて今までなかったから。
あっちゃんも色々思う事があったんですかね。
とにかく前作のLIVEとは打って変わった、少しアットホームな楽しいLIVEで、凄く楽しかった思い出だけがあります。

そうだ、このツアーのキーワードは<踊る>だったな。
Ash-raで「どうぞ踊りましょう 熱いダンスを」ってフレーズがあるからかもだけど。
今井さんの衣装も面白かったしね。衣装も蛍光色の黄色や黄緑とか(笑)。髪の色も
金髪黄緑と、一つのツアー中にこんだけ変えたのも珍しい。
骨の被り物(数年後、SCHWEINのPVでも使用)をかぶったり、光る電球グラサン(これ、本気で泣けるほど笑えました。今井ちゃんカッコよすぎ(笑))などなど、
飛び道具もやたら多かった。このあたりも、前回のツアーとはもう全然違う。
あっちゃんは相変わらず暗黒デカダン(笑)な黒い衣装だったけど。髪も短かったね。この時期が一番短かったんじゃないかと思います。

残念ながらこのツアーは私が知る限り全くカメラが入ってませんでした。したがって、映像化の予定もなく。
ほんと、S/N〜COSMOSの時期、唯一心残りなのはLIVE映像作品がまったく残ってない事なんですよね。
「CHAOSツアーの映像を見たい」ってファンの意見はよく見るけど、カメラ自体見た記憶がないから、これはもう可能性はかなり低そうです。


ちょっと話は前後しますが。
新しく始まったFISH TANKの会報にはかなり感動したもんです。
ページ数多いし、メンバー一人ひとりのコーナーまであるから面白いし!
1号が届いた時は本当に感動して、思わず会報宛に感想の手紙を書いたくらいに(笑)。
そしたら「反響が大きくて驚きました。皆さん、
そんなに前の会報ダメでしたか?」って感じのスタッフのコメントがあったのが懐かしい(笑)。
1号では改めてBANKERという事務所を作った事、ファンクラブの名前をFISH TANKと変えた事など、メンバー5人のインタビューがありました。
どちらも名付け親は今井さんです。
「BANKERは単純に銀行…金の総元締め?」「FISH TANKは金魚蜂の中に魚が一杯いて、共通の目的がある…みたいな」

そしてこの会報で「COSMOSの中の一曲「SANE」はそのうちまた別の形で皆さんにお聴かせできると思います」と書いてあったんですよね。
なので、てっきり私はこの曲がシングルカットでもされるのかな?と思ってました。それか何かのタイアップ?とも。
でも、その後も何も発売されなかったんですけど。
結果的に「COSMOS」はビクター時代最後のアルバムとなりました。
事務所を独立し、更にレコード会社も移籍。
今までお世話になってきたスタッフさんともお別れ。現在お世話になってるディレクターの田中さんとも、ここで一旦お別れだったんですね。
色んな覚悟をしての、新しい出発の年だったんだろうな、って思います。
多分、ファンには直接見えないところでも、色々ドラマがあったんだろうな、なんて今は思います。

そんな音楽的にも環境的にも色々大きく変わった1996年でした。
その後は1996年12月にCHAOS AFTER DARK TOURを行う予定でした。
多分、これはCHAOS TOURのアンコールツアー的なものの予定だったと思うんですけど…
残念ながら、このツアーは延期になるのでした。もうチケットも既に届いてた時期の延期でした。
延期の内容は…ファンならみんな覚えてますよね。
詳しくは次の更新で!(いつだ?)





<オマケ>

市川「にしても『キャンディ』のリフ好きだな俺」

あっちゃん「今井の笑い声にそっくりの(笑)」


ああ、そうか。だから私、キャンディのイントロ大好きなんだ。


<Next8>