1周年祝いの品 FROM 神月ささみ 様

桜の樹

見下ろした大地は・・・長く、長く見守ってきた地。
そして、これからも長く長く見守って行く地。
ゆるりと根をおろし、どのくらいの時が過ぎたのか。
今ではもう・・・・その年数を数える事は忘れてしまったけれど。
人々はかわらない。
変わらぬ笑顔で、かわらぬその心で。
この街に生きている。
この大地に生きている。

最近は、よく少女が散歩をしている。
犬を連れ、彼女は私の前を通る。
通る一瞬・・・・一瞬立ち止まり、私を見上げる。
その澄んだ瞳で。
優しい瞳で、私を見上げる。
そして、小さく微笑んで・・・また歩き始める。
時には、泣きそうな顔をしている日もある。
そんな時は、私の身体に耳をあて・・・・ゆっくりと深呼吸し、また歩き始める。
そんな毎日。
そんな日々。
平和だと思う。
優しい時だと思う。
このまま、何時までも過ごしていきたい。
そう思ってしまうと、他の木々に笑われる。
まるで人のようだと。
まるで人間のような考えだと。
見守っているうちに・・感化されてしまったのかもしれない。
彼らが好きだ。
だから・・・・・ずっとこのままでいたいのだ。

今年は暖かい空気が早く訪れた。
春一番の風の精は、慌てて北へと飛び去って行った。
つくしも慌てて土から顔を出す。
私の花も、早くつぼみをつけて・・・・樹が桃色になって。
桜が咲く。
花は・・・ほんの少しの命。
少しだけ・・・だが、だから美しい。
私を見る人々も、この時期は増える。
いつもはただ、素通りする人々も、私を見上げる。
口元に笑みを浮かべ、優しい瞳で見上げてくれる。
それを見ると、私も嬉しくなる。
見守っていて良かったな、と思わせられる。

ある日・・・そう、ある日。
ちょっとした出来心で、人の姿をかたちどった。
もちろん、人々に見えるはずもない。
ただ、人として、桜を見上げてみたかった。
自分を見上げてみたかった。
それだけ・・・それだけだった。
いつもの少女が、いつもの散歩でやってきた。
私は慌てて、樹の上に逃げる。
見えるはずはない・・・・でも何故か逃げてしまった。
・・・・・・すると、じっと、視線。
少女のものではない・・・・けれど、私への視線。
彼女の犬が、私を見ていた。
優しい瞳、やわらかな瞳で。
「おまえには、見えるのか?」
問いかけに、答えはないけれど。
優しい瞳は、私をうつしているようで。
「今年も、綺麗に咲いたよ。これも、おまえたちがいるから・・・なのかもしれないな。」
呟きは、誰にも聞こえるはずもない・・・だが、彼<犬>はこちらをじっと見ていた。
思いが伝わったのだろうか?
それとも、何か伝えたい事があるのだろうか?
優しい瞳。彼女と同じ、暖かい眼差し。

人との交流。
小さなやり取り。
他愛もない、小さな出来事。
でも、だから・・・・だから嬉しい。
だから私は見守って行こう。
この土地を、この大地を。
私の命が続く限り・・・永遠に。

 

サイト1周年おめでとうございます。お祝い品といって良いのかどうかは謎なのですが(汗)約1年前の例のブツに似たり寄ったり・・・いかがでしょう?(汗)ともあれ〜1周年おめでとうございます。これからも高月様のサイトの発展をお祈り申し上げます。

我が愛しのマイフェアお姉さま・神月ささみ様よりサイト1周年の祝いの品を戴いてしまいました。
ささみ様ならではの、ちょっと不思議な、ほんわかまったり優しいおはなし。
この作品を心の糧にこれからも頑張ります。

 ささみさまありがとうございました〜〜。

【戴物】