人権のまちづくり
21世紀を担う本会の行動目標は、言わずもがな「同対審答申」以来、主張をつづけて来た、基本法の制定にほかなりません。 もちろん当初は「同対審答申」の完全実施であり、次いで「同和対策事業特別措置法」の制定に伴い「同和対策基本法」に移行し、 20世紀の終焉を迎えたのであります。
もとより、その間さまざまな妙味を加えた活動実践をとおし、20世紀に完全解決をはかり、21世紀に差別は持ち込まないとの決意 をもって、精力的に運動の展開を図って参りました。しかし、こと志と異なり不十分な法機能によって、都市部落における表層的な 環境面での一部の解放成果は評価できても、精神面における差別意識の解消には遥かに遠い距離感が残り、くわえて農山村型小規模 集落に対する対応にあっては、法そのものの持つ規格・基準・受益率などに阻まれ、依然として、当時の集落形成の域を出ない状況に あります。そのことに関し、私達は多言を要しません。
我が国の現状を見るとき、連日のごとく人命が軽んじられ、親殺し子殺しが多発し、未来を担う青少年をとりまく生活環境の中で、 いじめ、不登校、はては暴力、犯罪の数々…それらの一つ一つの根幹をささえ、反社会的行動に走らせる要因こそが、私達が主張して やまぬ差別に根ざしていることは、洋の東西を問わず、現実の姿であることを信じて疑いません。
しかして、私達は人間解放を訴え、差別の完全解消を唱えつづけて、活動して来たのであります。
1922年3月3日、水平社を創立して“人の世に熱と光”を語りかけ、「かならず卑屈なる言葉と怯懦なる行為によって祖先を辱め、
人間を冒涜してはならぬ…」と強く戒めているのであります。
水平社精神は、のちの世界人権宣言(1948年12月10日)に包含されていることは、周知のとおり。
私達はそうした権威ある水平社宣言に則り、ひたすら差別解消のみちを邁進して参りました。
2000年の後半の活動をしめくくるにあたり、21世紀こそ人権の世紀と喝破して来た本旨をいかし、人権の まちづくり対策を提唱するものであります。本会の総力を賭けて、目的完遂に取り組む ことを、あらためて確認するものであります。
ただ、最も心しなければならないことは、人権という名に紛れて、部落差別の本質を忘れ見失い、十把一からげな人権という名に、
麻痺してはならないということであります。
過去半世紀間に種々なる方法と多くの人々とによってなされた、吾等のための運動が、何等有り難い効果をもたらさなかった事実は、
夫等のすべてが吾々によって、また他の人々によって毎に人間を冒涜されていた罰であったのだ。…いみじくも先達が示された教訓に学び、
人権の原点が部落差別に由来することを、忘却してはなりません。
部落問題の存在しない人権論は、果実表皮にひとしいもの…いよいよ眦を決し、ただ前進あるのみ。 行動にあたっては、部落解放同盟との連携を密にし、真の解放を願う関係各位との連帯を深め、一切の齟齬のない行動をしなければなりません。
幸い本県にあっては、加戸知事の英断により、このたびの県議会において「人権尊重の社会づくり条例」が制定され、「人権のまち づくり」への風は、ようやくにして吹き初めたのであります。
さあ前進あるのみ…。