待ちつづけていた一九七〇年の雨。

若い犬の足の裏に踏まれ

返答されるまでの夢の中のような一瞬

囲まれた中にいた自分の目を、覚えているか。

名前を呼ぶ、その名前さえ私にはなく

泣き叫ぶ、その名前を求めていた一九七〇年の雨の中。

手の中に潰された草の名を

にじみながらさがしていた、一九七〇年の雨の日

しおれるか、いや、それよりもなお

途絶えることなく続く血脈の動きの中で降る雨。


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